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チャン・グンソクら異色タッグによるクライムサスペンスの傑作『餌(ミッキ)』の魅力とは?

  • 2023.10.26
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「韓国史上最悪の詐欺事件」から8年、「不可解な連続殺人」が巻き起こる 謎多き事件を追いかける刑事が闇から暴き出す真相とはー? U-NEXTで全編独占先行配信中、DVDが11月3日からリリース開始の話題作『餌(ミッキ)』の魅力を紹介する。

韓国で実際に起きた投資詐欺事件がモチーフ

巨額の被害を出しながら、容疑者死亡によって幕を下ろした過去の詐欺事件の全貌と、新たに発生した連続殺人事件の行方を描いた『餌』は、実際に起きた詐欺事件や殺人事件を取材した上で作られた本格クライム・サスペンス。

主演を務めたチャン・グンソクが、5年ぶりにドラマ復帰を決めた作品というだけあって見応え十分だ。

連続殺人事件の容疑者は死んだはずのカリスマ詐欺師

物語の始まりは2010年、稀代の詐欺師ノ・サンチョンが開催する大規模セミナーに多くの人々が集うシーンから始まる。

広いホールのステージの真ん中でスポットライトを浴びて「皆さん、このノ・サンチョンを信じますか!?」と叫ぶ彼が、巧みな弁舌で多くの人々を熱狂させる姿は新興宗教の教祖さながら。冷静に見れば怪しい限りだが、一攫千金を夢見る人々はマルチ商法と呼ばれる手口にまんまとはまってしまう。

『餌(ミッキ)』
『餌(ミッキ)』

実際にこの手の詐欺がなくなることはなく、国を問わず今もどこかで被害を生んでいる。現実を反映するかのような、強烈でリアルな描写に冒頭から引き込まれずにはいられない。

ノ・サンチョンの詐欺はやがて明るみに出て、警察に追われた彼は仲間と高飛び。その後、逃亡先の中国でサンチョンが交通事故死したと報じられ、すべてを失った被害者たちは泣き寝入りするしかない。それから8年後の2023年へと時は移り、チャン・グンソクが演じる刑事ク・ドハンが登場。甘さを封印した、これまでにないワイルドな彼の風貌に目を奪われる。同時に、惨殺死体の発見により新たな事件が幕を開け、緊張感は高まるばかりだ。

『餌(ミッキ)』
『餌(ミッキ)』
ヒットメーカーが仕掛ける、予測不能なストーリーと緊張感あふれる展開にハマる

事態はここから大きく動き出し、ノ・サンチョンの関与を示唆する殺人が立て続けに発生。

捜査が進められる中で過去と現在を行き来しながら、史上最悪とも言われる詐欺事件と、そこに関わった多くの人々の事情が描かれて いく。時代が変わるとともに、今が何年かはっきり示され、年代によって画面の色のトーンも変わるため混乱させられる心配はない。

むしろこうした重層的な構成や、効果的な演出がドラマをより面白く見せている。

さらに、単純に善と悪に二分できない登場人物の複雑な背景が物語に深みを与えた。登場人物は加害者と被害者、捜査側の三者に大きく分けられ、ノ・サンチョンと女性記者チョン・ナヨン、そしてク・ドハンが三者を代表する人物としてドラマを牽引していく。

『餌(ミッキ)』
『餌(ミッキ)』

彼らの後ろには詐欺の仲間、被害者の会のメンバー、警察の上司や同僚らがおり、それぞれに事情を抱えて独自の思惑から行動に出る。彼らの予測できない動きが見る者を翻弄し、引きつけてやまない。

緊迫感あふれる脚本を手掛けたのは『ミストレス~愛に惑う女たち』のキム・ジヌク。1話ごとが一編の映画のような趣ある映像を作り上げたのは『ボイス—112 の奇跡—』や『ペーパー・ハウス・コリア:統一通貨を奪え』など、犯罪物で定評のあるキム・ホンソン監督。巧みな脚本・演出に加え、俳優たちの見事な演技によって、一級のサスペンスとしてはもちろん、人間ドラマとしても極上の味わいを持つ作品へと仕上がった。

(文:小田香)

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