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【広尾】山種美術館「【特別展】日本画聖地巡礼 ―東山魁夷の京都、奥村土牛の鳴門―」 で秋の旅を

  • 2023.10.15
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日本画で聖地巡礼を味わう秋の一日

山種美術館で開催中の「【特別展】日本画聖地巡礼 ―東山魁夷の京都、奥村土牛の鳴門―」 [2023年9月30日(土)~11月26日(日) ]を見て来ました。 日本画の巨匠たちが題材とした実在の場所を「聖地(せいち)」と位置付け、現地の写真や情報を集めて作品とともに公開。

画家が船から身を乗り出してスケッチした有名な海は?あの見事な椿の聖地は?小説家が惜しんだ古きよき都の風景を描いたのは? 日本画に描かれた聖地巡礼の旅の始まりです。

※特別な許可を得て撮影しています。一部許可のあるものを除き館内は撮影禁止です。 ※キャプションの作品名の後に取材地・ゆかりの地を記載しています。

出典:リビング東京Web

山種美術館「【特別展】日本画聖地巡礼 ―東山魁夷の京都、奥村土牛の鳴門―」

日本画の風景、実在する景色の美しさに魂を込めて描く

フランスの印象派の先駆者と言われた風景画家・ブーダンは、直接現地へ赴いて描かれたものには、筆の勢いと力強さと生命力があるとして、野外制作にこだわりと強い信念を持っていたそうです。 実在する風景の空気感がそのまま伝わる日本画の臨場感溢れる美しさは、現地で画家が発見した美を、筆に乗せて描いた情熱と信念、魂の表現かもしれません。

《鳴門(なると)》

奥村土牛《鳴門》。瀬戸内海の鳴門の海上、眼前に現れる大きな渦潮。渦を巻く潮の流れる音が聞こえてきそうな迫力があります。 土牛は、船から身を乗り出すようにして鳴門の渦潮をスケッチしたそうで、夫人が後ろから帯をつかんで支えていたとか。

帰ってから、スケッチをもとに制作に入る土牛でしたが、頭の中から印象を掘出し、掘出しするのが苦労であった、とのことでした。 名画誕生には家族の支えがあったということですね。

出典:リビング東京Web

手前、奥村土牛 《鳴門》 徳島県鳴門市 1959(昭和34)年 紙本・彩色 山種美術館蔵

日本の聖地のような《山中湖富士(やまなかこふじ)》《富士宮の富士(ふじのみやのふじ)》

霊峰富士。日本人が心のふるさとと感じる山であり、古来より日本の聖地とされ信仰を集めた山を描いた奥村土牛《山中湖富士》と《富士宮の富士》。

遠くかすむような空に、山腹に白い雲がたなびく青い富士の《山中湖富士》。金色の輝く空を背景に真っ白な雪化粧の《富士宮の富士》。 富士宮市内には、富士山の大噴火を鎮めたとして古来より信仰を集めて来た富士山本宮浅間神社もあります。

土牛は、「富士の宮から眺める富士は―(中略)―山頂には、宝珠が置かれているように見える」と語っています。

出典:リビング東京Web

左から、奥村土牛 《山中湖富士》 山梨県山中湖村 1976(昭和51)年 紙本・彩色、《富士宮の富士》 静岡県富士宮市 1982(昭和57)年 紙本・彩色 どちらも山種美術館蔵

山の奥にも聖地《飛瀑華厳(ひばくけごん)》《月光(げっこう)》《奥入瀬(秋)(おいらせ(あき))》

日光・華厳滝を描いた横山大観《飛瀑華厳》(左)。中禅寺湖を水源として高さ97メートルから飛沫を上げて一気に流れ落ちる滝は圧巻です。

大観は、1926年(大正15年)に、日本美術院の遠足会で中禅寺湖を訪れているそうです。その時に華厳滝を見る機会があったかもしれないとのことでした。

中央は、徳川家光を祀った輪王寺の大猷院の拝殿に登る月を描いた川端龍子《月光》。深まる秋、錦秋の奥入瀬を描いた奥田元宋《奥入瀬(秋)》(右)。

出典:リビング東京Web

左から、横山大観 《飛瀑華厳》 栃木県日光市 1932(昭和7)年 絹本・墨画淡彩、 川端龍子 《月光》 栃木県日光市 1933(昭和 8)年 絹本・彩色、奥田元宋 《奥入瀬(秋)》 青森県十和田市 1983(昭和58)年 紙本・彩色 全て山種美術館蔵

黄金の中に咲き誇る、重文《名樹散椿(めいじゅちりつばき)》

金粉が厚く降り積もったような背景。伸びた枝に色とりどりに花が咲き誇る速水御舟、重要文化財《名樹散椿》。

通称「椿寺」、京都市北区の昆陽山地蔵院境内にあった樹齢400年の五色八重散椿を描いた名作です。加藤清正が朝鮮から持ち帰り、豊臣秀吉が寺に寄進した逸話が残ります。 初代・五色八重散椿の写真には、寺の屋根まで届きそうな見事な椿の姿が。残念なことに初代の椿は枯れてしまい、現在の椿は2代目だそうです。

出典:リビング東京Web

速水御舟 《名樹散椿》【重要文化財】 京都府京都市北区 1929(昭和4)年 紙本金地・彩色 山種美術館蔵

早春の奈良《大仏殿春雪(だいぶつでんしゅんせつ)》に《吉野(よしの)》の桜、国内最大級の弥勒磨崖仏《弥勒(みろく)》

春の雪に柔らかく包まれるように建つ奈良東大寺大仏殿。本尊の廬舎那仏坐像(るしゃなぶつざぞう)を安置するために建てられたお堂です。

本殿は、江戸時代に再建されたものですが、高さは奈良時代とほとんど変わらないそうです。度重なる戦火や火災から再興し、人々の信仰により守られて来た高さです。

姿は見えなくとも大宇宙の光、真理を表す仏・廬舎那仏の偉大な存在感を感じさせる吉田善彦《大仏殿春雪》。

奥深い吉野の山々を包み込むような満開の桜。石田武《吉野》、奥村土牛《吉野》。脇侍に控えるのは小林古径《弥勒》菩薩でしょうか。 たまたまでしょうか、大仏殿と大仏を荘厳するような並びに見えました。

出典:リビング東京Web

左から、吉田善彦 《大仏殿春雪》 奈良県奈良市 1969(昭和44)年 紙本・彩色 個人蔵、石田武 《吉野》 奈良県吉野郡 2000(平成12)年 紙本・彩色 山種美術館蔵、奥村土牛 《吉野》 奈良県吉野郡 1977(昭和52)年 紙本・彩色 山種美術館蔵、小林古径 《弥勒》 奈良県宇陀市 1933(昭和8)年 絹本・彩色 山種美術館蔵

京洛四季《春静(はるしずか)》、《緑潤う(みどりうるおう)》、《秋彩(しゅうさい)》、《年暮る(としくる)》、一期一会の風景

京都の四季の風景を描いた東山魁夷の名作《春静》、《緑潤う》、《秋彩》、《年暮る》。 小説家・川端康成に「京都は今描いといていただかないとなくなります。京都のあるうちに描いておいてください。」と言われていたとのこと。

本作は、東山魁夷の京都による歳時記であり、京都の四季を通じて日本の美を想う画家自身の願いでもあるそうです。 桜も紅葉も同じ場所で毎年似たように咲いたり、色付いたり。緑を潤す水の流れも、暮れに降る雪も千年変わらない風景に見えて、一期一会の瞬間の美を切り取った名作です。

森の《木霊》

左側は、山口華楊《木精》。北野天満宮の大欅の絡み合う根本に一羽のミミズクが…まるでトトロの森のよう。

出典:リビング東京Web

右側奥から、東山魁夷 《春静》 京都府京都市北区 1968(昭和43)年 紙本・彩色、《緑潤う》 京都府京都市左京区 1976(昭和51)年 紙本・彩色、《秋彩》 京都府京都市右京区 1986(昭和61)年 紙本・彩色、《年暮る》 京都府京都市中京区 1968(昭和43)年 紙本・彩色 全て山種美術館蔵左側、山口華楊 《木精》 京都府京都市上京区 1976(昭和51)年 紙本・彩色 山種美術館蔵

物語絵の世界へ旅する《杜若(かきつばた)》

「伊勢物語(いせものがたり)」東下り(あずまくだり)」の名場面「八橋(やつはし)」を描いた新井勝利(あらいしょうり)《杜若》。画面下の八橋に座す3人の男たちと、上部に杜若が描かれています。

今回、作品の素描が展示されていました。 平安時代の装束で座している人物(左)は、ほぼ素描で描かれた装束とポーズでした。 勝利が愛知県知立市八橋町無量壽寺を訪れて描いた杜若の素描は、花と八橋が、丁寧に写生されていました。

作品中の杜若は、琳派を思わせる意匠性と、たらしこみ表現も見られ、古典的な物語絵の雰囲気を感じさせます。 東下りの旅先で、嘆く男たちに語りかけるように花や茎を伸ばす杜若に、勝利は「八橋」の物語も、杜若も愛したのだろうと思わせてくれました。

出典:リビング東京Web

新井勝利 《杜若》 愛知県知立市 1961(昭和35) 紙本・彩色 山種美術館蔵

日本画の聖地巡礼へ、秋の旅は美術館から

「【特別展】日本画聖地巡礼 ―東山魁夷の京都、奥村土牛の鳴門― 」。 気候も涼しくなり秋のお出かけシーズン到来。どこへ行くか迷ったら日本画の聖地巡礼へ、美術館から秋の旅を始めてみませんか。 是非お出かけください。

ミュージアムグッズ

ミュージアムグッズは、一筆箋 速水御舟 《名樹散椿》【重要文化財】(418円)、マスキングテープ 速水御舟 《翆苔緑芝(部分)》(495円)、アニマルハグ クロネコ(2個入)(528円)、フジヤマ石鹸 ローズマリーの香り(500円)を購入。 アニマルハグ クロネコ(2個入)は、マスキングテープカッターです。マスキングテープ 速水御舟 《翆苔緑芝(部分)》は在庫少なめ。

出典:リビング東京Web

ミュージアムグッズ 山種美術館

Cafe 椿 展覧会の作品にちなんだオリジナル和菓子

Cafe 椿では、青山・菊家のオリジナル和菓子、速水御舟の《名樹散椿》【重要文化財】にちなんだ「散椿」(660円)(中央)をいただきました。 和菓子は、こしあんの優しい甘さ。お抹茶セットでいただくと(1,250円)です。

※文中のうち、所蔵先表記のない作品はすべて山種美術館所蔵です。※価格は税込価格です。

出典:リビング東京Web

Cafe 椿 オリジナル和菓子「散椿」(中央) 山種美術館

〇山種美術館 URL:https://www.yamatane-museum.jp/ 住所:〒150-0012 東京都渋谷区広尾3-12-36 TEL:050-5541-8600 (ハローダイヤル) 開館時間:10時~17時(入館は閉館の30分前まで) ※今後の状況により、開館時間は変更になることがあります。 交通:JR恵比寿駅西口・東京メトロ日比谷線恵比寿駅 2番出口より徒歩約10分 恵比寿駅西口1番乗り場より日赤医療センター前行都バス(学06番)に乗車、「広尾高校前」下車徒歩1分 渋谷駅東口ターミナル54番乗り場より日赤医療センター前行都バス(学03番)に乗車、「東4丁目」下車徒歩2分

〇【特別展】日本画聖地巡礼 ―東山魁夷の京都、奥村土牛の鳴門― 会 期:2023年9月30日(土)~11月26日(日) ※都合により出品作品及び展示期間、会期・開館時間等が変更される場合があります。 休館日:月曜日 入館料:一般1,400円、大学生・高校生1,100円、中学生以下無料(付添者の同伴が必要です) ※障がい者手帳、被爆者健康手帳をご提示の方、およびその介助者(1名)一般 1,200 円、大学生・高校生 1,000 円 ※「きもの特典」きものでご来館のお客様は、一般200円引き ※複数の割引・特典の併用はできません。 入館日時のオンライン予約も可能です(詳細は山種美術館Webサイトをご覧ください)。

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