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ウー・ウェンさん直伝、皮から作る“秋のシュウマイ”レシピ

  • 2023.10.24
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3種の秋の焼麦

シュウマイはもともと「焼麦」と書くんですよ

調理をするウー・ウェンさん
とある秋の日。ウー・ウェンさんのクッキングサロンで、いざ調理がスタート!
蒸籠の蓋を開けるウー・ウェンさん
本日は直径18㎝の蒸籠を使用。「1~2人前にちょうどいいのよ」。

これまで70冊以上のレシピ本を出版し、20余年前に発表された記念すべき第1作『ウー・ウェンの北京小麦粉料理』(高橋書店)が、今も多くのファンに読み継がれているウー・ウェンさん。そんな小麦粉使いの達人に、簡単かつ格別においしいシュウマイの作り方を伝授していただいた。

「日本のシュウマイはゴロッと丸くて肉あんが見えているものが多いけど、中国ではもともと“焼麦(シャオマイ)”と書くように、肉あんを薄い皮で包んだ様子が麦の穂に見えることが名前の由来なんです。本来シュウマイは“皮を味わい、皮の美しさを賞でる”ものなんですよ」とウー・ウェンさん。

だから彼女にとって、シュウマイは皮から作ることが鉄則。本日は豚肉ではなく軽やかな味わいの鶏肉を使い、秋の食材をトッピングして季節を楽しむシュウマイを作ることに。「春ならそら豆、夏は枝豆、これからの季節は松茸もいいわよね。基本的なあんの作り方を覚えておけば、あとは自由自在。今は何でもお金で手に入る時代だけど、だからこそ一番贅沢なのは“手作り”じゃない?」

コツはとてもシンプル。皮は温度、あんは混ぜる順番を守ること

用意する小麦粉は100g。これでシュウマイの皮20枚分だから、自宅で日常的にさっと作るにはちょうどいい分量だ。

「シュウマイの美しい形を作るためには、直径10㎝の薄い皮を作ることが大切。水やぬるま湯で作る生地もありますが、熱湯を加えるとグルテン由来の粘りが抑えられて生地が変形しにくくなるので、シュウマイの皮は熱湯で作ります。温度の変化で生地の固さがどんどん変わるから、温度はきちんと守ってね。もっちりとした皮に仕上げるには温度が命です」

ちなみに、熱湯で捏ねると小麦粉のデンプン質が糊化して柔らかくしっとりとした皮に仕上がり、低い水温で捏ねるとグルテンが形成され、より弾力や伸展性が生まれる。水餃子の皮や麺は水やぬるま湯で、シュウマイや鍋貼(ゴーティエ/焼き餃子)の皮は熱湯で捏ねるのが基本だ。

「小麦粉は奥が深い。粉から皮になるまで、ドラマチックな変化が見られるのが面白くて。どうすればもっと仲良くなれるかと考えるのが楽しくて仕方がないの(笑)」

あんは、鶏肉を使うならひき肉の状態で購入し、豚肉の場合は薄切り肉を自分で荒みじんに叩くのがウー・ウェンさん流。

「鶏のひき肉はモモかムネか、部位が表記されているけれど、豚肉は“豚ひき肉”と書かれているだけで部位が分からないでしょう。だから自分で使いたい部位を買って叩いた方が絶対おいしくなるんです。あんの調味料は、お酒などが水分を与える化粧水、オイスターソースや胡麻油は生地の水分を留める保湿の役割をしてくれるので、一見小さなことでも調味料を加える順番はとても大事」

さて、蒸し上がった3種のシュウマイは、口溶けのよい皮が何ともおいしくて「シュウマイは皮!」であることを実感する。プリプリとした鶏肉のあんから滲み出る健やかな旨味にウットリし、塩辛さはないのに味わい豊か。これ、何個でも食べられちゃうやつ…! 

それにしても、粉の状態から捏ね上げ、切って伸ばしてあんを包む、その一連の動作の見事なことと言ったら。あん作りも含めて最後に蒸し上がるまで、ものの40分ほど。この手際さえ身につけられたなら、ウー・ウェンさんの言う通り、“買ってくるより簡単” なのだ。 あとは鍛錬あるのみ! 

蒸し上がったシュウマイ
12分経ったら蒸しあがり! 蒸籠の蓋を開けた瞬間、撮影チームから「かわいい~」と歓声が上がった。

「秋のシュウマイ」 レシピさあ、作ってみよう!

○材料(20個分)

・生地
小麦粉(薄力粉) 100g
熱湯 70ml

・あん
鶏モモひき肉 300g
胡椒 少々
酒 大さじ1
生姜 15g
醤油 大さじ1
オイスターソース 大さじ1/2
玉ねぎ   1/4個
パン粉 10g
太香胡麻油 大さじ1/2

・この日のトッピング
銀杏、天津甘栗、サツマイモ 適宜(20個分)

○作り方

STEP1_熱湯で生地を作る

ボウルに入った小麦粉に熱湯を回し入れる様子
ボウルに小麦粉100gを入れて表面をならし、熱湯を一気に回し入れる。
ボウルに入った小麦粉
表面に透明感が出てくるのは、小麦粉のデンプン質が熱湯に反応し「糊化」している証拠。熱湯によってグルテンが固まり、糊化させることで、ベタつかずしっとりとした皮に仕上がる。
ボウルに入った小麦粉を混ぜる様子
最初は菜箸を使って手早く混ぜ、全体にムラなく水分が行き渡るよう混ぜていく。

STEP2_生地をまとめる

生地を捏ねる様子
生地が冷めてきたら、菜箸に付いた生地もきれいに取り、指を広げた手で粉気がなくなるまで揉み込んでいく。
生地を捏ねる様子
ボウルに付いた粉もすべて掬い取りながら捏ねていく。外側の生地を内側に巻き込むようにローリングするのがコツ。
捏ねあがった生地
水分が全体に馴染み、手やボウルに生地がつかなくなり表面が滑らかになったら“捏ね上がり”の合図。乾かないよう固く絞った濡れ布巾でボウルを覆い、15分ほど寝かせる。

STEP3_生地を捏ねる

生地を捏ねる様子
15分ほど寝かせた生地を取り出して麺台に載せ、手のひらの付け根で生地を押し出すようにして捏ねる。
生地を捏ねる様子
押し出した生地の外側に指をかけて内側に巻き込み、再び手のひらの付け根で押し出す……を2~3回繰り返し、生地を45°ずつ回転させながら同様の作業を続けていく。
生地を丸くまとめた生地玉
生地がきめ細かく滑らかになったら、直径8㎝ほどの生地玉にまとめる。ちなみに生地の直径の目安が描かれたこの麺台は、ウー・ウェンさん考案のオリジナル商品(現在は販売終了)。

STEP4_生地を切り分ける

生地玉を二等分したもの
先ほどの生地玉を2等分にカットする。
生地玉を棒状に捏ねる様子
2等分にした生地玉を、両手のひらを使い、それぞれ直径2㎝×長さ20㎝ほどの棒状に伸ばす。
生地を包丁で切る様子
棒状の生地を前後に90°ほど転がしながら、包丁で10等分(合計20個)に切っていく。
生地に打ち粉をまぶす様子
切り分けた生地に少量の打ち粉をふりかけ、両手のひらで覆うようにしながら生地を転がし、打ち粉をムラなくまぶす。

STEP5_生地を伸ばす

生地を伸ばす様子
10等分にした生地は、切り口を上にして手のひらで押しつぶすと、丸く伸ばせる。
生地を伸ばす様子
丸く伸ばした生地の端を持ち、麺棒を使い手前から中心へ向かって伸ばしていく。綿棒を持った手を引くときに生地をクルッと回す。これが素早くきれいな円形を作るコツ。
生地を伸ばす様子
麺棒を生地の端から中心へ押して戻す、を繰り返し、直径10㎝になるまで伸ばす。端側が薄く平らで、中央にやや厚みが残るのが理想的。この形なら餡が包みやすく、蒸しても破れにくくなる。

STEP6_あんを作る

あんの材料
鶏ひき肉に混ぜる材料たち。生姜は食感を楽しむため擦りおろさずに刻み、玉ねぎの水分や肉汁を逃さぬようスポンジがわりにパン粉を入れるのがポイント。生地を15分寝かしている間(「STEP2」の後)に、あん作りをするのが効率的だ。
トッピングの銀杏、甘栗、サツマイモ
本日のトッピング。銀杏は生のもの、サツマイモは小口切りに、栗は和栗でなく甘みの強い天津甘栗を用意し、1/2個に割る。
ボウルに入った鶏ひき肉
鶏ひき肉はムネでなく脂肪分が旨味になるモモを選ぶのがポイント。
鶏ひき肉の入ったボウルに生姜を加える様子
まずは胡椒、お酒、生姜の順に入れてその都度菜箸でよく混ぜる。この3つは肉の臭みなどの個性を中和させる作用が。「調味料を入れる順番はとっても大事!」。
鶏ひき肉の入ったボウルに太香胡麻油を加える様子
続いて醤油、オイスターソース、玉ねぎ、パン粉、最後に太香胡麻油を入れる。「ごま油は香りの役目なので、生搾りの“太白”でなく焙煎した“太香”の方ね」。

STEP7_成形〜蒸す

生地にあんを載せる様子
生地を手に持ち、中央に20等分にしたあんを載せる。
あんを生地で包む様子
まず親指と人差し指を合わせて輪を作るようにして生地をすぼめ、あんと生地を密着させるように包み込む。次に片方の手で底の部分を軽く支え(写真)、もう片方の手でクルクルと回しながら“麦の穂”をイメージして形を整える。
蒸籠に並べられたシュウマイ
仕上げに秋の素材をトッピングしたら、クッキングシートを敷いた蒸籠にシュウマイを並べていく。本日は3種の具材ごとに蒸籠を分け、3段重ねにして鍋へ。
「ウー・ウェン パン+」で水を沸騰させる様子
深鍋に水をたっぷりと。水が写真のようにグラグラと沸騰してから蒸籠を置き、12分間蒸す(強火2分の後、弱火10分)。ちなみに写真の深型フライパンもオリジナル商品の「ウー・ウェン パン+」。
3種の秋の焼売
彩りも美しい3種の秋の焼麦(シュウマイ)が完成! 本日はウー・ウェンさんの中国食器コレクションから、古い青磁のお皿で。

profile

ウー・ウェンさん

ウー・ウェン

中国・北京生まれ。1990年に来日、自宅でのもてなし料理が評判を呼び、料理研究家の道へ。1997年より「ウー・ウェン クッキングサロン」を主宰し、医食同源が根ざした中国の家庭料理を伝える。近著の「10品を繰り返し作りましょう」(大和書房刊)が『第10回料理レシピ本大賞in Japan2023』エッセイ部門賞を受賞したほか、レシピ本やエッセイの著書多数。
HP:https://cookingsalon.jp/

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