西成の“おばちゃん”作の企画展が開催　16日（月）まで

こんにちは、新人編集部員のNです。今回私が取り上げるのはファッション。 なにやら、西成の地で美容院などで使用されるイスを作る際に出る廃材のレザーを使った企画展が行われるらしいという噂を聞きつけて、早速行ってみることに。

西成の“おばちゃん”作の廃棄レザーの洋服がずらり

今回の企画展はタカラベルモントのアップサイクル（廃棄予定であったものに手を加え、価値を付けて新しい製品へと生まれ変わらせる手法）プロジェクトである「Re:bonis（リボニス）」と大阪・西成発のファッションブランド「NISHINARI YOSHIO（ニシナリヨシオ）」がコラボしたもの。

展覧会の様子。色とりどりな衣装がずらりと並びます

タカラベルモントとニシナリヨシオは共に大阪市にある西成区が拠点。 元々西成にある手芸館「たんす」で地域の女性たちと交流・創作活動を行っていた美術家の西尾美也（よしなり）さんと、西成の地で創業100周年を迎えたタカラベルモントがコラボレーションしたことでこのような展覧会が開催されることになりました。 展示されている作品は全て西成の地域の女性たちがミシンや手縫いで創作したオリジナリティ溢れるものばかり。「作業中は大変ですが、作品が洋服として完成した時は凄く達成感を感じます」と西成の“おばちゃん”たちも笑顔。

タカラベルモントの従業員によるファッションショーも

「日常を生きる作業着」をコンセプトに作られた今回の洋服。普段から作業着を着る人たちが着用して華やかに活きることがこのファッションの正しい在り方だという西尾さんの考えにより、実際にタカラベルモントの大阪工場で働く従業員の皆さんによるファッションショーが行われました。 音楽に合わせてさっそうと登場したモデルの4人は、これが初めてのランウェイとは思えないほど落ち着いていて堂々とした振る舞いが印象的。「普段からプライドを持って働いている方々の姿を、ビジュアル的にも際立たせたい」という西尾さんの思いが溢れたランウェイになりました。 中でも私が一番気になったのが本革に比べて低い評価をされがちなレザーの利点を糸で縫ったジャケット（写真下）。

本展覧会の「最後のオプション」というネーミングには「究極の選択肢」という意味が含まれているそうですが、廃棄される予定だったレザーの良さを活かすところにレザーの行く末を選択するというゆとりが生まれます。選択肢が広がり余裕ができることでやさしい社会ができるのではないか。この展覧会にはそういった意味も込められているそう。 また、西尾さんはアートとは作品そのものだけでなく制作過程で生じる関係性のことも指すという考えから、創作をするにあたり生じる西成の女性たちや大阪工場の人たちとの間に生じるズレも大切にしています。 今回のファッションショーでは、西成の酒屋の奥さんが「洋服に花を咲かせることで明るい気持ちになってほしい」と旦那さんに向けて作られた「酒屋ジャケット」や、西成の焼き鳥屋で実際に使用されているやけどをしないようにそでを覆った「焼き鳥ジャケット」といった誰かを想って作られた作品が目立ちました。これらは全て西成の“おばちゃん”が考案したそう。

ファッションショーでモデルを務めた大阪工場の人たちと西尾さん（真ん中）。酒屋ジャケット（左）や焼き鳥ジャケット（右）も

「町を縫うパンツ」も西尾さんのお気に入りの1点。“おばちゃん”たちが西成の街を散策する中で見つけた看板やポールなどをシルエットにしています。

西成らしさを押し出しすのではなく、西成に住む作り手が誰かのことを思って作られた作品の数々によって、わざとらしさのない自然な“西成らしさ”を間接的に感じ取ることができます。“おばちゃん”たちの感性が光る店内にはレトロな雰囲気が漂っていました。 見る人によってさまざまな解釈と楽しみ方ができる展示会は10月16日（月）まで。展示品は全て購入が可能。場内には、リボニスのSDGsの取り組みを紹介したコーナーも常設されています。手芸と交流の場「たんす」の仲間も随時募集中ですよ。ぜひ実際に会場を訪れて商品を手に取ってみて。

最後のオプション ■日時：10月5日（木）～16日（月）13：00～17：30（土曜日と15日は休み） ■会場：タカラベルモントTB-SQUARE osaka（大阪市中央区島之内２丁目１３−２２） 詳細はWebで確認を https://www.takarabelmont.co.jp/info_20230913_01/