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フランス・バスク地方の伝統菓子「メゾン・アダム」「メゾン・パリエス」の素朴なマカロンを実食ルポ

  • 2023.10.16

日本でもすっかり定着したマカロン。巷で見られるものは厳密にはパリ風マカロンと呼ばれ、フランスには素材や製法、特徴が異なるさまざまなマカロンが存在します。フランス・バスク地方、大西洋岸のサン=ジャン=ド=リュズという港町で見つけた「メゾン・アダム」のマカロン、「パリエス」のムシューと呼ばれる2品を実食ルポでご紹介します。

マカロン発祥の地は?

日本で知られているマカロンは、フランスでは「マカロン・パリジャン(パリ風マカロン)」と呼ばれています。カラフルで華やかな見た目が、贈り物としても人気ですよね。

発祥の地としては諸説ありますが、16世紀のルネサンス期にフィレンツェのカトリーヌ・ド・メディシスとフランス王室のアンリ2世との婚姻をきっかけに、イタリアからフランスに広まったという説が有力とされています。

アーモンドを使用したシンプルなイタリアの焼き菓子が、フランス全土に広がり、地方独自のレシピへと発展していったと伝わります。

バラエティ豊かなマカロン

16世紀にイタリアからフランス全土に伝えられたとされるマカロンは、地方ごとに独自の発展を遂げていきました。

フランス北部・アミアンのマカロン・ダミアン、ロレーヌ地方・ナンシーのスール・マカロン、南西部ボルドーの近郊、サン=テミリオンのマカロン・クラックレなどがあります。

フランス・バスク地方、サン=ジャン=ド=リュズのマカロン2種

フランス南西部のバスク地方、Saint-Jean-de-Luz(サン=ジャン=ド=リュズ)の銘菓マカロンは2種類あります。現地を訪れた際に味わってみました。

王室の結婚式に起源を持つ「Maison Adam」のマカロン

まずは、最もよく知られている、1660年創業のパティスリー「Maison Adam(メゾン・アダム)」のマカロン。サン=ジャン=ド=リュズは、フランス国王ルイ14世がスペイン国王フェリペ4世の令嬢マリー・テレーズと結婚式を挙げた地として知られています。

その際にアダムのマカロンが献上されました。そのおいしさに感銘を受けた王妃は、その褒美にロザリオを授けたといわれています。

その後、アダムの甥がレシピを受け継ぎ、マカロンを作り続けました。それ以来、現在も当時のレシピが大切に継承されています。

店内のショーケースには、さまざまなパッケージに詰められたマカロンがズラリと並んでいます。海沿いの街らしく白地にブルーのロゴがよく映えるレトロなパッケージが素敵! 昔から変わらぬデザインがかえって新鮮です。

缶入りや箱入りなどさまざま。バスク地方の象徴とされる十字のマークが入った丸いグリーンの缶は、小さめなのでちょっとしたプレゼントにおすすめです。

その中に入ったマカロンは見るからに素朴で、当初のままのレシピを再現しているのに納得です。

ザラっとした質感の表面は、サクッとした歯ごたえ。中身はしっとりとした食感で、口の中にアーモンドの香りが広がります。甘さはそれほど強くありません。

卵白と砂糖、アーモンドのみを使い、香ばしく焼き上げられ、100%天然由来の最高級の食材を使用しています。

毎日手作業で作られ、賞味期限は10日間(冷蔵庫で保存)。お土産にするなら帰国直前に入手する方がよいでしょう。1枚から購入できるので、旅の途中に気軽に楽しむこともできますよ。

「Maison Adam」のマカロン

価格:1個 1.1ユーロ

・箱入り:12個入り13.20ユーロ、18個入り19.80ユーロなど

・バスククロス(グリーンの缶・12個入り)17.20 ユーロ

・ヴィンテージボックス(白地×ブルーの文字・24個入り)32.40ユーロなど

賞味期限:10日間(冷蔵庫で保存)

偶然から生まれた「Maison Pariès」のムシュー(マカロン)

もう一軒は、鮮やかなオレンジ色の外観がひと際目をひく、1895年創業の「Maison Pariès(メゾン・パリエス)」。初代はチョコレートとカヌーガ(ソフトキャラメル)で成功し、3代目が1948年に独自の手法でMouchou(ムシュー:バスク語でキスの意味)と呼ばれるマカロンを生み出します。

1914年以来、独自のレシピに従って作られてきたマカロンですが、ある日あるパティシエが、分量を間違えて大量のアーモンドを入れたことにより、1948年に独自のマカロン“ムシュー”が誕生しました。この小さな奇跡により、やわらかくて愛らしい現在のムシューが生まれたのです。

甘みのために厳選されたマルコナス・アーモンド、卵白、砂糖を使用した手作りです。アーモンドは100年以上同じ生産者から調達しているそうです。

艶のある2枚のマカロン生地をはり合わせ、表面に1本の線が入っているのが特徴。

外側はサックリ、中身はしっとりねっとり。厚みの少ないパリ風マカロンといった印象。アーモンドと砂糖の甘さがしっかりと感じられます。

パリ風マカロンと間違われることが多いそうですが、上に述べたように偶然の産物なので全く関係はありません。「正真正銘バスク料理の遺産の一つ」とのこと。バスク人の誇り高さが窺えます。

プレーンアーモンド、チョコレート、ヘーゼルナッツ、ピスタチオ、コーヒー、5種類のフレーバーがあります。

プレーン・アーモンドはムシューの定番。アーモンドの味わいを存分に楽しめます。

チョコレートはチョコ風味が物足りないかなという印象。

ヘーゼルナッツは日本人にはあまりなじみがないと思いますが、ナッツ特有の香ばしさが魅力です。

ピスタチオの存在感たっぷりで、好きな人にはたまらない味わい。

コーヒーはしっかりと香りも風味も感じられます。

ムシューもそれぞれ1つから購入できます。繊細なお菓子なので、なるべく早めにいただくことをおすすめします。

オレンジ色の華やかなパッケージが素敵で、贈り物に最適です。

2つのお店には、郷土菓子の「ガトー・バスク」やキャラメルに似たお菓子、チョコレート、などなど多彩なスイーツが並びます。

現地を訪れたら、ぜひ一風変わったマカロンを味わってみてくださいね。

「Maison Pariès」のムシュー

価格:1個 1.1ユーロ

・箱入り:7個入り9.90ユーロ、15個入り18.20ユーロなど

・缶入り(18個入り)26.40ユーロなど

賞味期限:常温で1週間(冷蔵庫には入れないこと)

*2023年9月14日現在1€=約157円

[Photos by Yo Rosinberg & shutterstock.com]

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