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松坂桃李さん「同世代は気になる存在」 映画「ゆとりですがなにか インターナショナル」に出演

  • 2023.10.8

映画「ゆとりですがなにか インターナショナル」が10月13日から公開されます。本作は、2016年放送の連続ドラマ「ゆとりですがなにか」(日本テレビ系)の続編。野心がない・競争意識がない・協調性がない「ゆとり世代」と勝手に名付けられたアラサー男子3人が、仕事や家族・恋・友情に迷い、あがきながらも懸命に立ち向かうストーリーです。本作で、30を過ぎても女性経験がない小学校教師・山路一豊を演じている松坂桃李さん(34)に、本作の魅力や久しぶりに演じた役柄について、また同世代の人たちに対する思いなどをうかがいました。

雑談がきっかけで実現した映画化

――ドラマの放送から約7年。満を持しての映画化となりますが、今回のお話を聞いたときはどう思われましたか。

松坂桃李さん(以下、松坂): 映画化が決まったと聞いた時はもちろん嬉しかったです。ただ、続編をやるなら個人的にはスペシャルドラマとかネット配信なのかなと思っていたので、「映画なんだ!」という驚きはありつつ(笑)、「いつかまた山路を演じるんじゃないか」という可能性は頭の片隅にずっとありました。

連続ドラマの放送が7年も前のことなので、この作品を知らない方も多いと思うんです。なので「ゆとりですがなにか」という作品があったんだぞ!ということを、ぜひ皆さんの力もお借りしながら宣伝して、ゆとり世代が奮闘する軽妙な物語を皆さんにお届けできたらと思います。

朝日新聞telling,(テリング)

――今回の映画化にあたっては、松坂さんの一言が発端になったそうですね。

松坂: 今作の脚本を担当されている宮藤(官九郎)さんと他の現場でご一緒した時に、ちょうど僕が、結婚式前日に二日酔いでハメをはずした花婿と友人3人が繰り広げるコメディー映画「ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い」(米・2009年公開)を見たばかりだったんです。それで「この話をあの『ゆとり』の3人でやったら面白いんじゃないか」っていう雑談をしたら、実はその後、水面下でその話が動いていたらしく、「じゃあ始めますか!」と思ったら緊急事態宣言が出て、業界全体がストップしてしまって。 約2年後に色々動き出し、ようやく公開に至ることができました。

――今作の脚本を読んだ感想を教えてください。

松坂: 実は、コロナ禍に入る前に宮藤さんが書かれた仮の脚本を頂いていたんです。その時の脚本にも「ハングオーバー」の要素はありながら、ちゃんとその時代が描かれていました。ですが、世の中の情勢が変わり完成した脚本では、そこからさらに時が経過した「今」の時代を切り取った事象がうまく描かれていたので、さすが宮藤さんだなと思いました。

個人的にグッときたところは「まーちん」「山路」「まりぶ」の3人がそろったところです。一瞬で「あ、ゆとりだな」と戻れる感じがして嬉しかったです。3人でお酒を飲みながらくだらないことを言い合うのがドラマの時もすごく楽しかったんですけど、そういうシーンが今回の映画の中でもあるので、ぜひ楽しみにしていただきたいです!

朝日新聞telling,(テリング)

「どんな球も受け止めてくれる」という安心感

――真面目で優しい山路ですが、男女の関係には独特の思想を持っています。改めてどういう人物だと捉えていますか。

松坂: こじらせすぎて自分のことに関しては何も分かっていないけど、相手のことはよく分かる人なんだろうなと思います。だからこそ、生徒や友達にも親身になって寄り添うことができるんじゃないかな。

――時を経てまた同じ役を演じるというのは、どんなお気持ちでしたか?

松坂: 僕は基本的に同じ役をもう一度やるのは苦手なんです。毎回、全てを出し切るつもりで「これ以上はもう出ない」という思いで演じているので、果たして今回、また山路ができるのかという不安はありました。ただ、この「ゆとり」に関しては、現場に入ると自然とその役に戻れる感覚があって、あの空気が出来上がっていた。その安心感が、一瞬で山路になる手助けになったのかなと思います。

山路も30代半ばに差しかかって、少しは成長しているのかなと思ったんですが、今回の脚本を読んだら「童貞」ということも含めて全く変わっていなかったので(笑)、この通りにやるしかないと思いました。水田(伸生)監督にはドラマの時もお世話になったので、演出に対する絶大な信頼がありました。なので、僕は今回の映画でも、監督の演出の中で「山路」としてどれだけ動き回れるかということだけ考えて演じていました。

――共演している岡田将生さん、柳楽優弥さんとはプライベートでも交流があるそうですが、一緒にお芝居するうえで照れくささや、やりにくさはありましたか?

松坂: 安藤サクラさんも含めた4人とは、連続ドラマがきっかけですごく仲良くなったので、その後のスペシャルドラマをやった時はちょっとした照れくささみたいなものもあったんです。でも、撮影を重ねるごとに信頼関係がより濃密になっていったし、「どんな球を投げても、きっと受け止めてくれるはず」という思いがお互いに共通認識としてあるからこその安心感みたいなものがありました。

朝日新聞telling,(テリング)

優しさとスパイスの利かせ方が絶妙な宮藤作品

――本作は「ゆとり」を題材にしながらも、「コンプライアンス」や「LGBTQ」などを取り巻く社会問題がふんだんに盛り込まれています。宮藤さんの脚本はコメディーの中に同時代的なテーマを盛り込むことに長(た)けているなと感じますが、松坂さんは宮藤作品に出演されて、どんな気づきや魅力を感じましたか?

松坂: 大事なセリフを大事に言おうとせず、さらっと言わせようとする感じが大好きなんです。そこが、僕自身、宮藤官九郎作品にハマっている理由かもしれません。例えば今回の映画の中で言うと、「みんな何かにつけて『多様性』って言うけどさ」と、多様性についてシニカルに、ちょっと笑いにも変えながら、うまく宮藤さん節に変換しているところが好きですね。

それに、宮藤さんの作品には悪者が登場しないんです。今作でも、柳楽の優ちゃん演じる道上まりぶや、(仲野)太賀が演じる「ゆとりモンスター」の山岸ひろむも、最初はちょっと悪い感じだけど、見ている人が愛情を持つようなどこか憎めないところがあるんですよね。登場人物一人一人の内面を掘り下げるのがとてもうまくて、個々がパーツではなく、それぞれの心を持って、ひとつの作品として動かしていく感じが魅力だなと思います。

――そういうところにも、市井の人たちに対する宮藤さんの愛情や優しい視点を感じます。

松坂: そうですね。問題提起するにしてもふわっと問いかけている感じがするし、優しくもあるけど優しすぎなくて、ちゃんとスパイスも効いている感じがステキだなと思います。

朝日新聞telling,(テリング)

枠組みなんて取ってしまえばいい

――「ゆとり世代」という共通項で連帯し、徐々に意気投合していく3人ですが、以前に松坂さんは「同世代の人に興味がある」とおっしゃっていましたね。それはどんな理由があるのでしょうか。

松坂: 過ごしてきた年月が変わらない人たちが、今どういう仕事をして、どう過ごしているのか気になるんです。特に、今作で共演している岡田(将生)や、柳楽の優ちゃんはほぼ同世代。自分と同じ年代の時間を生きた中で、同じ役者としてこれだけのことをやってのけている姿は刺激になるし、自分も頑張ろうと思える活力にもなっています。

――同業者以外の、一般的な同世代の人たちにはどんな印象がありますか? 仕事面でいうと、中間管理職に就いている人や、転職を考えている、もしくは起業をしている人などが多い年齢かもしれません。

松坂: 僕は今年35歳なんですが、仕事も含めて自分の今後の人生について考えている人は多いかもしれません。それに、このくらいの年齢で若くして社長になっている方もいらっしゃるでしょうから、案外、時代に揉(も)まれながらここまでやってきて、野心が芽生えている人も多いのかなと思います。

――同年代に生まれた人たちは「団塊世代」や「Z世代」など、「〇〇世代」と名付けてひと括(くく)りにされがちですね。

松坂: 芸人さんも「第7世代」などと言われるけど、特に日本人って、何かに分けたい、何らかのカテゴリーを作っておきたいクセがあるんですかね。そういう枠組みを作ることによって、きっと安心したいんじゃないかな。「この人と自分は違う」とか「この人たちは自分と同じ」とある程度分けることで、必要以上にだれかと比べないようにしているところはあるのかもしれないですね。

――個人的にはそれが不思議に感じるというか。人はそれぞれ違うのに、生まれた世代というだけで枠組みされても、と思うんです。

松坂: 分かります。僕も個人的に不思議だなと感じますし、そんな枠、取っちゃえばいいのにと思います。

――松坂さんは「〇〇俳優」のように、何かの枠に当てはめられたくないという気持ちはありますか?

松坂: それは僕が決められることの範疇(はんちゅう)を超えることだと思っています。僕らの仕事は「対お客さん」なので、評価を決めるのは見ていただいている皆様ですから、みなさんが判断して決めたことに関してはノータッチと言いますか。僕たちが作ったものを提供したあとは「お好きにどうぞ」と思っています。

ヘアメイク:Emiy 、スタイリスト:丸山晃

■根津香菜子のプロフィール
ライター。雑誌編集部のアシスタントや新聞記事の編集・執筆を経て、フリーランスに。学生時代、入院中に読んだインタビュー記事に胸が震え、ライターを志す。幼いころから美味しそうな食べものの本を読んでは「これはどんな味がするんだろう?」と想像するのが好き。

■大野洋介のプロフィール
1993年生まれ。大学卒業後、出版社写真部に所属した後、フリーランスとして活動中。

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