1. トップ
  2. おでかけ
  3. 能の世界に浸れる能画の館「奏風 秀世記念 松野藝文館」@四街道市

能の世界に浸れる能画の館「奏風 秀世記念 松野藝文館」@四街道市

  • 2023.10.21
松野奏風(そうふう)没後60年記念作品展

日本画家 松野奏風(1899~1963)とその息子で同じく画家の秀世(ひでよ)(1936~2002)が描いた「能画」を多数所蔵する「奏風 秀世記念 松野藝文館(まつのげいぶんかん)」は四街道市美しが丘の閑静な住宅街にあります。

出典:リビング千葉Web

「能画」という言葉を初めて耳にする方も多いのではないでしょうか。

日本画として能の絵を描いた作品は多々ありますが、なかでも「能画」は、美しく詩趣に富んだ能の舞台を絵に映したものといえるでしょう。その作品を見ることができるのが、こちらの松野藝文館です。

同館は奏風と秀世の作品保存を目的に、奏風の長女の長谷川紗衣さん(91)が四街道市に在住した縁でこの地に2010年に開館。奏風の孫にあたる長谷川三香さん(57)が代表を務めています。

「芸術と文化の館、松野藝文館」

杉材を多用した同館は1階と2階が展示スペース。今回は奏風の作品を中心に約20点を展示しています。入館すると、杉の良い香りと能の謡いのBGMが流れる静謐で、素敵な空間を楽しめます。

出典:リビング千葉Web

1階では奏風が能画の道に入るまでのヒストリーが、わかりやすく展示されています。

能が好きな人はもとより、能を全く知らなくてもその世界に触れることができる貴重な場所です。知識がなくても同館代表の長谷川三香さんが丁寧に説明してくれるので安心して楽しむことができます。

出典:リビング千葉Web
奏風の足跡(そくせき)をたどる。

今回の展示は、松野奏風の没後60年記念作品展ということで、作品を通じて奏風の足跡を知ることができます。能画家として大成する以前の貴重な作品も展示されていて必見です。

下記の画は、大正11年(1922)妹たちがトランプに興じる様を描いている大作。

出典:リビング千葉Web

東京生まれの奏風は15歳で日本画家、月岡(坂巻)耕漁に師事、その後、能楽に関する作品を描いてきました。奏風が画家の視点で舞台を鑑賞し、能楽愛好家の心で描いた数々の作品は能楽の普遍的な魅力を伝えています。

出典:リビング千葉Web

「加藤清正公像」大正6年(1917)正月の書初めとして描かれたもの。当初は歴史画家を目指していたそうです。

出典:リビング千葉Web
奏風の次女松野千佳さん来館

たまたま来館していた奏風の次女の松野千佳さん(89)から生前の奏風の貴重な話を伺うことができました。

「私たち子供が絵を描いているそばにいても、父は気にしないようでしたが、客人が同席する場で絵を描くことは好みませんでした。」当時は画室と客間が兼用だったことなど、奏風の染筆の様子を窺い知ることができました。

松野家では、能楽愛好家の来客があれば謡を1、2曲楽しむのが常だったので、子供のころから能を身近に感じていたそうです。能や狂言の舞台にもよく連れられて行ったとのことでした。

出典:リビング千葉Web

素敵な笑顔の松野千佳さん(左)と長谷川三香さん

昭和25年頃のもの。奏風の作画写真は大変貴重とのことです。

出典:リビング千葉Web
出典:リビング千葉Web
美しさに見とれる!金地十二佳月扇面散屏風
出典:リビング千葉Web

金地十二佳月扇面散屏風(きんじじゅうにかげつせんめんちらしびょうぶ)昭和8年(1933) 各曲で使用される扇を背景に曲の一場面を描いた扇面散図。 金地の背景に浮かび上がる繊細で美しい四季折々の画をじっくり楽しみたい。

出典:リビング千葉Web

能の曲名は「融」(とおる)。中秋の名月が照り冴える中夢の貴公子が舞い遊ぶ姿が描かれています。桔梗の藍、女郎花(おみなえし)の儚さが美しい。

出典:リビング千葉Web

能の曲名は「半蔀(はしとみ)」。源氏物語の「夕顔の巻」に描かれる光源氏と夕顔の上の恋物語を題材とした絵です。色とりどりの花々が美しい。

出典:リビング千葉Web

「羽衣」。昭和初期の作品。三保の松原の「羽衣伝説」の天人の舞を描いたもの。

出典:リビング千葉Web

「葵上(あおいのうえ)」大正11年(1922)。肌の肉色、青白い般若面、六条御息所の生霊の姿が写実的に描かれていて迫力満点。

受付では絵葉書も販売。1枚120円。5枚550円。
出典:リビング千葉Web

能の世界をご存知の方も今まで能の世界に触れる機会がなかった方も芸術の秋に是非足を運んでみてはいかがでしょうか。

前期展示は11月12日までの金土日。後期展示は11月24日から12月24日の金土日。前期と後期では展示作品の入れ替えがあります。貴重な機会をお見逃しなく。

元記事で読む
の記事をもっとみる