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紅く染まる石段を生菓子に写して。―毘沙門堂 敷紅葉―〈御菓子丸〉が一皿で表す、京都、寺社仏閣の風景 vol.20

  • 2023.10.27
出典 andpremium.jp

    京都で和菓子を制作する〈御菓子丸〉が、四季折々の寺社仏閣の風景を、独創的な菓子と文とで表現。京都の風景に思いを馳せたくなる、美しい一皿を紹介します。    

出典 andpremium.jp

毘沙門堂
敷紅葉

京都市街から滋賀へ向かう途中、山科というエリアに位置する毘沙門堂。天台宗の寺院で、毘沙門天が祀られていることからその名で呼ばれ、寛文5(1665)年に現在の地に再興された。境内周辺に並ぶのは、イロハモミジ、ヤマモミジなど約150本もの紅葉の木。秋深まると参道は美しく色づき、さらに季節が進むと落ち葉が参道の石段を紅く染める。散った後の風景は特別な美意識を呼び起こすもので、この時季に訪れる多くの人々と同じように、私の心にも深く刻まれている。
山の芋と白小豆をきんとん生地にし、柿で赤橙色に染める。石段の景色を思い出しながら長方形に形作ったきんとんの中に、栗の餡を忍ばせ、口に入れてなお秋が広がるようにした。毘沙門堂の石段を食べたらきっとこんな味だろうと、想像して出来上がった菓子だ。
秋に葉や柿が染まる色が暖色であることには、何か自然の法則があるように思えてならない。春には春の、秋には秋の色づきと味わいがあり、その季節の食材でおいしい景色に仕上げられたときには、何にも代えがたい喜びを感じるのだ。

天台宗京都五門跡の一つ。『毘沙門堂』京都市山科区安朱稲荷山町 075‒581‒0328 拝観9時〜17時(16時30分受付終了) 無休 拝観料500円

photo : Yoshiko Watanabe
*『アンドプレミアム』2023年12月号より。

和菓子作家 杉山早陽子

1983年三重県生まれ。老舗和菓子店での修業を経て、2006年から和菓子ユニット〈日菓〉として活躍。2014年から〈御菓子丸〉を主宰。

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