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10年前にスピルバーグとルーカス監督が予想した『映画界の未来』を再訪

  • 2023.10.13

スティーブン・スピルバーグ監督とジョージ・ルーカス監督が登壇した2013年の南カリフォルニア大学 映画芸術学部のイベントで、監督たちが予想した“映画界の未来”を紹介。(フロントロウ編集部)

スティーブン・スピルバーグ監督が2013年に語った未来予想

南カリフォルニア大学 映画芸術学部の卒業生であるジョージ・ルーカス監督と、同学部の支援者であるスティーブン・スピルバーグ監督が登壇した、2013年のイベント。イベント内容は、当時、VarietyやThe Hollywood Reporter、The Vergeといった米エンタメメディアが報じた。

画像: 1984年の映画『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』の撮影セットでのスティーブン・スピルバーグとジョージ・ルーカス。
1984年の映画『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』の撮影セットでのスティーブン・スピルバーグとジョージ・ルーカス。

2013年と言うと、Netflixが初のオリジナルシリーズである『ハウス・オブ・カード 野望の階段』と『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』をリリースした年。音楽業界では2011年に米国上陸したSpotifyが音楽ストリーミングの人気を拡大しており、無料オンラインゲーム産業は2013年だけで19.9億ドルから28.9億ドルへと45%成長。エンターテイメントの種類が爆発的に増加していた時期で、各社、消費者の時間をどのように獲得するかに躍起になっていた。

そんな時代に、「我々は、週を拡大することはできません。24時間のサイクルを拡大することもできません。私たちはたくさんの選択肢から抜け出すことができないのです」と言ったスピルバーグ監督は、「24時間しかないせいで見逃される可能性のある、本当に興味深く、深く、パーソナルで、もしかしたら歴史的なプロジェクトを大量に作るよりは、1本の映画に2億5,000万ドルを投資して大当たりを狙おうとスタジオはしているのです」と、当時の業界を分析。

その結果、「(年に)3本、4本、あるいは6本ものメガ予算の映画が地面に墜落するような崩壊が起こるだろう」と予想。「それがまたパラダイム(※物事を理解し、解釈する方法を定めるフレームワーク)を変えることになる」と付け加えた。

さらにその先に待っているのは、チケット価格の変動制?

画像: さらにその先に待っているのは、チケット価格の変動制?

スピルバーグ監督は、その先に待っているであろう業界の変化にも言及した。

監督が起こると予想したのは、チケット価格の変動制。「『アイアンマン』の次回作には25ドル払う一方で、『リンカーン』には7ドル払えば良い」とコメントした監督。ちなみに、『アイアンマン』の予算は1億3000万~1億4000万ドル、スピルバーグ監督作品である『リンカーン』は6,500万ドルとされている。

一方でルーカス監督は、スピルバーグ監督が予想した“メガ予算映画の墜落の時代”のあと、劇場で映画を観るのはブロードウェイ公演を観るような「高級」なものになると予想した。

「結果的に、(劇場公開される)映画の本数は少なくなります。映画館は大きくなり、素敵になるでしょう。映画を観に行くのに50ドルかかるようになります。100ドルか。150ドルかもしれない。そして、このような高級映画館で上映される映画は、ブロードウェイ公演のように、1年間ずっと上映されることになる。そしてそれが、“映画産業”と呼ぶものになるでしょう」

そう語ったルーカス監督は、大作映画以外の作品は劇場ではなくVOD(※ビデオ・オン・デマンド:インターネットを通して作品を視聴するサービス)での視聴に切り替わると予想し、「その時の問いは、『(作品を)人々に観てもらいたいか? 劇場のスクリーンで観てもらいたいか?』ということになる」とコメントした。

2023年3月、The Los Angeles Timesは2022年の米国内の興行収益の55%を上位10本の映画が獲得したことを報道。多くの観客の間で映画鑑賞を習慣化させるためにも、メガ予算映画の制作が中心となっている現状を打破し、2,000万ド~8,000万ドルの「中堅レベルの映画を制作するリスクを取る必要がある」とハリウッドの映画スタジオに訴えた。

劇場映画で公開される映画のタイプが変わってきている背景には、DVD需要が激減したことも大きく関係している。俳優やプロデューサーとして活躍するマット・デイモンは、YouTube番組『Hot Ones』にて、「1990年代とは状況が違う」と語った、「テクノロジーの発展で(DVDビジネスが)廃れてしまった。我々が昔作っていた映画は、劇場で全収益を稼がなくても良かったわけです。劇場の公開から6ヵ月後にDVDのリリースがあって、そこでまた一定の収益を得られますから。映画を再公開するようなものです。それがなくなったとき、我々が作ることができる映画に変化が現れました」と、業界が経験している大きな変化を明かした。

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