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海外のガーデン事情を見てみよう! ガーデニングで真似したいアイデアもご紹介

  • 2023.10.6

普段見慣れているガーデン風景とは一味違う、異国のガーデンには参考にしたいポイントもたくさんあります。2023年の夏をヨーロッパで過ごしたドイツ出身のガーデナー、エルフリーデ・フジ-ツェルナーさんが、訪れた海外のガーデンシーンやエピソードをご案内。旅先で見つけた、日本でも実践してみたいガーデニングアイデアも併せてご紹介します。

2023年夏に訪れたヨーロッパ旅行

厳しい暑さが続いた夏もようやく過ぎ、秋らしい日が増えてきましたね。夏は酷暑と湿気にやられて、ほとんど庭に出ることができませんでした。日本だけでなく、どの地域でも気候変動や極端な天候に直面しています。

この夏、私はヨーロッパで2カ月を過ごしました。暑さは厳しかったですが、湿度はさほどでもなく、日本にいるよりもずっと長い時間を屋外で過ごすことができました。今回は、異国での滞在期間中に出会ったガーデニングシーンや、参考にしたいガーデンアイデアをご紹介したいと思います。

シンガポールにショートストップ

シンガポール
khunmee/Shutterstock.com

このヨーロッパ旅行で、じつは最初に訪れた国はシンガポール。ここ20年ほどの変化を体験するために、短期間滞在するつもりで日程を組みました。マリーナベイエリアと呼ばれる100ヘクタールを超える開発エリアでは、「クラウドフォレスト」「フローラルファンタジー」「フラワードーム」などと名付けられたエキサイティングなドームや温室、そしてキングフィッシャー(カワセミ)湿地のように魅力的な景観が楽しめます。ガーデンズバイザウェイで丸一日過ごし、素晴らしい展望が開ける地上22mのOCBCスカイウェイに沿って散策した後には、私はシンガポールが世界で最も好きな都市の一つであるという結論に達しました。まあ、以前からそのように考えてはいたのですが、今回の旅行はその思いを再確認させてくれました。

シンガポール
Maria Nelasova/Shutterstock.com

息を呑むほど魅力的で、リフレッシュするにも最適なスーパーツリーグローブに、緑豊かな素晴らしい街並み。シンガポールで興味のある場所を全て網羅しようと思うなら、少なくとも1週間は滞在しないといけませんね。

旅の拠点は母国ドイツ

シンガポールを発って、ついに母国ドイツに到着。ドイツでは暑い夏が待っていました。2カ月の滞在期間中、拠点として過ごしたのは実家の隣家です。かつては近所の人たちが、毎日のように両親を訪ね、一緒に新聞を読みながらコーヒーを飲むなどして、1時間ほど過ごすのが日常でした。15 年以上こんな習慣が続いていたので、近隣住人とはとても仲がよく、お互いに助け合うことも当たり前のルールでした。

そんなこともあり、今回帰国に当たって近所の方が、長期滞在用に部屋の提供を申し出てくれたのです。貸してくれた部屋は広々とした地下のゲストルームで、涼しく静かな空間は、7月の暑さの中でとても快適でした。

滞在した家の素敵なガーデン&テラス

テラス

素敵な部屋にも況して嬉しかったことは、彼の庭を毎日楽しめたこと。およそ300㎡の広い庭のうち、東向きのテラスでよく時間を過ごしました。20㎡ほどのコンパクトなこのテラスはタイル張りで、素晴らしいのが屋根付きであったこと。サンシェードも設置してあり、雨や日差しを防いでくれる快適な空間で、雨の日も朝食はテラスでとるのが習慣になりました。この経験から、我が家の庭の小さなウッドデッキの上にも小さな屋根が欲しくなったのですが、ドイツでは手頃な値段ながら、日本ではもっと高価になってしまうのが難点です。

テラス
ヨーロッパ滞在で見つけたガーデニングのヒント1雨風を防げるスペースの活用を

雨や風、日射を上からも横からも防げる家の脇のスペースや、こうした屋根付きのテラスは、意外とガーデニングに向くスペースです。しっかりした屋根、日よけ、仕切りまたはトレリスにつる植物を絡ませて設置すれば、強い日差しや強風から苗を守ってくれます。

ヘーゼルナッツ
ヘーゼルナッツの木。Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

話をドイツに戻しましょう。テラスの横には小川が流れ、せせらぎがリラックスさせてくれます。川の対岸にある大きく育ったトウモロコシ畑が目隠しになり、プライバシーも安心。小川に沿って小さな緑の実をつけたヘーゼルナッツの茂みがあり、日を追うごとに大きくなっていくのが分かりました。日本に帰国する前には、ヘーゼルナッツは既に茶色く熟し、リスたちによる収穫の一歩手前でした。さらに遠くには緩やかな斜面や森が見え、完璧な借景を作っていました。

その場で摘まんで食べられる「スナックガーデン」の魅力

テラスの隣にはラズベリー、ブドウ、イチゴが植わり、外に出る度に眺めたりつまんだりするのにぴったり。「スナックガーデン」とでも言いましょうか、ほかのベリー類とともに、その場で摘んで食べられる庭になっていて、もう1、2年もすれば、新たに植えられていたキウイフルーツもその仲間に加わることでしょう。

ブドウ
ガーデンに実るブドウ。*
ヨーロッパ滞在で見つけたガーデニングのヒント2「スナックガーデン」をつくろう
ベリー類
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

家のすぐそば、またはダイニングやキッチンから見えて部屋からも簡単にアクセスできる庭の一角に、「スナックガーデン」をつくりませんか? 気軽に行きやすくするためには、歩いてすぐの場所であることはもちろん、ペイビングやマルチングがされた歩きやすい道でつなぐとよいでしょう。テラスやウッドデッキなどと庭の境界としてつくるのもおすすめです。

ラズベリー
ラズベリー。Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

スナックガーデンにイチオシの植物は、成長する様子を観察でき、収穫後すぐに摘み取って食べることができるもの。イチゴやトマト、キュウリ、カブ、ラディッシュ、ベビーキャロット、およびあらゆる種類のベリー類などが人気です。私のお気に入りはラズベリー。トゲに注意が必要ですが、美味しい実と可愛い花が楽しめます。こうしたスナックガーデンは、収穫できるものだけでなく、花と組み合わせて楽しむにもぴったりです。

スナックガーデン
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

気候変動の厳しいヨーロッパの節水方法

今年の夏は数週間にわたって非常に暑く乾燥していたので、節水に高い意識を持っていた人々は、芝生への水やりをストップし、菜園や食べられるものだけに水やりをするなど、水の使用を削減するようにしていました。滞在していた家もそうしたガーデンの一つ。芝生への水やりを止めたのは初めてということでしたが、青々とした緑の絨毯はあっという間に消え、1週間も経たないうちに芝生が茶色や黄色っぽくなってしまいました。大きな決断でしたが、水の使い方に関する意識も変わり、とてもよい決断だったと思います。

鉢栽培
鉢植えは日々の水やりが必須。Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

また節水の一環として、鉢植えや3つのテラスにそれぞれ置いていたバルコニーボックスを整理。私が利用していたテラスは東向きで、ほかに南向きで芝生に面したジャグジー付きの大きなテラス、西向きでテーブルと椅子が置かれたテラスがあり、それぞれの場所で育てていた鉢植えを整理したのです。その後毎朝のように彼が言うことには、「家中の鉢やボックスの水やりが、10ℓのジョウロ1つで、朝に1回、夕方に1回で済むなんて本当にハッピーだよ!」。それまで何年も、水やりには散水ホースを使ってもっと大量の水と時間を費やしていたそう。SDGsが叫ばれる昨今、仕事を最小化し、資源を守るために、こうした選択と削減は、効果的なアプローチになります。このように新しい方法に挑戦し、よい点を見つけ出すことは、いろいろなシーンで必要になりますね。

ちなみにこの乾燥期も悪いことばかりではなく、いいこともありました。土が乾燥しすぎていたために、例年芝生に盛り上がるように現れる「モグラ塚」ができなかったのです。

庭は小さな川の近くにあるため、小鳥がたくさんいて、生き生きとして素敵でした。ちなみに蚊はどこにいるか分からず。刺されなかったのが不思議です。また、ハチも数匹見かけましたが、みな無害なミツバチでした。

開放的で整ったオランダガーデン

オランダの庭
オランダの家と裏庭の一例。Procreators/Shutterstock.com

ドイツに数日滞在した後、さまざまな庭園を見るために、オランダの友人の家へ。

小さな町の緑豊かなエリアにある友人の家は、茶色のレンガでつくられた典型的なオランダ風の家です。通りと歩道の間には緑地があり、道には木々が並びます。この通りの各家には、家の裏側にそれぞれ100~200㎡ほどの広大なバックヤードガーデンがあり、ちょっとしたエントランスガーデンもありました。この地域の庭はほとんどの場合、とてもよくデザインされて手入れも行き届いているように見えました。

低い生け垣
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / NouN

エントランスガーデンは高さ50~70cmほどの低い生け垣で囲まれ、この小さなスペースには、ギボウシや紅葉したイロハモミジ、アジサイ、その他の半日陰に向く多年草が植栽されていました。その間には土をカバーするために砂利が敷き詰められています。とてもきちんとした庭ですが、昆虫にとってはあまり面白くないかもしれません!

バックヤードの素敵なガーデンには、リビングから直接テラスにアクセスできるようになっています。テラスには取り外し可能な大きなシェードがあり、南向きだったのでよく使われていました。裏庭を持つ家は、ガーデンをリビングルームの一部にするために大抵は大きな窓が使われ、庭に出なくても緑豊かなリビングを味わうことができます。視界を遮るカーテンがないのも素敵でした。

オランダの庭
Procreators/Shutterstock.com

多くのオランダの家では、通りから大きな窓を通して裏庭まで見えるのが一般的です。開放的な国民性なのでしょうか。明かりが灯る夕方には、より温かく開放的な雰囲気が漂います。

オランダのガーデンのつくりとして、基本的に大きな木が数本植わっていますが、一般に高さ3〜5mに収まるように剪定されています。庭木としては、大きな葉を持つキササゲが人気。葉が大きいので落ち葉掃除も簡単です。

ガーデン小屋
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

友人の家の庭の一番端、小さな芝生の中央には、庭道具をまとめて収納できるガーデンシェッドが。ガーデンツールが満載で、冬の間はガーデンテーブルとチェアの収納スペースにもなります。見た目も可愛らしいので、近所で人気の散歩道である公共の歩道と、それに沿って流れる小さな川との仕切りとしても優秀です。庭と道路の境界は、片方はニオイヒバの生け垣で、もう片方は木製フェンスで仕切られていました。

ヨーロッパブナの生け垣
低く刈り込まれて生け垣に利用される銅葉のヨーロッパブナ。Wiert nieuman/Shutterstock.com

庭の入り口やアプローチによく取り入れられるヨーロッパブナは、約50cmほどとコンパクトに保たれ、エリアを縁取るために使われています。

日本では、生け垣は庭を通りや隣家から隔てるためによく使われますが、オランダの前庭では、庭のアプローチを縁取るために利用されて、とてもすっきりと整った印象を与えるために一役買っています。ちなみにバックヤードガーデンでは、日本と同じように庭の境界を示すために使われていますよ。

異なる国のガーデンには、それぞれたくさんのアイデアや物語があります。秋にはヨーロッパ流のガーデニングのヒントをもっとお伝えする予定です。ぜひ変化を恐れず、いろいろなことに挑戦してみてくださいね。

Credit
文&写真(*) / Elfriede Fuji-Zellner - ガーデナー -

エルフリーデ・フジ・ツェルナー/南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子供向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。

Photo/ Friedrich Strauss Gartenbildagentur/Stockfood

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