90年の歴史を誇る日本プロ野球。これまでに数多くの選手が活躍してきましたが、そうした一流選手たちをまとめ上げるのが各チームの「監督」です。中でも今回は個性豊かな「外国人監督」に注目してみました。
1リーグ時代を含め、これまでのプロ野球で外国人監督が指揮を執ったのは12人。選手を分け隔てなくフラットに見て、純然たる実力主義を貫く傾向があるため、外国人監督が就任するとそれまで低迷していたチームが活性化して、強豪チームへと生まれ変わったという例も多数存在します。また、ユニークなアイデアを持つ人物が多いためか、采配にもその監督のカラーがかなり出やすいというのも特徴として挙げられます。
そんな「外国人監督」の中で「歴代最強」はいったい誰なのか?
今回、全国のプロ野球ファン100人にアンケートを実施し「歴代最強だと思う外国人監督ランキング」を作成。その結果をご紹介します!
なお、「最強」の定義は勝利数などの成績だけでなく、投票者に委ねていますので、投票理由も多岐にわたります。
一体、誰が「歴代最強・外国人監督」に選出されるのか……。投票結果を見てみましょう!
【第3位】トレイ・ヒルマン(14票)
第3位にランクインしたのはトレイ・ヒルマン監督です。
ヒルマン監督は北海道日本ハムファイターズの監督を5シーズン務め、2006年にはチームを25年ぶりのリーグ優勝、そして前身球団である東映フライヤーズ以来44年ぶり、親会社が日本ハムに替わってからは初の日本一を成し遂げたことでも知られています。
また、1985年にクリーブランド・インディアンズ(現:ガーディアンズ)と契約してプロ入りするも、現役時代はメジャーに昇格することなく3シーズンで現役を引退。ニューヨーク・ヤンキース傘下のマイナーチームの監督として10年以上指揮を取り、2003年から日本ハムの監督に就任します。
就任した当時のチームはBクラスの常連。就任初年度の2003年はメジャー仕込みのバントを軽視した作戦が裏目に出てしまって5位にとどまりましたが、北海道に本拠地を移転した2004年はメジャーリーグから復帰した新庄剛志選手を中心にしたチームを構成して、Aクラスとなる3位に食い込み、北海道のファンたちを大いに盛り上げました。
それから2年後の2006年、主砲・小笠原道大選手を筆頭に、ヒルマン監督が就任して以降に獲得した新庄選手、稲葉篤紀選手、岡島秀樹投手が活躍。さらにプロ2年目を迎えたばかりのダルビッシュ有投手が2桁勝利をマークするなど急成長を遂げてチームは25年ぶりのリーグ優勝を達成。迎えた日本シリーズでも中日ドラゴンズを4勝1敗で破り、44年ぶりの日本一達成。そして翌2007年もリーグ優勝を飾るなど、在籍5年間で日本一1回、リーグ優勝2回という素晴らしい結果を残しています。
プレーオフを制した際、そして日本一に輝いた直後のインタビューで「シンジラレナ~イ!」という言葉を連発。これが2006年のユーキャン新語・流行語大賞のトップ10入りを果たしました。
ちなみに就任初年度はメジャー流の采配を重視していたヒルマン監督でしたが、日本一に輝いた2006年、チームはリーグ最多となる133犠打を記録。メジャー流にこだわり過ぎず、日本のスタイルを取り入れるという柔軟性もヒルマン采配の特徴と言えるでしょう。
メジャーの派手な野球ではなくて、ランナーが出たらバントを徹底したり細かい野球を根付かせて日本ハムファイターズを44年ぶりの日本一に導いたから。(32歳・女性)
2006年にチームを日本一に導いた手腕は凄いと思います。北海道が好きなようで地域イベントに参加される一面も好感が持てます。(39歳・男性)
周りのコーチのアドバイスを聞きながら、しっかりとした指揮を取り、チームの成績も上がったのが良い。(60歳・女性)
【第2位】アレックス・ラミレス(21票)
選手としてはヤクルト、巨人、DeNAで活躍したアレックス・ラミレス監督が2位にランクイン。
外国人選手としては史上初となる通算2000本安打を達成するなど、長きにわたりプロ野球界で活躍しました。
ラミレス監督がDeNAの監督として指揮を取ったのが2016年。それまで最下位が指定席という低迷期を迎えていたチームを率いていきなり3位に入り、クライマックスシリーズに進出しました。
翌2017年もシーズン順位こそ3位だったものの、クライマックスシリーズでは2位阪神タイガース、そして圧倒的な強さでリーグ優勝を果たした広島カープを次々に撃破して、なんとセ・リーグの代表として日本シリーズに出場。惜しくも日本一には届きませんでしたが、福岡ソフトバンクホークスを相手に互角の戦いを見せてくれました。
その後もラミレス監督は就任5シーズンでAクラス入りを4回達成。ペナントレース1位の経験や日本一経験こそないものの、低迷していたDeNAを変えた存在として今でも根強いファンがいるほどです。
ラミレス監督の采配の特徴はズバリ、圧倒的なデータの有効活用。相手投手を得意としている選手を積極的に起用し、チャンスを与えるという選手起用は選手たちのやる気を底上げする効果があったといえるでしょう。
ラミレス監督になってからベイスターズの選手のスキルが数段上がった。おそらく、ラミちゃんが選手達をその気にさせることが上手い証拠だと思う。(49歳・男性)
とにかく選手想いで常に念頭に置いており、チームにおける雰囲気づくりやコミュニケーションの取り方など日本人監督にない角度からのアプローチで選手からの信頼度もあったように思うからです。ありがとうございました。(49歳・女性)
オフェンスだけではなくディフェンス面においてもデータを使い色々な戦術を駆使できるから。(41歳・男性)
外国人監督であんなにファンから愛された監督は他にいないと思うから。(33歳・女性)
【第1位】ボビー・バレンタイン(56票)
約6割の票を集めてぶっちぎりの第1位となったのはボビー・バレンタイン監督でした。
千葉ロッテマリーンズの監督に2度就任し、2005年にはパ・リーグのプレーオフを勝ち上がりリーグ優勝、そして日本シリーズ4連勝でチームを日本一に導きました。
テキサス・レンジャーズの監督としても手腕を発揮したバレンタイン監督が最初に日本にやってきたのは1995年。当時Bクラスの常連チームだったロッテ。経験の少ない若手選手を積極的に起用し、選手たちが持つ潜在能力を引き出して、チームを10年ぶりとなる2位に押し上げました。
しかし、当時のGMとの確執が表面化してしまい、バレンタイン監督はわずか1シーズン限りで退団。バレンタイン監督の采配によって強くなったチームは96年以降、またも低迷期を迎えてしまいます。
そんな中、2004年、再びバレンタイン監督はロッテの監督に。就任初年度の2004年は4位止まりでしたが、それでも勝率は9年ぶりに5割に乗せると、就任2年目の2005年には西岡剛選手、今江敏晃選手などの若手選手たちが続々とひとり立ち。この時期に台頭した選手たちは“ボビーチルドレン”と称されるほどの活躍を見せ、レギュラーシーズンを2位で通過しました。
勢いに乗ったロッテはプレーオフでもレギュラーシーズン1位のソフトバンクを力でねじ伏せて日本シリーズでは阪神と対戦し日本一に輝くと、さらに日本シリーズ終了後に行われたアジアシリーズも制し、ロッテは初代王者に輝きました。
バレンタイン監督の采配の特徴はなんといっても選手の多様な起用。故障して大成しなかった自身の経験をもとに投手陣は先発ローテーションを組むだけではなく、投球数に制限を付け、さらにブルペンに待機するリリーフ投手の必要のない投げ込みを禁止に。これにより、ロッテ投手陣の故障者が激減しました。
野手もその日によって起用するメンバーをガラッと変えることは日常茶飯事。ほぼすべてのポジションに複数の選手を充てることで選手たちの競争意識を強め、当時は珍しいとされていた捕手を投手によって分けて起用、さらに「つなぐ4番」に代表されるクリーンナップを2組作るという独特の采配・起用法はボビーマジックと称され、チームを勢いに乗せました。
選手をやる気にさせるのが非常にうまい監督で、選手と一丸になって戦って高い勝率を残した印象のある監督です。ファンサービスもうまくて人気も高かったので歴代最強だと思います。(39歳・男性)
初の日本シリーズ優勝外国人監督になったから。メジャーリーグ流を取り入れて31年ぶりのリーグ優勝に導いた「ボビー・マジック」と言われた采配は新鮮で楽しかった。(58歳・男性)
2005年にロッテを31年ぶりの優勝に導いた監督です。ロッテファンだけでなく、セ・パ問わずプロ野球ファンなら、その采配の素晴らしさで知られています。試合で起用する選手を毎回変えることでも知られており、MLBの野球を日本で実践した歴代最強の外国人監督だと思います。(47歳・男性)
弱小球団であった千葉ロッテを強くした。守備を重んじる選手起用・獲得もあり、コツコツ強くしていった印象もあるが、何よりも選手のメンタリティが変わったと思う。監督主導でチームが注目を浴びたことで、結果的に選手一人一人に見られているという意識が生まれチームが強くなったと感じます。(41歳男性)
ロッテを優勝に導いたから。表現力がすごく抗議の場面なども印象的で先頭にたってチームを引っ張っていた印象があります。(29歳・男性)
4位以下の選手とコメント
マーティ・ブラウン(8票)
チームの成績は残せませんでしたが、当時ボロボロだったカープの中継ぎのローテーションを行ったり投手整備の着手をしてくれたりしてくれて、また審判への抗議でベース投げを行うなどのパフォーマンスが熱かったので。(49歳・男性)
ジョー・ルーツ(1票)
審判とのトラブルから在任期間はごく短いものとなったが、大胆なチーム改革で万年Bクラスの広島東洋カープを創設以来の優勝へと導き、その後の黄金時代の土台を築いた手腕を評価。(48歳・男性)
結果はこちら
バレンタイン監督が圧倒するという結果になりました。惜しくもTOP3入りはなりませんでしたが、4位となったのは8票を集めたマーティ・ブラウン監督。「ベース投げ」に代表される過激なパフォーマンスで知られていますが、中継ぎ投手陣を整備した手腕が評価されました。
そして1票だけでしたが、実質第1号の外国人監督であるジョー・ルーツ監督もランクイン。シーズン途中に退団してしまいましたが、広島カープの初優勝の道筋を作ったことが注目されています。
現在、外国人監督はいませんが今後率いる可能性は十分あるのでその時がきたらぜひ彼らの采配に注目していきましょう。
調査方法:インターネットサービスによる任意回答(記述式)
調査実施日:2024年1月16日
調査対象:全国の20~70代
有効回答数:100
※記載している回答は原文ママ
※2024年1月14日時点での情報です。記事内の画像はイメージです。
※敬称は「監督」「選手」で統一しています。
※サムネイル写真出典:PIXTA