豊かな色や形があり、一度植え付ければ何年も美しい姿が楽しめる宿根草。コスパがよくローメンテナンスで済むことから、庭の素材として大人気ですが、寄せ植えでもその魅力を大いに発揮してくれます。今回は長年楽しめる宿根草や低木を使った秋の寄せ植えをM&Bフローラの難波良憲さんに教わります。
宿根草とは? 一年草との違いは?
宿根草(しゅっこんそう)とは一度植えると、何年も育ちながら毎年必ず花を咲かせてくれる多年草の一種です。冬には地上部がなくなるものも多いですが(常緑もあります)、季節になると再び育ち始めます植えっぱなしの放任でよいものも多く、肥料や水やりも、ほどほどでOK。ローメンテナンスで手入れがラクなのも魅力です。
宿根草に対して一年草は、ワンシーズンで枯れてしまう植物のことを指します。多数の種類があり、春、夏、秋それぞれの季節で、花の最盛期を迎えるものがあります。多花性のものが多く、華やかなのが魅力です。
寄せ植えでは宿根草と一年草を組み合わせることもできます。宿根草をベースに、季節ごとに旬の一年草に植え変えれば、イメージチェンジを図りつつ、いつも華やかな寄せ植えを維持することができます。
寄せ植えに使う宿根草の選び方
種類によって耐寒性や耐暑性が異なりますので、地域の気候に合わせて選ぶのが基本です。また、寄せ植えで使う際は以下のポイントに留意しましょう。
葉っぱの美しいものを選ぼう
宿根草の花の期間は、一年草に比べて数週間と限られています。花がない時期も寄せ植えのなかで活躍してもらえるように、葉に特徴のあるものも入れながら選ぶとよいでしょう。
開花時期を把握しておこう
先述したように開花期間が限られているので、あらかじめ花の咲く時期を把握しておくと、組み合わせる一年草とのベストコーディネートが叶います。
大株にならないものを選ぼう
寄せ植えの鉢は植物が根を張るスペースは限られています。宿根草にはワンシーズンで株の横幅が数十センチ以上に育つものもあり、他の植物の生育を疎外してしまうことがあるので、あまり旺盛に生育するものは避けましょう。大株に育ったら、植え替えの際に「株分け」して小さくリサイズして使うこともできるので、後ほどその方法についても紹介します。
宿根草&低木を取り入れた寄せ植え実例
ピンクのポットマム‘ダンテダーク’の鮮やかな花色と鉢をコーディネートしました。「ピンク」をキーカラーに他の植物も選んでいます。玄関などはもちろん、庭のなかに置いても鮮やかな色がフォーカルポイントになります。
【使った植物】
●ポットマム‘ダンテダーク’/花心がワインレッドでピンクのグラデーションが美しい半八重咲きのキクです。11月まで次々に花が上がり長く楽しめる耐寒性宿根草。一年目は草丈が30〜40cm程度ですが、翌年は50〜60cmになるので2年目以降は花壇や庭植えにするとよいでしょう。
●レウコフィルム/マムの鮮やかなピンク色が映えるように、シルバーリーフのレウコフィルムを背景に配置。比較的耐寒性のある常緑低木で、9〜10月に小さなピンクの花を咲かせます。
●セロシア‘ヴィンテージ’/中央にはグレイッシュピンクでふわふわとした質感が季節感を感じさせるセロシア ヴィンテージを。非耐寒性一年草なので花後は抜き取ります。
●ヨウシュコバンノキ‘朱里(あかり)’/マムの手前に入れた斑入りの明るい葉です。新芽と茎がピンクがかるので、ピンクコーデの脇役として重宝する常緑低木。暑さには強いですが、寒さは苦手なので寒冷地では室内で管理を。
●アルテルナンテラ`マーブルクイーン’/鉢淵に植栽した鮮やかなワインレッドの葉。宿根草ですが耐寒性がなく、霜に当たると枯れるので一年草扱いのことも。
●アルテルナンテラ‘コタキナバル’/ヨウシュコバンノキ‘朱里’とアルテルナンテラ‘マーブルクイーン’の繋ぎとして立性のアルテルナンテラを配置。葉色の美しさはもちろんのこと、軸が赤色の点も特徴的な植物。
色や形など個性のあるカラーリーフをたくさん用いた寄せ植えです。花も入っていますが、どちらかというと花よりリーフが主役。華やかで見応えもたっぷりです。
【使った植物】
●コリウス‘バレッティ オーロラ’/ヌーディーベージュを基調としてグリーンの斑とワインレッドの葉脈がおしゃれなカラーリーフを中央に。淡い紫色の花穂も爽やかな雰囲気。
●ポットマム ‘ダンテサーモン’ /コリウスと色を合わせたサーモンピンクのポットマム。丸いつぼみと花心がワインレッドに染まり秋らしくおしゃれなカラーリング。
●カリオプテリス‘ゴールドクレスト’/背景と両サイドから青紫色のふわふわした花を咲かせているのがこの植物。明るいライムグリーンの葉も爽やか。耐寒性・耐暑性ともに強く、寄せ植えでも庭植えでも重宝する宿根草。
●ペニセタム‘チェリースパークラー/中央に入れたチェリーカラーの細長い葉。斑入りの葉と赤い穂が風に揺れる風情が秋らしさを演出してくれる宿根草。
●ジュズサンゴ‘絣(かすり)’/鉢淵に入れた斑入りの葉です。白いふわふわとした花が咲いた後に、オレンジ色のつややかな実が12月まで楽しめます。半耐寒性常緑~落葉低木です。
●アルテルナンテラ‘コタキナバル’/ジュズサンゴの両脇に入れたワインレッドの葉です。宿根草ですが耐寒性がなく、霜に当たると枯れるので一年草扱いのことも。
●カルーナ・ブルガリス/両サイドの鉢淵に入れアクセントとしています。寒さにとても強い耐寒性常緑低木で、モールのような特徴的な葉が秋から冬の寄せ植えに重宝するカラーリーフです。冬はより赤色が強く出ます。
幅約50cmの大鉢に、ユーカリの樹木を中心としてサークル状に段々と草丈が低くなるようグラス類やマムを植栽しました。高さがあり堂々としているので、アプローチなどにおくと家構えに品格がプラスされます。
【使った植物】
●ユーカリ・ポポラス/丸い葉っぱが可愛らしい常緑樹の苗木を寄せ植えに使いました。鉢内の土が少ないので鉢植えのままならそれほど大きく育ちませんが、地植えにすると10m以上になります。剪定しながら小さくも育てられ、カットした枝はドライフラワーでも楽しめます。
●クロロフィツム ‘スターライト’/ユーカリの周りに植栽した細長いグリーンの葉。オリヅルランの仲間で葉はクリーム色の斑入り模様。夏から秋にかけて星型の白い花を咲かせる。耐暑性、耐寒性に優れ、乾燥にも強くローメンテナンスな常緑の宿根草。
●ポットマム ‘ダンテサーモン’ /全体的にライムグリーンでまとめた中にアクセントカラーとして効かせているのがこのマムの花。ダークな葉も株元を引き締めるのに効果的です。花後は別の花に植え替えて、マイナーチェンジをするとよいでしょう。性質は前述のマムと同様。
●ハゴロモジャスミン‘フィオナサンライズ’/マムの苗と苗の間にライムイエローで切れ込みの深いこの葉をいれることで、マムの花が際立ち軽やかさも生まれます。半耐寒性のつる性低木で、暖地では年間を通して美しい葉が楽しめます。
●オレガノ‘ノートンズゴールド’/鉢淵をぐるりと覆いました。輝くような葉色が通年楽しめる半常緑性の宿根草です。小さな葉を密に茂らせ這うように広がるため、寄せ植えでは鉢淵に、庭植えではグラウンドカバーとして活躍します。
秋は実を観賞する植物が多くなる季節です。日本に古来からあるムラサキシキブはその代表。この実を含めてパープル系の植物をセレクトし、全体をシックにまとめました。
【使った植物】
●ムラサキシキブ/秋に美しい紫色の実をつける落葉性低木。寄せ植えの後方へ植栽し、高さを出してアクセントとしても効果的。
●ポットマム‘ダンテレッド’/艶やかな花色が目を引く品種。性質は前述のマムと同様。
●カレックス‘ジェネキー’/葉が非常に細く、寄せ植えに繊細な雰囲気が出るグラス。グリーンと白の斑入りで、しなやかな葉が美しい常緑の宿根草。
●ヒューケラ/鉢縁に植えたパープルの葉。常緑の宿根草で、美しい葉はカラーバリエーションが豊かにあり、寄せ植えではアクセントカラーとして大活躍します。
●バコパ‘トピア ピンク’/柔らかな茎を這うように伸ばし、ピンクの小さな花をたくさん咲かせるので鉢淵に植栽。晩秋まで楽しめる耐寒性多年草ですが夏越しが難しいので一年草扱いにすることも。
●ジュズサンゴ‘ジュズバニラ’/白いつややかな実が愛らしい半耐寒性常緑~落葉低木です。小さな実がこぼれるように鉢縁に植栽しました。
秋の花にはクリアピンクの花が少ないなか、貴重な花材となるカーネーションを主役にしました。明るくパッと華やかな印象に仕上げました。
【使った植物】
●カーネーション‘I ♡ YOU’/一輪の開花期間が長く、連続開花性にも優れたスーパーハイパフォーマンスな宿根草。コンパクトにまとまり寄せ植えに使いやすいですが、越冬して株が太ると1株で100輪近い花を咲かせることも!
●アメリカイワナンテン‘レインボー’/クリーム色の斑入りの葉と赤っぽい茎がおしゃれな常緑低木。寄せ植えの後方に入れました。
●ルー(ヘンルーダ)/中央に植えた深い切れ込みのある葉。青みがかった葉が通年美しい常緑宿根草。
●アルテルナンテラ‘ピンクスプラッシュ’/右の鉢縁に入れた赤い斑入りの葉。先にご紹介しているようにアルテルナンテラは葉色が美しく個性的な品種がたくさんあります。
●バコパ‘トピア ピンク’/鉢縁に植栽したピンクの小花。晩秋まで楽しめる耐寒性多年草ですが、夏越しが難しいので一年草扱いにすることも。
秋は植物の生育がゆっくりで、花が長もちします。気温が低く蒸れる心配も少ないので、ギュッとたくさんの種類を植え込んでも安心です。ぜひ、寄せ植えを楽しんでくださいね!
協力/株式会社エム・アンド・ビー・フローラ
Credit
寄せ植え制作&アドバイス / 難波良憲
八ヶ岳にある種苗メーカー「エム・アンド・ビー・フローラ」に勤務。膨大な植物の知識を生かし、花の個性を生かしたブーケのように華やかな寄せ植えが好評。同社のショップ(現在はクローズ)での店長を担当しつつ、寄せ植え教室を開催。現在は、同社インスタグラムを通じて、季節毎の華やかな寄せ植えの紹介や、水やりなどガーデニングの基本知識や様々なお役立ち情報の発信を行っている。気になる方はぜひアカウントを覗いてみてください。
取材&文 / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。