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「退会届を副校長に渡すまでは役員になる可能性が」あえてPTAに入らなかった親に届いたPTA会長の怖すぎる手紙

  • 2023.11.3

PTAのスリム化や解散を選ぶ学校が出てくる中、保護者や教師に昔ながらの活動負担を強いるPTAもいまだに多い。元教師の“のぶ”さんは「息子が全校生徒500人規模の小学校に入学し、あえてPTAに入らずにいたら、PTA会長から『退会届を副校長に直接手渡して』という手紙が届いた」という――。

教員時代の経験から子どものPTAには入らないと決めていた

今年、私の息子が小学校に入学した。中学校教員として10年間勤めた経験がある私だが、今年からは初めて保護者という立場で学校と関わっていくことになった。実は子どもが小学校に入学するずっと前から心に決めていたことがある。それは、PTAに入会しないことだ。そしてPTA非会員となって半年たった今、学校から脅しともとれる驚くべき内容の手紙が届いた。その経緯と内容を紹介したい。

まず私がPTAに入会しなかった理由は二つある。

一つは、教員時代に今のPTA活動は学校に必要ないと感じたからだ。

PTA総会からPTAだよりの印刷まで、教師も保護者も忙しいのに夜間や休日の時間を奪われる。例年通り決められた活動を嫌々こなすPTAの必要性にずっと疑問があった。そしてコロナ禍で集会が禁止になり、すべてのPTA活動が中止になったとき、学校運営で何一つ困ることはなかった。これまで我慢して続けていたPTA活動は不要だと確信したのだ。

もう一つは、PTAは任意加入の組織という認識が世間に広まってきたことだ。

PTAはあくまで任意団体であり、保護者に加入義務はない。最近はPTAの在り方がニュースで取り上げられることが増え、岸田文雄首相も「入退会については保護者の自由」との認識を示している。にもかかわらず「入会しない」という選択をする人はまだまだ少数派だ。がまんして入会する人がいる限り、PTAの在り方は変わっていかない。私自身がPTAに入会しないことで、実際にどんな問題が起こるのか経験したいと考えた。

PTAネームプレートの受け取りを拒否する女性の手元
※写真はイメージです
PTAはあくまで任意ということが入会届には書いていない

息子が入学してからすぐ、学校から分厚いPTA会則と共に入会届を受け取った。入会届には入会しない意思を表明する欄はなく、PTAが任意組織である説明は書かれていない。全員が入会することが前提の内容で、正直PTAの改革に遅れを感じて不安はあった。

しかし、担任には連絡帳で「PTA入会届は提出しないこと」「PTAに入会する意思はないこと」を伝えた。どんな反応が返ってくるか気にしていたが、担任からの返事は一言「承知しました」だった。こうして意外にもあっけなくPTA非会員になることができた。

それからはPTA総会、PTA役割決めなどは当然不参加、クラスの保護者会もPTAに関する説明が含まれていたので欠席した。PTA関係の便りが学校から届いていたが、特に気にすることもなく処分した。運動会や授業参観には参加して、子どもの様子を見ることができた。特に不都合なく半年間が過ぎていたため、PTAのことはすっかり頭から消えていた。

入会せずに半年、PTA会長から手紙が届いた

そして10月のある日、仕事中に妻からLINEが届いた。

「学校から手紙が届いた。息子がかわいそうだから、PTAに入会しませんか?」というメッセージだ。

手紙ってなんだ? 突然のことで意味が分からず、とにかく帰ってから手紙を読むと伝えた。その日は帰りが遅かったため、帰宅すると妻と子どもたちは寝ていた。机の上には学校から届いた手紙が載せてあった。次の4枚だ。

・PTA退会届
・PTA退会の確認事項
・PTA退会による確認事項の補足
・PTA会費の集金封筒

正直驚いた。入会してもいないPTAの会長から、退会届が届いたのだ。何かの間違いかと思ったが、宛名に手書きで名前が書いてある。間違えたわけではなさそうだった。

退会届の説明には「10月末までに退会届を直接副校長へ提出すること」「退会届をPTA本部で受領するまで退会完了とならず、PTA役員選挙の対象となること」「退会するにあたっては、記載された確認事項にすべて同意すること」が書かれていた。

そもそも加入していないのに退会届を強要し、その退会方法のハードルが高く、退会することによって多大なデメリットがあると脅される、ツッコミどころ満載のブラックPTAからの手紙だった。

夕方の誰もいない教室
※写真はイメージです
脅しとも受け取れる「非加入の場合のデメリット説明」

まず、退会届の提出が副校長へ直接手渡しなのがおかしい。普段のおたよりと同じく、書面で、担任経由で提出すれば問題はないはずだ。わざわざ学校へ出向いて副校長と話して受け取ってもらうことに対して、学校の内情を知らない妻は「子どもが嫌な思いをさせられたらどうしよう。先生から何か言われないか心配だ」と不安がっていた。退会しようと思っても、同様に諦めてしまう保護者がいるだろう。

また、入会していないのに、退会届を本部が受領するまで、PTAの役員になる可能性があるのは意味が分からない。もし役員に決まったら、退会届は受け取ってもらえるのか。おそらく「あなたが辞退すれば、他の方が代わりに役員をやることになる」というプレッシャーを与えたいのだと思う。退会の意思を示している人が罪悪感を持つ仕組みを残しているのが恐ろしい。

そして、「PTA退会の確認事項」に書かれているPTA退会のデメリットは、完全に非会員に対する脅しに感じた。内容を抜粋して記載する。

・行事で全員に配られる記念品にはPTA会費を使って購入しているものがあって、退会する場合は記念品を用意できない。その場合には記念品を使った体験、作成はできなくなる。
・記念品は実費で支払ってもPTAでは用意しない。もし必要なら自分で手配してもらう。
・PTAで主催される授業外に行われる記念行事への参加はできなくなる。
・PTAで主催される授業外に行われるイベントには一切参加することはできない。

親がPTA非会員だと子どもが記念行事の記念品をもらえない

PTA非会員に対して「子どもの不利益」がいくつも述べられていた。子どもの学校生活を人質にとられて脅されている気分だ。本来PTAとは任意加入の組織かつ、学校に通う全ての子どもたちのために活動する団体のはずである。それがいつの間にか保護者の全員加入が前提となり、卒業式など、全校生徒が参加する行事の記念品購入にPTA会費が使われている。だから「非会員には記念品は渡せません」という、学校内であってはならない子どもへの差別的な扱いがまかり通っているのだ。

ランドセルを背負い、駆け出す小学生男児
※写真はイメージです

公立中学校に勤めていたときに知ったことだが、学校がPTAをなくせないのも、強制加入を黙認しているのも、「PTA会費ほしさ」というのが理由にあるだろう。

学校が使えるお金には、「学校配当予算」と「学校徴収金」がある。学校配当予算は市町村から配分され、予算を使うには学校内で手続きが必要だ。学校徴収金は学校が保護者から集めるお金で、学年費や修学旅行の積み立て、副教材など教育活動に必要だとあらかじめ保護者に伝えたものの購入に使われる。どちらも使い道の自由度が少なく、いざというときに欲しいものが買えない。だから学校とっては、使い道が後から自由に決められるPTA会費の存在はありがたいのだ。

結局のところ学校はPTA会費を融通してほしいだけでは

今回のケースでは、そもそも任意加入のPTA会費から、全校行事の必需品を買っているのがおかしい。全員に配る必要があるなら、学校徴収金で集めて購入すべきだ。息子の学校は直近に周年行事が控えており、息子には記念品が渡されない。PTAからの手紙には「他の児童が記念品を配られているときに、なぜ自分だけもらえないのか? と担任の先生に質問しないように家庭で説明しておいてください」とまで書かれていた。

そこまで非会員の子どもに気が回るなら、PTA会費を使うことをやめてほしい。「PTAに入っていないと行事で困る」なんて脅し文句は、さっさと使えなくすべきだ。

今回届いた学校からの手紙について、X(旧Twitter)でポストしたところ、大きな反響があった。任意加入であるはずのPTAの理不尽さに共感してもらえる声が多くあった一方で、「親なんだからPTAくらい入れ」「私は我慢して子どものためにやった」「PTAに入ってないなら不利益があって当然」「親のせいで子どもがかわいそうだ」など、PTAに加入しないことを批判する意見もあった。

同調圧力に負ける人がいる限り、強制加入はなくならない

「任意」という意味が浸透せず、「みんな一緒」を求める空気は日本の学校文化そのものだ。PTAが嫌ならさっさと辞めたらいい。同調圧力に負けて嫌々加入する人がいる限り、PTAの強制加入はなくならない。そしてPTA活動に苦労してきた人たちが、自分と同じ経験をしない非会員のことを責める悪循環が生まれる。保護者にも教師にも負担が大きい活動を続けることは、誰も得をしないのだ。

一方で、X(旧Twitter)のコメントにはPTAのスリム化、健全化に成功している学校の事例もたくさん寄せられた。「PTAをなくしてボランティア制に切り替えた」「必要ない活動はどんどん廃止した」「メール1通で簡単にPTAを辞められる」「非会員の子もPTAイベントに参加できる」など、保護者が加入、非加入を自由に選べて、子どもが差別を受ける心配もない学校がある。この考えがもっと広く共有されれば、「みんなで苦しみをがまんする」そんなPTAはなくなっていくのではないだろうか。

のぶ
元公立中学校教師
高校時代に校則がない学校で過ごした経験から、見た目をしばる校則に対して疑問をもち、改善するために行動してきた。8年間生徒会の担当として、いじめのない学校づくりを目指す取り組みを続ける。いじめ加害者の別室指導や出席停止も経験した。妻の妊娠、出産をきっかけに、自分の働き方を大きく改革。学級担任、部活動顧問、生徒会担当、生徒指導担当を掛け持ちしながら、「学校で一番早く帰る」をモットーに行動。独身時代は残業時間150時間を軽く超えていたが、月30時間程度に縮小させた。退職後、本格的に始めたツイッターでは、学校のモヤモヤ代弁者として、理不尽な指導や文化を中心に発信中。現在のフォロワー数は4万人を超える。DMには学校のいじめ指導に悩む保護者から、数多くの質問が寄せられている。地方ラジオ出演、テレビの取材やインタビュー出演、ニュース記事の取材など、メディアにも数多く取り上げられた。現在はIT企業に転職して、学校のDX化を提案している。二児の父。

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