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魔女狩りを流行らせたのは、たった1人の恨みが生んだ「奇書」だった

  • 2023.10.9
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"ヤバい本"が世界の歴史を動かした? YouTubeで人気の奇書研究家・三崎律日(りつか)さんの著書『奇書の世界史』(PHP研究所)が、2023年10月4日に文庫化した。

「かつて当たり前に読まれていたが、いま読むとトンデモない本」と「かつて悪書として虐げられたが、いま読めば偉大な名著」という2つの視点から、数"奇"な運命をたどった "書"物を取り上げる本書。「全部妄想で書かれた台湾案内書」「謎の文字で書かれている未解読の本」など、刺激的な本が15作品紹介されている。

冒頭を飾っているのは、大規模な魔女狩りを巻き起こした『魔女に与える鉄槌』だ。作者はドイツの異端審問官であったハインリヒ・クラーメル。彼はオーストリアでおこなった暴力的な審問で現地教会の反感を買い、追放される。その後、キャリアを傷つけられた怒りに任せてこの本を書き上げた。内容は感情的で偏見に満ちているが、教皇のお墨付きを序文に載せたこと(しかもクラーメル個人に発行されたもので、書籍に対してのものではなかった)、活版印刷で大量生産が可能になったこと、ペスト流行や気候変動と重なったことで、本はまたたく間に広まった。

『魔女に与える鉄槌』は現在では「悪書」だが、当時は「良書」とされて時代の風潮をつくり、10万人以上の女性を犠牲にしてしまった。奇書のエピソードを知ると、人々の価値観が変化してきた歴史の様子が見えてくる。

【目次】
01 魔女に与える鉄槌
10万人を焼き尽くした、魔女狩りについての大ベストセラー
02 台湾誌
稀代のペテン師が妄想で書き上げた「嘘の国の歩き方」
03 ヴォイニッチ手稿
万能薬のレシピか? へんな植物図鑑か? 未だ判らない謎の書
04 野球と其害毒
明治の偉人たちが吠える「最近の若者けしからん論」
05 穏健なる提案
妖精の国に突き付けられた、不穏な国家再建案
番外編01 天体の回転について
偉人たちの知のリレーが、地球を動かした
06 非現実の王国で
大人になりたくない男の、ネバーエンディングストーリー
07 フラーレンによる52Kでの超伝導
物理学界のカリスマがやらかした"神の手"
08 軟膏を拭うスポンジ / そのスポンジを絞り上げる
奇妙な医療にまつわる、奇妙な論争
番外編02 物の本質について
世界で最初の快楽主義者は、この世の真理を語る
09 サンゴルスキーの『ルバイヤート』
読めば酒に溺れたくなる、水難の書物
10 椿井文書
いまも地域に根差す、江戸時代の偽歴史書
11 ビリティスの歌
古代ギリシャ女流詩人が紡ぐ、赤裸々な愛の独白
番外編03 月世界旅行
1つの創作が科学へ導く、壮大なムーンショット

■三崎律日さんプロフィール
みさき・りつか/1990年、千葉県生まれ。会社員として働きながら歴史や古典の解説を中心に、ニコニコ動画、YouTubeで動画投稿を行う。代表作「世界の奇書をゆっくり解説」のシリーズ累計再生回数は600万回を超え、人気コンテンツとして多くのファンを持つ。

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