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ミャンマー出身の俳優・森崎ウィンさん、いじめ乗り越え「しんどい経験が今の強さにつながっている」

  • 2023.10.20

ミャンマーで生まれ育ち、小学4年生から日本で暮らすようになった俳優の森崎ウィンさん。子どもの頃は人種差別やいじめにも直面したと話します。それがかえって自身を強くし、現在は映画やドラマなどでの活躍にもつながっているようです。子どもの頃の体験や芸能活動を始めるきっかけ、30代になって感じていることについて聞きました。

いじめられ学校に行きたくなかった

――ミャンマーの旧首都・ヤンゴンの生まれですね。

森崎ウィンさん(以下、森崎): 僕はミャンマー人の両親のもと、ヤンゴンで生まれ育ちました。父の仕事の関係で日本に来たのは、小学校4年生の時です。ミャンマーはタイの隣の国なので暖かいんです。日本に来てまず「寒い国だな」と思いました。日本は24時間ほぼ何でも手に入る環境があり、その便利さには驚きました。一方で、東京はすごく人と人との間に壁があるように感じました。

自分の意思で日本に来たわけではありませんから、いきなり「ここからあなたの人生は日本ですよ」と言われて、やっぱりすごく戸惑いましたね。学校ではいじめられましたし、結構しんどい時期がありました。それでも今は好きな仕事ができているので、日本に連れて来てくれた両親には感謝しています。

朝日新聞telling,(テリング)

――しんどかった時期をどのように乗り越えたのですか。

森崎: 単純に、両親が厳しかったので、逃げ場がなかったんですよ。「学校に行きたくない」と言って、「じゃあ行かなくていいよ」なんて言ってくれる親ではなかった。とりあえず闘うしかなくて、闘っていました(苦笑)。当時の闘いが、今の負けず嫌いな性格や強さにつながっていると思います。

――歌や演技の仕事を始めたきっかけは?

森崎: もともと歌は好きだったのですが、友達とカラオケに行く程度で、まさか自分が人前で歌うなんて思っていませんでした。たまたま中学2年生の時に今の事務所の方にスカウトされて、レッスンを始めたんです。母親に「どうせ暇でしょ。行ってみたら?」 と言われて、軽い気持ちでレッスンを始めたら、楽しくなった。
民放局のテレビドラマで俳優デビューし、街を歩くとちょっと振り返られるようになって、「芸能人って気持ちいいな」みたいな(笑)。今思えば本当に薄っぺらかったなと思います。でも、年齢を重ねるごとにどんどん俳優の仕事が楽しくなって、真剣に取り組むようになりました。

朝日新聞telling,(テリング)

30代、弱い自分も受け入れられるようになった

――いつごろから心境に変化があったのですか。

森崎: 30歳を過ぎてから、自分を受け入れることができるようになりました。そうすると物事がすごく楽しくなります。20代の時は強がっていたし、自分はもっとできるはずだと勝手に期待して、実力とのギャップに苦しむこともあった。今はある種、諦めた部分もあるのかな、と思います。弱い部分、ダメな部分も含めて自分だから仕方ない、と。

そういう意味では、30代になって鎧が1つとれた感覚があって、「これが僕です」と言えるようになりました。人はそれぞれ違う価値観を持っていて、正解はないし、相手の価値観もリスペクトできるようになりました。

――日本では特に女性は、30代を前に結婚や仕事など生き方に迷う「29歳問題」との壁にあたりがちです。年齢を重ねることにネガティブなイメージを持つこともあるこうした感覚についてどう感じますか。

森崎: 僕の友人の女性からも、年齢を重ねることに焦りを感じているという話を聞きます。また、出産がキャリアの妨げになってしまうという声を耳にしたこともあります。女性にそういった現状がまだあることは悲しいなと思います。でも、変えていくためにはどうすればいいんだろう、と考えても、なかなか答えは出なくて……。

僕は人種差別を受けてきた人間で、自分が「差別だ」と声を上げることが逆に差別を助長してしまう面もあると思っていて、違う闘い方ができないかなとずっと思っていました。ただ、その問題にまったく触れないわけにもいかないし、全体で変わっていかないと難しいですよね。

朝日新聞telling,(テリング)

――自分らしく生きられず悩んでいる人にメッセージをお願いします。

森崎: 男女関係なく、自分らしく生きるのはすごく勇気がいることだと思います。自分らしく生きられない気持ちもすごくよくわかるんですよ。すごくしんどいし、自分はこうじゃないのにって思うこともあると思うんですが、結局は立ち向かっていくしかないと思っています。
何かを得れば何かを失う。犠牲にしてでも得たいものがあるなら、それを選ぶしかないですよね。世の中、思い通りにならないことは多いけれど、自分が行動した分だけ返ってくるのは確かだと思うんです。だから、目指す場所が高ければ高いほど苦しい。苦しくて当たり前なんだと覚悟を決めるしかない。だけど、苦しんだ先には、きっとものすごく素敵な世界が待ち受けています。だから一緒に行こうよ。そんな気持ちですね。

僕自身も新しい世界に飛び込まなきゃダメだと自分を鼓舞しているところです。結果が出るまでに時間はかかりますが、それを世の中に出せたときには、森崎ウィンも闘っているんだなと感じていただけたら嬉しいです。

ヘアメイク:Keiji Udagawa(heliotrope)
スタイリスト:AKIYOSHI MORITA

■尾越まり恵のプロフィール
ライター/株式会社ライフメディア代表。福岡県北九州市生まれ。雑誌、WEB、書籍でインタビュー記事を中心に取材・執筆。女性のハッピーを模索し、30代はライフワークとしてひたすらシングルマザーに密着していました。人生の決断を応援するメディア「わたしの決断物語」を運営中。

■品田裕美のプロフィール
1983年生まれ。出版社勤務を経て、2008年 フリーランスフォトグラファーに。「温度が伝わる写真」を目指し、主に雑誌・書籍・web媒体での撮影を行う。

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