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庭づくりの参考に! ヨーロッパで見つけたガーデン実例をご紹介~イタリアガーデンとヴェネツィア&ブラーノ島~

  • 2023.10.30

普段見慣れているガーデン風景とは一味違う、異国のガーデンには参考にしたいポイントもたくさんあります。2023年の夏をヨーロッパで過ごしたドイツ出身のガーデナー、エルフリーデ・フジ-ツェルナーさんが、滞在中に訪れたイタリアのガーデンシーンやエピソードをご案内。海外ガーデンで見つけた、乾燥や夏の暑さにも耐える、ローメンテナンスなおすすめ植物もご紹介します。

ヨーロッパ旅行で見つけたガーデンアイデア

イタリアガーデン
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Tremolada, Emilio

ようやく涼しく、色彩豊かな秋がやって来て、新しいガーデニングシーズンが始まりましたね。蚊の大攻撃を受ける夏が過ぎ、蚊取り線香や虫除けスプレーがなくても、家の前のポーチに腰を下ろし、優しい陽の光を浴びるひとときを存分に楽しむことができる季節です。

さて、2023年の夏、私はヨーロッパのガーデンを巡る旅に出かけました。その記憶が薄れてしまう前に、旅で見つけた面白いガーデニングアイデアを、みなさんと共有したいと思います。前回の記事ではシンガポールやドイツ、オランダのガーデンを取り上げたので、今回はイタリアのガーデンをご紹介しましょう。

南チロル・メラーノのガーデン風景

南チロル・メラーノ

まずご紹介したいのは、イタリア・南チロル地方にあるメラーノ。ヨーロッパ旅行の拠点としていた母国ドイツからイタリアへ向かう途中で立ち寄りました。オーストリアとの国境近く、ブドウ畑と丘陵に囲まれた地域に位置するメラーノは、多くの素晴らしいプライベートガーデンや魅力的な家々、中世の城やアーケードを有する、非常に洗練されたエレガントな町です。イタリアの地中海らしさとアルプスの伝統が融合したカラフルなライフスタイルと、温泉街を楽しむことができる南チロル地方。メラーノでも、あちこちに育つヤシの木と穏やかな気候が地中海らしい雰囲気が強く感じられました。

ブドウ棚

この町でまず素晴らしいアイデアだと思ったのが、広い駐車場の一部をブドウ棚に仕立ててあったこと。大粒のブドウがたわわに実るトレリスの下の駐車場に車を停めたのは、初めての経験でした。トレリスは高さ2×幅2mほどで、駐車する車に日陰も提供できます。メラーノで初めて目にしたこの果物の実る駐車場というアイデアは、旅行中のホテルの駐車場や個人邸の駐車場で、何度も出会うことになりました。レストランのテラスでディナーをいただいた時にも、同じタイプのトレリスにブドウが絡めてあり、とても目を楽しませてくれました。私のバックヤードガーデンでもトレリスとブドウを取り入れたいと本気で考えています。

南チロル地方ならではの風景

南チロル地方
南チロル地方の風景。DaLiu/Shutterstock.com

北イタリアの高速道路沿いには、まるでリンゴの果樹園に居るような気分を味わえる場所もあり、印象的でした。低くコンパクトに茂るリンゴの木は、高速道路のすぐ脇まで植わっていて、収穫期には誰かリンゴをもいでいく人がいないのかとちょっと疑問に。幸い、高速道路では車を停車することは禁止されています。南チロル地方は果物の生産地として有名で、ドイツでもこの地域のリンゴがよく販売されていますが、リーズナブルな値段でとても美味しいですよ。

アルプス山脈東部にある南チロル地方では、庭園間の仕切りや境界線として石垣が多く見られます。これらは急峻な土地の法面を確保するのに欠かせません。また、多くの丘が階段状になっており、斜面の多い地域ながら土地が有効に活用されています。高さ50cmほどの低い石垣もあり、アイアンのフェンスの基礎として利用されていました。

イタリアガーデンに欠かせないアイアンゲート

アイアンゲート
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

イタリアガーデンでとても人気の高い要素が、アイアンのフェンスやゲート。

私が訪れたイタリア北部、エミリア・ロマーニャ地方、ボローニャ、フェラーラ、ラヴェンナ周辺の庭園は、数種の低木を組み合わせた生け垣をしきりにするなど、ナチュラルなものが多くありましたが、印象は大きく異なりました。地域によりさまざまなイタリアガーデンで、すべてのガーデンに共通する特徴として、ドイツや日本のガーデンと大きな違いを感じたのは、どこでも巨大なアイアンのゲートが使用されていることです。

アイアンゲート
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

私がイタリアで丸一週間滞在した家は、多くの田舎の家と同じく野原の中にあり、小さな田舎道が家に続いていました。到着してみると、家には大きな建物が2棟あり、それぞれにつき4棟のテラスハウスがあって、8家族に分かれて使用されていました。各テラスハウスにガーデンが付属しており、2つは広い駐車場の隣の前庭に、もう 2 つは南西に面した裏庭にありました。

私が滞在させてもらったテラスハウスの庭は、非常に忙しい家族が暮らす家だったため、ローメンテナンスというか、ほとんど自然のままの状態でした。芝生には野草が茂り、動物たちも暮らしています。庭には小さなカメが 3 匹、小さな囲いの中にはニワトリが 2 羽いましたよ。また、大きな鶏小屋、木製の小屋、そして洗濯物を干すためのスペースがありました。ちなみにイタリアでは、多くの人が庭のスペースや家の間にロープを張って、屋外で洗濯物を干します。一方ドイツでは、干し方は人によってさまざまです。庭の周囲は生け垣で囲われ、小屋にはフジが勢いよく絡んでいました。オーナー不在のため、あまり庭に手は入れられませんでしたが、このフジだけは90ℓの袋4つ分がいっぱいになるまで枝を切り戻しておきました。

フジ
生育旺盛なフジは、壁や小屋、家を覆うほどに成長します。Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

さて、私が滞在した家の庭はこのような形でしたが、ここでもアイアンの門は欠かせないものでした。リビングスペースは大きな金属製のフェンスと、メインゲートで区切られていて、メインゲートはアイアン製で開閉は自動式。重厚なオールブラックの大きなゲートは非常に印象的でした。

アイアンゲート
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

こうした巨大なアイアンゲートは、この地域のガーデン全体に見られる特色。色はさまざまですが、どれもアイアン製の大きなもので、時には、門から続く庭や家が、その大きさと釣り合っていないこともありました。

今回滞在した家のように、畑の中に小さな集合住宅があることの面白い点は、農家の方が農作業をしていると、まるで自分の庭で農作業をしてくれているように感じられることです。

私がこの場所に到着した当初、周囲の畑には高さ50cmほどにまで成長したクローバーが見事に茂っていました。それが、私が発つ前日には、クローバーはすべて刈り込まれて干され、干し草のいい香りが漂っていました。草が刈られた跡地では、たくさんの鳥がミミズや昆虫を探して歩き回り、とても素敵な光景でした。

自然風なイタリアの庭

今回訪れたイタリアのガーデン風景と、前回ご紹介したオランダの庭で大きく異なるのは、ガーデンがそれほど完璧に維持されていないことが多いことです。むしろちょっとナチュラルというかワイルド! 周囲も未舗装の道路や砂利道が多く、舗装されたスペースはあまりありません。

ガーデンの様子は、地域や村々によって大きく異なり、公共空間の緑化に関しても、力を入れている地域もあれば、それほどでもない地域もあります。今回訪れた中では、北イタリアのトレント県にあるメッツォコローナという村は、あちこちに素敵なコンテナが置かれているだけでなく、美しいプライベートガーデンもたくさんあり、思い出深い場所になりました。ある個人邸のダークなアイアンの門の前に置かれた素焼き鉢で見かけた、黄色のラインが入ったニューサイランの細い緑葉とピンクのサフィニア (ペチュニア)など、シンプルながらちょっと面白い植物の組み合わせもありましたよ。橋にはシンプルにピンクと黄色がかったペチュニアをアレンジしたウィンドウボックスが飾られ、高くそびえる山々や緑の斜面が続く景色の中で素敵なアクセントに。ブドウ畑の周り、村の中、村の周り、さらには山の上でもこうした花飾りが見られましたよ。

メッツォコローナ

ヴェネツィア&ブラーノ島

ヴェネツィア
ヴェネツィアの路地を彩る植物たち。*

イタリアで訪れた場所で、もう一つ素晴らしかったのが、ヴェネツィアとブラーノ島への日帰り旅行でした。メッツォコローナから南東へわずか230kmの距離ですが、その雰囲気はまったく異なります。私がヴェネツィア駅に到着したのは、とても暑く晴れた夏の日だったので、ヴェネツィアでの最初の買い物は素敵なアイボリー色の日よけ帽。歴史ある建物の間を抜ける細い道を歩いていると、センペルビウムやセダムのウィンドウボックスがよく飾られていました。

多肉植物
ローメンテナンスで育てられるセダムやセンペルビウムなどの多肉植物。Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich
アエオニウム・ゴメレンセ
アエオニウム・ゴメレンセ。Svetlana Mahovskaya/Shutterstock.com

こうした町中に飾られる植物の中で、特に私の目に留まった品種が、ベンケイソウ科のアエオニウム・ゴメレンセ。カナリア諸島(ゴメラ島)を原産とする、風車のようなロゼット葉を持つ、常緑の美しい多肉植物です。アエオニウム・ゴメレンセの葉は輝くような銀色で、暗いコーナーを明るくするのにぴったり。濃い赤から緑まで幅広い色のバリエーションがある、他のアエオニウムの品種と組み合わせるのもおすすめです。

多肉植物のガーデン
アエオニウムやサボテンを取り入れた植栽。Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

アエオニウムは丈夫なので、ローメンテナンスで育てられます。ヴェネツィアの各地で、素焼き鉢やウィンドウボックスに植えられたこのアエオニウムを見かけ、かなり日陰になる場所でも育っていました。ヴェネツィアの水路に面した、年月を経て色褪せた家の壁にとてもよく似合う、シンプルな植栽でした。

ヴェネツィアの街並みにぴったりのアエオニウムですが、温暖な気候に適した植物なので、寒冷地域では冬は家の中または温室に取り込む必要があります。

アエオニウム
エオニウムはカラーバリエーションも豊富。Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

旅のハイライト ブラーノ島

ブラーノ島
Desizned/Shutterstock.com

そしてヴェネツィアから水上バスで約45分、美しいブラーノ島には刺激的で新しいさまざまなガーデニングアイデアが待っていました。ブラーノ島はそのカラフルな家々で有名な小さな島ですが、桟橋に到着したときからすでに、黄、赤、青、ピンクなどの色彩で訪れる人を迎えてくれます。本当に素晴らしかったです!

ブラーノ島

小さな家や可愛い橋のかかった小さな水路があふれるこの島で、私にとって一番見どころだったのは、村の真ん中にある観光名所「ブラーノの斜塔」ではなく、漁師たちが淡々と毎日の仕事をしている小さな漁船など、この小さな島の隅々にまで満ちている独特の素敵な空気感でした。

ブラーノ島
ブラーノ島

ブラーノ島には緑はあまり多くありませんでしたが、サボテンやベンケイソウ、ペチュニア、サフィニアなどはよく見かけました。カラフルな家の色に合わせた、こちらも色鮮やかなプランターは、シンプルながら個性的なディスプレイになります。一日中この島で過ごしたいと思うほどでしたが、ほとんどの観光客はブラーノ島では2〜3時間しか過ごしません。旅行計画を立てた時にはその魅力を知らなかったため、残念ながら私も短時間の滞在でした。

次回訪れる機会があれば、時々B&Bとして貸し出されている可愛い家のどれかを1軒予約して、一晩滞在したいと思います。その際は、ヴェネツィアのラグーンにある島々を探索するのも楽しいかもしれませんね。

ヴェネツィア旅行も楽しかったのですが、今回の旅行で一番心に残ったのはブラーノ島での滞在でした。小さなカラフルな島、ブラーノ島にはシンプルで心地よい時間が流れていました。

ガーデニングを楽しむためには、なにも大きな庭を持つ必要はありません。自分の好きな植物をアレンジした素敵なプランターが1つあるだけで、とても幸せな気分になることができます。ヴェネツィアとブラーノ島への旅は、シンプルなガーデニングが地域全体の景観に影響を与え、その場所を活気づけてくれることを改めて教えてくれました。

Credit
文&写真(*) / Elfriede Fuji-Zellner - ガーデナー -

エルフリーデ・フジ・ツェルナー/南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子供向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。

Photo/ Friedrich Strauss Gartenbildagentur/Stockfood

まとめ / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

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