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サイゼリヤ、QBBチーズ、イオンモール 有名企業に起用される人気イラストレーター、無二の画風が誕生するまで

  • 2023.10.29

シンプルなのに 一度見たら忘れない無二の画風

イラストレーターの山崎さんが描いた「Q・B・Bベビーチーズ」のキャラたち
イラストレーターの山崎さんが描いた「Q・B・Bベビーチーズ」のキャラたち

イタリアンレストラン「サイゼリヤ」の間違い探しや、「六甲バター」のチーズブランド「Q・B・Bベビーチーズ」、ショッピングセンター「イオンモール神戸南」などのビジュアルに共通して起用されているイラストをご存じでしょうか。

手描きならではの素朴な線と、鮮やかでカラフルな色使い、表情豊かなキャラクターたちが登場する世界観は、ひと目見れば「見たことある!」と気付く人も多いはず。

これらのイラストを描いているのはイラストレーターの山崎秀昭さんです。

シンプルなのに一度見たら忘れない、老若男女に好かれるイラストはどのようにして誕生したのでしょうか。本人に話を聞きました。

どうしたら売れるか?試行錯誤した下積み時代

自身のイラストの前に立つ山崎さん
自身のイラストの前に立つ山崎さん

山崎さんは神戸市の在住。小さい頃から絵を描くのが好きで、描いた絵を人に褒めてもらえることが当時何よりうれしかったといいます。

大阪芸術大学の美術学科を卒業後、就職はせず「絵で食べていこう」と決意。飲食店でアルバイトをしながら、ポストカードを自作してはおしゃれな雑貨店への持ち込みを繰り返していたのだそう。

「当時まだ画風は全く確立されていませんでした。大学では油絵の抽象画などをやっていたので、今の絵柄とはかけ離れていましたね。ちょうどカフェや雑貨がブームになっていた時期でしたから、雑貨店には他にもたくさんの作家たちのポストカードが何百枚と並べてあって、その中でどうすればお客さんに選んでもらえるかということをいつも考えていました」(山崎さん)

その試行錯誤が、山崎さんの今のタッチを生み出していくことになります。

「まず、細かい背景を描くのはやめました。もともと決して得意ではなかったので、苦手なものは捨てよう、と。そんな風にどんどん要素を減らしていったら、シンプルな線で描いてバック(背景)はベタ塗り、色も限られたものを使う、という今のスタイルに近づいていきましたね」

山崎さんが使う色は、基本的にオレンジ、黄色、黄緑、水色、それから白と黒の計6色。「オレンジと黄色はとても映えるので(ポストカードの)バックの色にしたらよく売れたんですよ。その色をキャラにも使うようになっていったという流れです」

「イラストレーターって本来、仕事を取るためにたくさんの売り込み先を回ろうと思ったら、ろいろなタッチが描けた方がいいんだと思います。でも僕には今のこの画風しかない。自分はこれ一本でいくと決めました。その方が、間口は狭いけど来てくれる人はめちゃめちゃファンというケースが多いんです。『この絵が欲しい』と声を掛けてくれるので、とても仕事がやりやすいですね」

今までで最多 1枚のポスターに540人ものキャラ

山崎さんが描いた「Q・B・Bベビーチーズ」のキャラたち
山崎さんが描いた「Q・B・Bベビーチーズ」のキャラたち

「六甲バター」の「Q・B・Bベビーチーズ」も、やはり担当者が山崎さんのイラストの熱烈なファンでした。在住地である神戸市に本社が立地している縁もあり、同社の設立70周年に併せて新キャラクター「Qちゃん」とその仲間たち全9種類を制作しました。

チーズランドに暮らすプリンスのQちゃん、幼なじみの「カマンベール姫」、Qちゃんのお付きの「アーモンド男爵」など、ストーリー性を感じさせる作品世界が今、徐々に人気を集めつつあります。

その他、地元の神戸新聞社やイオンモール神戸南、神戸マラソンのポスター、同市のごみ分別キャラクターなど、これまでに数々の作品を手掛けてきました。

「イオンモールのポスターは思い出深い仕事の一つです。何せ1枚のポスターに540人ほどのキャラクターを描きましたからね。制作期間は3週間ほどで、出張先で飛行機待ちの空港にまで持ち込んで必死に描いた記憶があります。これ以上多いキャラが登場するポスターは、もう描かないのではないでしょうか」

現在は、2024年に出版予定の書籍の準備や、自身のイラストのグッズ化など、活動の幅を広げているとのこと。

「作品を描いて出来上がったら、多くの人に見てもらいたいという思いは根底にあります。そのためにどうするか?というのが今のテーマでもあって、グッズ化もその一つ。画風が一つと間口は狭いですが、アイテムが変わればリーチも広がる。もっともっと、たくさんの人に届く作品を描き続けていきたいですね」

優しいタッチが老若男女の目にとまる山崎さんのイラスト。次はどんな魅力的なキャラクターが誕生するのでしょうか。

(LASISA編集部)

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