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時間も体力も限りがある。何を削る? 40歳、母になった浅見れいなが体験した、削ぎ落とす楽しさ

  • 2023.10.21
【40th Anniv.】浅見れいな、40歳のウィッシュリスト vol.2

理想のヘルシービューティ、我らが浅見れいなさんが40歳になりました。おめでとう! 40年の歩みと共に、2児の母となった今のリアルな心境を語ってもらいました。

「結婚して、子どもが生まれた当初は、変わらずに仕事を続けられる夫がすごく羨ましかった。オファーをいただいた仕事も断らなくていいし、自由に見えていたんです。葛藤がなかったといったら嘘になるけど、守らなきゃいけない大事な命が目の前にあるわけで、時間も体力も限りがあるので取捨選択して、何かしらを削っていかなきゃならなかった。でも、どんどん削ぎ落としていくと、むしろ心地よくなっていったんです」
 
その心境が分かりやすく反映されたのが、ファッション。
 
「もともとベーシックが好きだったけれど、もっとベーシックに。40歳になった今は、それを素敵に着こなせるような人でありたいと思っています。今回の企画でも、アニバーサリーらしくカラードレスを着る案もいただいたんですが、やっぱりそれは自分らしくないよねって。今回のスタイリングは、どのメゾンにしても削ぎ落とされた中に凛とした個性が宿っていて、心を掴まれます。改めて、自分の好きなものや個性に立ち返るような時間でもありました。昔から攻めるタイプじゃなくて、ベーシックで上質なものを永く愛したいタイプ。でも、若いときは質のいいコートやバッグが自分の身の丈に合っていない気がして、身に着けるのが恥ずかしかったんですよね。でも、ある程度年齢を重ねると、年齢が説得力になって背中を押してくれるようになる。それこそ40歳になってよかったことのひとつ」

ジャケット¥525,800、パンツ¥145,200、シューズ¥103,400(全てジル サンダー バイ ルーシー アンド ルーク・メイヤー/ジルサンダージャパン)

とはいえ、「まだシャネルのバッグは持てない」と笑う。同時に、「いつか似合う人になれたらいいな」と期待しながら。もの選びひとつにしても、自分軸を貫く。
 
「誰かにおしゃれだと思われたいとか、そんな見栄なんて張ってる暇がないですしね。もの選びの軸はあくまで自分。でも、バッグや時計、靴などは、いつか娘が身に着けてくれたらいいなと頭の片隅にありながら選んでいるかもしれない。そうやって先を見据えると、クローゼットの中はやっぱり少数精鋭になっていきます。不思議ですよね、昔は、欲しい、欲しいばかりだったのに。今では、いかに手放すかを考えている」

大切なものができたら、生き方が変わった

人と比べない。比べても意味がない。そんな気づきも訪れた。
 
「それこそ若いときは、時間も意識も自分だけに集中しがちで、やらなきゃいけないことが絶え間なくあって、『やるなら今しかない』というプレッシャーも大きかったと思います。だから、常にこう何か足りない、でも何かが分からない。もちろん自信もないし、他の人たちが輝いて見えたし、すごく羨ましかった。でも、いざ結婚して、子どもが生まれてみると、意識は家族に向かうので、自分に向かわなくなって、バランスが取れてきたんですよね。ひとりでいたときは“陰”に入ってたというか、自分の至らなさばかりが目について、常にネガティブで焦っていて。仕事の量からすれば、今と比べようもないくらいたくさんしていたのに、なんか足りないみたいな。そういう意味では子どもがいる今の働き方のほうが、ずっとポジティブで満たされている。それに子どもと向き合っていると、過去に囚われていたことが別に気にしなくていいことだったんだなって。子どもって、あまりにも純粋で楽しいことは楽しい、嫌なことは嫌だ。すごくシンプルに生きている姿を目の当たりにすると、自分の考えとか感情がいかに凝り固まっていたかを痛感することになったんです」

ニット¥220,000、スカート¥1,265,000、ピアス¥770,000、リング¥489,500※全て予定価格(全てプラダ/プラダ クライアントサービス)

ときには甘えて、頼ってもいいのかもしれない。そんなふうに自分を許せるようにもなれた。
 
「家族といえど、人には人のキャパやペースがあって、得手不得手もあるんですよね。私の場合はせっかちなので、常に次のことを想定して、クリアしていくことにやりがいを見出しているけど、パートナーに同じものを求めてしまうのは酷になる。ならば、お互いの適性に合わせて家庭を維持していったほうがいい。改めてチームなんだと実感します。私が夫の代わりになれないのと同じく、彼は私の代わりにはなれない。お互い理解して、感謝し合えているからこそ、自分の存在意義みたいなものもすり減らず、むしろ高まっているように感じます」

人差し指のリング〈キャトル〉[K18WG×DIA×ホワイトセラミック]¥1,452,000、中指のリング〈キャトル〉[ K18WG×DIA]¥1,148,400、薬指のリング〈キャトル〉[K18YG×K18PG×K18WG×ブラウンPVD×DIA]¥1,029,600、イヤリング〈セルパンボエム〉[K18WG×DIA]¥1,056,000、(全てブシュロン/ブシュロン クライアントサービス)、ベスト¥203,500、パンツ¥236,500(共にフェンディ/フェンディ ジャパン)

子育てが落ち着いたら、以前のようにお芝居を—。今も意欲は尽きないが、焦りを1ミリもにじませないのは、納得して選択を重ねてきたから。
 
「いただいたオファーを断るのはすごく怖いこと。けれど集中できずに中途半端に関わることこそ、私にとっても作品にとっても幸せじゃないので、今は勇気を持って辞退する。選択が正しいかどうか分からなくて、心が揺れ動くこともあるけれど、自分さえ納得できたなら〝縁がなかった〟と朗らかな心で次に向かえる。平和や安心こそ、今、何よりも守りたいものだから」

※素材の略号:SS=ステンレススチール、K18=18金、WG=ホワイトゴールド、DIA=ダイヤモンド、SV=シルバー

photograph:TAKAO SAKAI[aosora] styling:CHIAKI FURUTA hair & make-up:MIFUNE model:REINA ASAMI interview:HAZUKI NAGAMINE

otona MUSE 2023年11月号より

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