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男女には「オーガズムギャップ」もある⁉“挿入”がオーガズムの邪魔をする衝撃の事実

  • 2023.10.21
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セックスにおいて、オーガズム(性的絶頂)に達する回数にジェンダー差がある「オーガズムギャップ」という現象。じつは女性の性的満足度が低い理由のひとつに、“ペニスの挿入”があるといわれている。オーガズムギャップが起きてしまう原因をセクシュアリティ・ジャーナリストであり、米Loveology University認定セックスコーチの此花わかさんが解説した。(文:此花わか/編:フロントロウ編集部)

此花わかさんプロフィール
セクシュアリティ・ジャーナリスト。アメリカの性科学者エイヴァ・カデル博士の学校で性とリレーションシップのコーチングを学ぶ 。更年期など女性の悩みによりそったフェムテックカンパニー「TRULY」で性とパートナーシップにまつわるチャットカウンセリングと執筆を行う。セックスポジティブな社会を目指す「セクポジ・マガジン」を発信中。FRaU、Huffpost、Newsweekなどでも執筆。

オーガズムに達したことがある女性は6割以下!挿入からは3割未満

2023年、日本のジェンダーギャップ指数が146カ国中125位となり、前年から9ランクもダウンしたことが話題となった。社会における経済活動や政治への参画度、教育水準、出生率や健康寿命において、男女の違いにより生じる格差をジェンダーギャップという。同様に、セックスのオーガズムにも男女格差があることをご存じだろうか?

画像: オーガズムに達したことがある女性は6割以下!挿入からは3割未満

まずは、オーガズムにまつわる国内外の統計を集めてみた。

【日本国内の調査】

デュレックスによる26カ国・2万6032人を対象に行った調査※1
・毎回オーガズムに達する日本人女性……11%(26カ国のうち25位。世界平均は32%)

MOREによる全国の20歳~34歳の女性500名を対象に行った調査※2
・オーガズムに達したことがある……35.8%
・これがオーガズムかなと思ったことがある……36.4%
・ない……27.8%

irohaによる全国の10代から40代1200人の女性を対象に行った調査※3
・オーガズムに達したことがある……61.2%
・腟内への刺激でオーガズムに達したことがある……29%

【海外での調査】

アメリカ エイヴァ・カデル性科学者の女性535名を対象に行った調査※4
・挿入からオーガズムを感じたことがある……17%

アメリカ 52,500人以上の成人(レズビアン、ゲイ、バイセクシャルを含む)を調べた研究※5
・ほとんどいつもオーガズムを感じているヘテロセクシュアル女性……65%
・ほとんどいつもオーガズムを感じているレズビアン……86%
・ほとんどいつもオーガズムを感じているバイセクシュアル女性……66%
・ほとんどいつもオーガズムを感じているヘテロセクシュアル男性……95%
・ほとんどいつもオーガズムを感じるゲイ男性……89%
・ほとんどいつもオーガズムを感じるバイセクシュアル男性……88%

フロリダ大学教授・ローリー・ミンツ博士による約800人の大学生の調査※6
・ほとんどいつもオーガズムに達する女性……39%
・ほとんどいつもオーガズムに達する男性……91%

GfK Knowledge Panelが1,055人の女性を対象に行った調査※7
・挿入からオーガズムに達したことのある女性……18.4%

調査対象の属性、人数、場所が違うので単純にまとめられないが、日本女性の約4割から約6割がオーガズムに達したことがあり、毎回オーガズムに達する日本女性は、世界平均である3割の約3分の1である1割しかいない。そして、挿入からオーガズムを感じるのは3割だ。

画像: 【海外での調査】

同様に、海外の統計でも、オーガズムを感じる女性は同じく約4割から6割強(ヘテロセクシュアル)。挿入からオーガズムを感じる女性は2割ほどである。

しかし、興味深いのは、性的指向に関わらず、男性の9割前後がオーガズムを感じるのと比べて、女性のオーガズムの確率が非常に低い点。とりわけ、挿入からオーガズムを感じる女性は2割から3割しかいない

ペニスの挿入が女性のオーガズムの確率を下げる⁉

さて、性的指向別にオーガズムの確率を並べてみると、以下のような公式になる。

ヘテロ男性(95%)>ゲイ男性(89%)>バイセクシュアル男性(88%)>ゲイ女性(86%)>バイセクシュアル女性(66%)>ヘテロ女性(65%)

こう見ると、男性のオーガズムに性的指向はそれほど影響していないのに、女性にとって男性が関わってくると、オーガズムの確率が格段と下がるのである。

これは、男性が女性の体や性のあり方を案外知らないということではないだろうか?

画像: ペニスの挿入が女性のオーガズムの確率を下げる⁉

2015年にJournal ofSex & Marital Therapyが1,000人以上のアメリカ人女性を対象としたインターネット調査によると、36%が性交時にクリトリスの刺激でオーガズムを得られたと回答したのに対し、約18%が挿入だけでオーガズムを得られたと回答。先述のirohaの調査でも、オーガズムに達したことのある女性のうちの半数しか、膣内オーガズムを得ていない。

つまり、国内外両方の統計をみても、挿入だけでオーガズムを感じる女性は、クリトリスからオーガズムを感じる女性の半分ほどしかいないということなのだ。

この現象について、フロリダ大学のローリー・ミンツ教授は腟内オーガズムを感じる以前に、女性は性的に興奮していないといけないと力説する。

「女性は挿入前に興奮している必要があります。そうでないと、腟が潤滑にならず、子宮頸部が後ろに伸びません。すると非常に強い痛みを感じる女性もいます」(ローリー・ミンツ教授)(※6)。

ミンツ教授は、以下の行為が女性に性的興奮をもたらすという。

・キス
・性器以外の体中を撫でられる
・オーラルセックスによるクリトリスへの刺激
・タッチによるクリトリスへの刺激

ワンナイトの相手より、関係が深い相手にオーガズムを感じやすい女性

さらに、American Sociological Reviewが2012年に発表した調査によると、恋人とセックスするほうが女性のオーガズムの確率は高まるそうだ。※7

・6ヶ月以上交際している相手とセックスした女性は、初対面の相手とセックスをした女性と比較して、性行為中にオーガズムを感じる可能性が6倍以上。
・3~5回目の相手とのセックスをする女性は、初めてのセックスからオーガズムを得る可能性が40%高い。
・6回以上セックスをすると、最初の出会いよりもオーガズムの可能性が2倍になる。

画像: ワンナイトの相手より、関係が深い相手にオーガズムを感じやすい女性

要約すると、女性のオーガズムを高める大きな要素は、「キス、体、クリトリスへの刺激」と「より深い関係性のある相手」の2つだということだ。クリトリスには末梢神経が8000本も集まっていると考えられているから、女性のクリトリスは男性にとってペニスのようなものだと言える。

しかし、なぜ、女性にとってオーガズムはこれほど複雑なのだろうか。

女性のオーガズムが複雑な理由とは?

残念なことに女性のオーガズムについて、真相は解明されていない。人間の女性が妊娠するためにはオーガズムに達する必要はないから、多くの研究者たちその謎にずっと頭を悩ませて来た。そもそも、多くの哺乳動物は排卵時だけに交尾をするが、人間は違う。

男性の射精と同じタイミングで女性がオーガズムに達したら、より多くの精子を吸い取るという説もあるが※8、まだ研究者たちは統一した見解に至っていないのが現状だ。

画像: 女性のオーガズムが複雑な理由とは?

しかし、アメリカ・ラトガース大学の生態学者であるキンバリー・ラッセル博士は、女性のオーガズムには社会的役割があるという。

「男性にとっても女性にとっても気持ちのいいセックスは、重要な社会的役割を担っている」(キンバリー・ラッセル博士)

性行為中に分泌される、快楽、多幸感、癒しなどを引き出す様々なホルモンはストレスを解消し、パートナーとの絆を深める。それはすなわち、より結束力の強い集団を作ることでもある。

「ひょっとしたら、女性のオーガズムは社会的に男女を結び付けるために機能しているのかもしれない」とラッセル教授は説く。※8

メディアが作って来た「男性の射精目線」のセックス

さて、性科学者のエイヴァ・カデル博士が男性906名、女性535名の計1441名を調査したところ、女性の66.3%、男性の30.6%がオーガズムをフェイクしていたそうだ。女性のオーガズムが複雑なのは女性自身がよく知っていることだが、男性の2倍もの女性がオーガズムをフェイクしている。※4

さらにMOREの調査でも、「オーガズムに達したフリをしたことがあるか?」の質問に、70%以上の人が「ある」と答えている。「相手が喜ぶから」「AVの影響で女性は毎回イクものだと思っている男性が多い」という理由が見られたそうだ。※2

画像1: メディアが作って来た「男性の射精目線」のセックス

実際に、多くの心理学者や性科学者たちは、女性がオーガズムをフェイクするのは、男性の射精目線のセックス観によるものだと主張する。その最たるものが、「Gスポット神話」「潮吹き」だろう。

ミンツ教授によると、Gスポットは触ればオーガズムを感じるようなピンポイントの場所ではなく、「腟のすぐ上側に位置し、クリトリスの脚、女性の前立腺腺、腟の壁など広領域を指す」もので、必ずしも存在しないという。※6

それなのに、Gスポットという概念が浸透した背景には、”男性器を挿入すれば気持ちのよいスポットが腟内に存在するはずだ”、という男性主体の性のあり方を文化やメディアが形成してきたことにある

画像2: メディアが作って来た「男性の射精目線」のセックス

特にAVに見る過剰な「潮吹き」は、男性の射精を模したものである。「潮吹き」にも諸説があるが、主成分は尿であり、AV女優は潮を吹くために大量の水分を撮影前に摂取して尿道を刺激する。これが潮吹きの撮影現場の実態だ。

AVだけではない。映画やドラマのセックスシーンを思い浮かべてほしい。セックスはいつも男性の射精で終わらないだろうか?

男性の射精目線で女性のオーガズムは表現されて来たが、現実の女性のオーガズムは男性の射精よりもはるかに複雑で難しい。だからこそ、私たち女性はオーガズムをこれ以上フェイクしないほうがよいと思う。女性がフェイクすることで、ますます男性のセックスは女性から離れていき、自分の射精至上主義になっていくからだ。

男性も女性もオーガズムにこだわるのではなく、「お互いが“今”感じる快楽をマックスにするために、一緒に何ができるだろうか?」という考えにシフトしていったほうが、より幸せなセックスにつながるのではないだろうか。

また、現存する調査の多くはシスジェンダーの女性と男性を対象にしたものだが、今後は多様なジェンダーを対象にした調査が増えていくことでセクシュアル・プレジャーへの理解と意識がより広がっていくことを願う。

【参考】
※1…日本女性の「イク」率は悲しいほど低い – 女子SPA!
※2…20代〜30代女子のセックス事情】500人に聞く!経験人数や好きな体位は?リアル体験談まとめ– MORE
※3…iroha RIN発売記念「快楽解体新書~女性の身体のナカとソト~」 イベントレポート– iroha
※4…Loveology University – Eva Cadell
※5…Differences in Orgasm Frequency Among Gay, Lesbian, Bisexual, and Heterosexual Men and Women in a U.S. National Sample – SPLINGER LINK
※6…The Orgasm Gap: Simple Truth & Sexual Solutions - Psychology Today
※7…Women's Experiences With Genital Touching, Sexual Pleasure, and Orgasm: Results From a U.S. Probability Sample of Women Ages 18 to 94 - Journal of Sex and Marital Therapy
※8…Why do women have orgasms? - LifeScience

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