【歴史コラム】『ポッサム』でチョン・イルが演じる主人公の本当の正体は何か

時代劇『ポッサム～愛と運命を盗んだ男～』で主役のチョン・イルが演じているのが、主人公のバウだ。彼はただの盗っ人ではなかった。ドラマが進むにつれて明らかになるのだが、元は両班(ヤンバン)の出身だった。しかも、由緒ある王妃につながる家系を持っていた。

実際、バウは仁穆(インモク)王后の父親であるキム・ジェナム(金悌男）の孫という設定だ。本名はキム・デソクである。彼が、イ・ジェヨンが演じるイ・イチョムに強い復讐心を持つ背景を見てみよう。

光海君(クァンヘグン)は1608年に15代王として即位しても、王位が不安定であった。そこで、イ・イチョムとキム・ゲシは、いまだ王位に野心を持っていた光海君の兄・臨海君(イメグン)を殺害した。

さらに、2人は仁穆王后が産んだ永昌大君(ヨンチャンデグン)を標的にした。彼は1606年に生まれた宣祖(ソンジョ)の嫡男であり、光海君の異母弟だった。それにもかかわらず、イ・イチョムとキム・ゲシは、永昌大君を排除するための口実を見つけ、キム・ジェナムが謀反を画策していたという事件を捏造した。

無念にもキム・ジェナムは処刑されて、彼の妻も奴婢(ぬひ)にされてしまった。さらに、親族も徹底的に処罰されて、仁穆王后の実家は滅ぼされた。永昌大君も無事ではいられない。1614年に流罪の末に殺されてしまった。

こうした悪事を働いたのがイ・イチョムであり、チョン・イルが演じるキム・デソクは、祖父が処刑される場面を見てしまった。それが『ポッサム～愛と運命を盗んだ男～』の前半のハイライトになっていたのだ。

なお、我が子の永昌大君と父親を殺された仁穆王后は、大妃（テビ）の身分を剥奪され、離宮に幽閉されてしまう。以後、彼女の復讐人生が始まるのだが、親族のキム・デソクもそれは同様であった。

「祖父のカタキを討ちたい」

その一念であったことだろう。バウの素性がわかって『ポッサム～愛と運命を盗んだ男～』もますます面白くなってきた。

文＝康熙奉（カン・ヒボン）