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「僕らは“変態”のような…」浦和と戦う浦項がFA杯で優勝できたワケ。クラブ創設50周年の節目に悲願

  • 2023.11.6

浦和レッズとAFCチャンピオンズリーグ(ACL)で同組の浦項(ポハン)スティーラーズが、クラブ創設50周年の節目に“完璧な物語”を作り上げた。

キム・ギドン監督率いる浦項は11月4日、ホームの浦項スティールヤードで行われたFAカップ決勝で全北現代(チョンブク・ヒョンデ)モータースと対戦し、4-2と痛快な逆転勝利を収めた。

これにより、浦項は2013年以来10年ぶりのFAカップ制覇に成功。通算優勝回数も5回に伸ばし、水原三星(スウォン・サムスン)ブルーウィングス、全北とともに最多タイに並んだ。

「浦項は“変態”のようなチーム」

目の覚めるような大逆転劇だった。

浦項は厳しい日程をこなした。去る10月24日、敵地・埼玉スタジアム2002での浦和とのACLグループステージ第3節を皮切りに、同月28日の全北とのリーグ戦、今月1日の済州(チェジュ)ユナイテッドとのFAカップ準決勝の3試合すべてをアウェイで戦った。

特に、済州戦は延長戦を経てPK戦までもつれ、体力的な困難もあった。

実際、全北との決勝で浦項は苦戦を強いられた。相手に2度リードを奪われる展開だったが、後半だけで一挙3ゴールを決め、最終的に2点差の逆転勝利に成功した。

2012~2013年にFAカップ2連覇に成功した浦項だが、以降は優勝から遠ざかった。何人かの浦項のフロントは、選手がトロフィーを掲げる瞬間に感激の涙を流していた。観客席の浦項ファン・サポーターも同様だった。

浦項スティーラーズ
(写真提供=韓国サッカー協会)優勝トロフィーを掲げる浦項の選手

何より、今年は浦項のクラブ創設50周年を迎える節目の年だ。

キム・ギドン監督をはじめ、選手やフロントなどチームが一丸となって「今季は一つでも優勝トロフィーを掲げる」と叫んでいた。

ただ目標を叫んだだけではない。浦項はリーグ戦では2位の座を維持し、首位・蔚山現代(ウルサン・ヒョンデ)を追撃し続けた。しかし、シーズン後半に負傷者が続出し、動力を失ったことで逆転優勝に失敗した。だからこそ、FAカップ優勝に切実な思いがあった。

現在の浦項のメンバーには、2013年の優勝当時にも在籍した選手が2人いる。キャプテンの元韓国代表FWキム・スンデ(32)と、チーム最年長の元韓国代表DFシン・グァンフン(36)だ。

キム・スンデは2013年に浦項でプロデビュー。当時、FAカップ決勝でプロ初得点となる先制ゴールを決め、ルーキーながらチームを優勝に導いた。それから10年が経ち、今回はキム・スンデがキャプテンとして再び浦項にタイトルをもたらした。

「50周年に優勝したいという“欲”があった」というキム・スンデは、「(蔚山の)リーグ優勝が確定した後、選手たちに初めて苦言を呈した。“気を取り戻して、今考えなければならないことが何かを悩め”と問いかけた」とし、浦項への“チーム愛”を次のように表現した。

「浦項は常に期待以下で始まるが、それを乗り越える。いわば“変態”のようなチームだ。浦項だけの力がある。仲間には常に“自分たちがKリーグで一番上手だ”と話してきた。サッカーが上手で、良い考えを持った選手が確実にチーム内に多い」

シン・グァンフンも感激した様子だった。彼は浦項のFAカップ優勝5回中3回(2012、2013、2023年)をともにした。

シン・グァンフンは「今回の優勝が一番記憶に残る」とし、「今年も大変だったが、大変ではない年はほとんどなかった。危機的状況を上手く乗り切ったと思う。浦項ならではの精神がある」と強く語った。

キム・ギドン監督
(写真提供=韓国サッカー協会)キム・ギドン監督

キム・ギドン監督自身、監督キャリアで初優勝を果たした。

浦項のアシスタントコーチを経て、2019年4月にチェ・スンホ前監督の後任として監督に昇格したキム・ギドン監督は、当時下位に沈んだチームを素早く再整備し、同年シーズンを4位で終えた。

その後も、リーグ戦では2021年シーズンを除いてすべて4位以内に入った。その2021年シーズンもACLで決勝進出を果たし、準優勝という成果を収めた。決勝ではアル・ヒラルに惜しくも敗れたが、浦項の底力をアジアの舞台で見せつけた。

浦項はかつてのように多額を投じることができるチームではなくなった。2022年シーズン、浦項の年俸支出額はKリーグ1部11チーム中10位(軍隊チームの金泉尚武を除く)だった。それでも、毎年のように上位に食い込む戦いぶりを見せている。

選手層も薄く、毎年のように主力を引き抜かれるなかでも、キム・ギドン監督特有の柔軟なマネジメント、選手一人ひとりの長所を最大限発揮させる指導力がチームを上位に導いてきた。

今季開幕前にも、前年度リーグ年間ベストイレブンのMFシン・ジンホ(35)が仁川(インチョン)ユナイテッドに移籍した。キム・ギドン監督自身、「椎間板ヘルニア」と独特な表現を用いるほど、中盤の主力の流出に悩みを抱えていた。

それでも、すぐにいつものように解決策をまとめた。ブラジル人MFオーベルダン(28)やMFハン・チャンヒ(26)、MFキム・ジョンウ(30)など今季新加入の選手、そしてキム・ギドン監督の息子であるMFキム・ジュンホ(20)など若手を融合させ、戦力の空白を最小限に抑えた。

キム・ジョンウ
(写真提供=韓国サッカー協会)キム・ジョンウ(中央)

「監督になって優勝は初めてだ。夢にまで見た瞬間だ」と感慨深い様子を見せたキム・ギドン監督は、「選手たち、ファンの皆さんとともにタイトルを獲得したい欲が大きかったが、嬉しい一日になりそうだ」としつつも、次のように伝えた。

「主人公は私ではなく、選手たちだと思う。選手たちには“私は優勝すると思っている。自信がある”と伝えた。選手たちを信じ、自分を信じた。監督をしながら、自分の“キャリア”を考えはしなかった。優勝は欲を出したからと言ってできるわけではない。選手たちと良いサッカーを見せることを優先的に考えた」

FAカップ王者に輝いた浦項は次戦、来る8日にホームの浦項スティールヤードで浦和とのACLグループJ第4節を戦う予定だ。

(構成=ピッチコミュニケーションズ)

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