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向井理さん「夫婦でも話さないと分からないことがたくさんある」。夫役に思う

  • 2023.11.2

テレビや映画などの映像作品から舞台まで、俳優として活躍の幅を広げる向井理さん(41)。11月3日からの主演舞台『リムジン』では、水川あさみさんと夫婦役を演じます。仕事に対する思いや人生の選択に迷った時の決断方法、夫婦のコミュニケーションの取り方の工夫などについて語ってくれました。

舞台は自分をリセットできる機会

――向井さんが初めて出演された舞台は『ザ・シェイプ・オブ・シングス~モノノカタチ~』(2011年)でした。その後、ほぼ毎年、舞台への出演を欠かさないですね。

向井理さん(以下、向井): 舞台は毎日の時間がある程度決まっているので、生活のリズムも整うからリセットできるんですよ。日々同じことをやるのはハードルも高いし、決してかんたんなことではないのですが、できれば舞台は年に2回ではなく(笑)、年に1回やりたいと思っています。

自分の作品をどういう人たちが見に来てくれているのかを実感できるのは舞台ならではですし、観客の前で芝居をするからこそ成長できる部分はたくさんあると思います。あんなに緊張することは他ではないですから。何度やっても未だにそれは変わらないですし、生で演劇をやるということはすごく意味のあるものだと思っています。それを経験していかないと成長できないということをいつも感じています。

朝日新聞telling,(テリング)

――舞台の経験を積む中で、変化はありましたか?

向井: 『ハリー・ポッターと呪いの子』は公演期間が長く、僕は170公演以上出演したのですが、それを経験すると今回がすごく短いなと感じるんですよね。どの作品でもその1回しか見に来られない人もたくさんいるので、一公演をより大事に、新鮮にという意識でやらないといけないなと改めて思いました。

自ら話すことで分かりあえたら

――今回の『リムジン』は夫婦を軸にした物語です。向井さんご自身は家族のあり方で大切にしていることはありますか?

向井: 家族とは言え、結局は他人なので、お互い全然違う人格だからこそ話さないと分からないことはたくさんあると思います。自分が思っていたことと全然違う捉えられ方をされ、「そういう風に思っていたんだ」というのはしょっちゅうあるし、それはお互い様ですよね。忙しくて中々コミュニケーションが取れない時もありますが、家ではなるべく今日あったできごとを言うようにしているんです。自分から話をすることで、また別の会話が生まれることもあるので、そうやってコミュニケーションを取るようにしています。

朝日新聞telling,(テリング)

――「telling.」の読者の多くは20代後半~40代前半の女性です。夫婦の関係や仕事か結婚か、出産かキャリアかなど、人生の選択に悩む方が多い世代でもあります。向井さんもこれまで人生における選択に迫られた場面はありましたか?

向井: この仕事をすることが割と大きな決断ではありました。その前は普通の飲食店をやっていたので、全然違う世界に入ることには不安もありましたが、その当時、僕をスカウトしてくれたマネージャーが「こういう人と仕事したいな」と思わせてくれる人だったんです。
自分が一生懸命になれる場を提供してくれそうな人や「仕事がやりたい」と思わせてくれる人と一緒にしたいという気持ちが、選択を決断するうえで一番の決め手になったことです。

――その選択に迷いはなかったですか。

向井: 「この人と仕事がしたい」と思うのは、もちろんその人自身に魅力があることもそうですが、自分が「何々したい」という欲求からくるものだと思うので、その欲求に対して素直に従いました。僕の場合は、あまり人のためとか何かのためじゃなく「自分のため」がベースになっていて「この作品をやったら面白そうだな」という自分の中の欲求に忠実にするようにしています。だから食べたいものを食べますし、そんな風に自分の気持ちに素直になった方が結果としていい気がします。

朝日新聞telling,(テリング)

――いま、まさに迷っている人へアドバイスするとしたら?

向井: 決断ってやっぱり自分のためだと思うんですよ。なので、違う仕事に就きたいと思ったら転職すればいいし、結婚したいと思うならそこに向かって行動すればいい。もちろん経済的なこともあると思うし、そんなに簡単なことじゃないと思いますが、それは追々考えるとして、とにかく「今自分が何をしたいか」っていうことをシンプルに考えてみればいいと思います。その結果、大変なところに飛び込んだとしても、あとはもうやるしかないですから。

楽をしようとしない

――今後のお仕事の向き合い方についてはどのようにお考えですか。

向井: 僕らの仕事は選ばれてなんぼなので、やりたかったとしても選ばれなくなったらもうどうしようもないですから。なので、多分辞め時というのは必要とされなくなった時ですね。そこはちょっと特殊な仕事だと思うので、他の職業の方とはなかなか比較しづらいんですけど「ここがゴール」というのもあまりないので、求められている間は全力でやっていきたいと思っていますし、今の仕事を辞めるというのは考えたことはないです。

朝日新聞telling,(テリング)

――誰かに求められるために心がけていることはありますか?

向井: オーディションで選ばれることも、キャスティングされるにしても、これだけたくさんの俳優がいる中で自分を選んでいただくためには、当たり前のことかもしれないけど、とにかく一生懸命、まじめにやることですかね。

あとは楽をしようとしないこと。ちょっと例えが違うかもしれませんが、今の世の中、便利なことっていっぱいあるじゃないですか。昔は電車に乗るにもいちいち並んで切符を買っていたけれど、今は電子マネーでピッと改札を通れる。買い物したらビニールが指に食い込んでちぎれそうなくらい重い袋を持たされて歩いたりしていたのに、車があれば重い荷物をもって歩かなくてもいいし、ネットでいろいろ買えますからね。

それはそれで便利でいいかもしれないけど、あんまりそういった楽をしすぎてはダメだなって思うんです。そこの線引きは難しいんですけど、そういう苦労って必要だと最近すごく思っていて、楽を求めると必死さがなくなっていく気がするんです。その必死さをきっとどこかで誰かが見てくれているし、自分も何か得るものはあると思うので、一生懸命やるということをいつも大事にしています。

■根津香菜子のプロフィール
ライター。雑誌編集部のアシスタントや新聞記事の編集・執筆を経て、フリーランスに。学生時代、入院中に読んだインタビュー記事に胸が震え、ライターを志す。幼いころから美味しそうな食べものの本を読んでは「これはどんな味がするんだろう?」と想像するのが好き。

■慎 芝賢のプロフィール
2007年来日。芸術学部写真学科卒業後、出版社カメラマンとして勤務。2014年からフリーランス。

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