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ティモンディ前田裕太「スターになる素質は…」【僕のあまのじゃく#105】

  • 2023.11.4

僕のあまのじゃく#104

ティモンディ前田裕太さんの人気コラム【前田裕太の乙女心、受け止めます!】がリニューアル。

◁◁

ガラリと雰囲気を変えて、毎週変わるお題に沿って、前田さんに自由に言葉を紡いていただくフリースタイルエッセイ【僕のあまのじゃく】をお楽しみください♡

前田裕太(まえだ・ゆうた)
PROFILE:1992年8月25日、神奈川出身。グレープカンパニー所属のお笑い芸人ティモンディのツッコミ、ネタ作り担当。愛媛県の済美高校野球部に所属した同級生・高岸宏行が相方で、2015年1月に結成。2人の野球経験を活かした『ティモンディベースボールTV』の登録者数は23万超え。ar web連載『僕のあまのじゃく』では、フリースタイルエッセイを毎週お届け中。

テーマ:盲目

視野の狭い人間が嫌いだ。

自分のやりたいこと、言いたいことを言うだけ言って周囲に合わせることを求める、その姿勢が苦手なのだ。
周囲に気を配れる人間がいつだって損をする。
そんなことを周囲に漏らしていると「貴方は人に合わせられる素敵な人」だなんて言われたこともあるけれど、合わせてあげているだけで、視野の狭い人間に自分を合わせたい訳ではないのだ。
「貴様は本質を分かっていない」だなんて言葉が口から出かかったけれど、飲み込んだのは大人になったと思う。
素敵な人であったとしても、合わせる度にストレスを感じるものだから、単に損をしているとしか思えない。
思慮もなく一直線に思ったことを言えれば、どれだけ健やかに生きれることだろうか。

けれど、仕事をしていて思うことがある。

番組のMCをしていても、スタジオの収録でもロケをしていても、輝くのは視野が狭い人間なのだ。
色々な現場で、その盲目さから爆笑を掻っ攫っていったスターを何人も見てきた。
日常生活で面白い人なんて山ほどいるだろうけれど、テレビに出るようなスターとその他の人の根本的な違いはその盲目さにあると思う節が多々ある。

ドッキリを仕掛けられた時のことだ。

仕事をしていたら普通では有り得ない状況に陥った。
まあドッキリだからそういう状況になるのは当然なのだけれど、私の場合そのドッキリを仕掛けられた時に「あれ、こんなこと普通じゃありえないぞ」と思ってしまう。
そして「あ、これはリアクションを求められているやつかも」と冷静になってしまう。
その結果、ドッキリに対して”自分ならどう対処すべきか”ではなく”これはスタッフさん達はどんなことを求めているのだろうか”と考えてしまうのだ。
そんな奴のリアクションなんて何の面白味もない。
ドッキリのスターは人が考える枠から外れたリアクションや言動をする人間なのだから。
私のような頭を働かせてリアクションをする人間なんかよりも、目の前の環境に精一杯対処してリアクションをしている人間の方が何倍も面白いのだ。
それは、ある意味での盲目さがなければ実演することはできない。
そしてそういう人間が重宝される。
とても、羨ましい。

私が視野の狭い人間を嫌っていたのは一種の憧れのようなものなのかもしれない。

自分はそうなれない。
そして、そんな人間が重宝される。
自分がいくら努力したって到達できる気がしない。
だから僻みや妬みなどの感情も相待って、嫌悪するのだろう。

自分の人生が映画だとしたら、自分が主役とは思えない一歩引いたようなその思想が、その卑屈さが、私を苦しめているのかもしれない。
いつか自分に酔いしれて、視野の狭い、自分本位な身振りや言動を世間に振り翳せるようになれば、いつか私もスターになれるのかもしれないと思った。
自分自身に盲目になりたいものだ。

ー完ー

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