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『ポッサム』は禁じられた再婚を可能にする「善意の誘拐」の物語!

  • 2023.10.10
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チョン・イルが主演する『ポッサム~愛と運命を盗んだ男~』は、極めて特異な設定をもって物語が幕を開ける。主人公のバウは、人々の前では口にできない特殊な仕事に従事していたのである。

その仕事とは?

それは、まさに女性を誘拐するものであった。とはいえ、彼が誘拐した女性たちから恨みの声を聞くことは皆無で、逆に深い感謝すら受けることもあった。なぜ感謝されるのかというと、朝鮮王朝の厳格な男女差別が影を落としていたからだ。

当時の社会状況を説明しよう。朝鮮王朝は儒教を国教としており、この儒教には身分の違いを強く認識する思想が内包されていた。言い換えれば、明確な身分差別を正当化していたのである。

特に、当時は男性を尊重し、女性を卑下する風潮が際立っており、女性が婚姻を結ぶと再婚は認められなかった。そのため、夫を失った未亡人は、再婚の自由を持たず、夫の死後、自らの命を絶つことさえ賞賛される時代背景があった。現代から見れば、本当に理不尽だったのだ。

チョン・イルが主人公のバウを演じた(写真=© MBN All rights reserved)
異色の風習を描くドラマ

朝鮮王朝時代の未亡人たちの苦悩は計り知れなかった。20代の若さを持つ女性であっても、身分制度のもとでは寡婦としての立場を保持し続けた。そんな時代だからこそ、バウのような男の存在が浮上する。

例を挙げれば、愛する男性と共に生きたいと願う寡婦がバウに仲介を求め、布に包まれて誘拐され、望む場所へと運ばれて再婚を果たすのである。この「包む」という行為は韓国語で「ポッサム」と表現され、これが「ポッサム」という仕事の由来となっている。

本作では、バウが誤ってクォン・ユリ演じるファイン翁主(オンジュ)を誘拐してしまう。彼女は名家の出で、夫との結婚を早々に終えて未亡人となっていたが、予期せぬ誘拐に遭遇する。このバウの行為が、その後の大事件の始まりとなるのだが、『ポッサム~愛と運命を盗んだ男~』は、朝鮮王朝の儒教社会が生んだ異色の風習を描くドラマとして本当に面白いドラマに仕上がっている。

文=康 熙奉(カン・ヒボン)

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