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「佐々木朗希」は「山本由伸」の"462億円を超える条件"とは?人気野球ライターが解説

  • 2023.12.28
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写真:AP/アフロ

メジャーリーグの世界で、“日本人選手”の価値が高騰しています。今オフ、大谷翔平選手が10年総額7億ドル(約1000億円)、山本由伸投手が12年総額3億2500万ドル(約462億円)でドジャースと契約。2人の日本人がメジャー史に残る大型契約を勝ち取りました。

すでにメジャーの舞台で実績を残している大谷選手は別格として、山本投手は日本でのプレー経験しかなく、この大型契約は現地でも驚きを持って報じられました。

そこには当然、近年の日本人選手のメジャーでの活躍が大きく影響しています。大谷選手を筆頭に、ダルビッシュ有投手、千賀滉大投手、吉田正尚選手、鈴木誠也選手らがチームの主力として活躍。これにより「日本で一流の結果を残した選手はメジャーでも通用する」という認識が各球団に共有され、たとえメジャー経験がない選手であっても巨額の契約を勝ち取ることができるのです。

当然、メジャー各球団は日本球界に大きな注目を寄せています。「第二、第三のダルビッシュ、大谷の獲得」を目指すチームが、今後も日本人選手との大型契約を目指す流れはしばらく続くでしょう。

メジャーから熱視線を送られる"令和の怪物”

そして現在、メジャーからも熱視線を浴びているのが、ロッテの佐々木朗希投手です。「令和の怪物」と呼ばれる佐々木投手は、日本人最速165キロを誇る剛速球と、鋭く落ちるフォークを武器とする22歳の右腕。

昨季は日本プロ野球史上最年少の完全試合を達成し、同試合では1試合19奪三振のプロ野球タイ記録13連続奪三振のプロ野球新記録を樹立しました。

本稿では、もしも今後、佐々木投手がメジャー移籍を目指すことになった場合、今オフの山本投手クラスの大型契約を結ぶ可能性はどれくらいあるのか?そして、それを実現するためには何が必要なのかを考察してみようと思います。

佐々木朗希投手はどれくらいの評価を得られるのか?

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写真:UPI/アフロ

まずは「ポテンシャル」。この点に関しては、佐々木投手は十分すぎるモノを持っています。メジャーでは残した結果=数字だけでなく、投げるボールのクオリティそのものを評価する傾向があります。その点、佐々木投手のストレートとフォークのクオリティは現時点でもメジャーでトップレベルにあると言われています。今後大きなケガさえなければ、「能力そのもの」が契約の障害になることは考えにくいでしょう。

次に「実績」です。この点に関しては、佐々木投手はまだ未知数と言えます。今季でプロ生活4年を終えた佐々木投手ですが、現時点で規定投球回に到達した経験は一度もありません。プロ1年目は公式戦登板ゼロ、一軍デビューを飾ったプロ2年目の2021年も間隔を空けながら11試合、完全試合を達成した2022年も登板間隔を空け、球数にも細心の注意を払って育成されてきました。

WBCにも出場し、本格的に先発ローテ投手として稼働するかと思われた今季もわき腹のケガなどがあって15試合登板にとどまっています。ちなみに、山本投手はプロ1年目に一軍デビュー、2年目にリリーフで54試合登板、プロ3年目に先発転向して規定投球回をクリアすると、そこから今季まで5年連続で先発ローテを守り抜いています。以下はプロ4年目終了時の佐々木投手、山本投手の成績になります。


佐々木朗希(プロ4年目終了時点)

46試合 19勝10敗 283回2/3 奪三振376 防御率2.00


山本由伸(プロ4年目終了時点)

97試合 21勝13敗 346回2/3 奪三振342 防御率2.41


4年目終了時点では勝ち星や投球回は山本投手が、奪三振と防御率は佐々木投手が上回っています。

しかし、山本投手はプロ5年目以降にさらに飛躍。今季までプロ野球史上初となる3年連続投手四冠(最多勝、最優秀防御率、最高勝率、最多奪三振)、沢村賞、MVPを受賞しています。

佐々木投手も5年目となる来季は、本来持っているポテンシャルを「結果」へと昇華させることが重要になってくるでしょう。

最後は「年齢」です。実はこれが一番重要かもしれません。というのも、メジャーでは大型契約を結ぶ場合、その年齢が大きく影響してくるからです。山本投手が12年という長期契約を結ぶことができたのも、年齢がまだ25歳と若く、契約満了時点でもまだ37歳だから。もし、山本投手のメジャー移籍が1年、2年遅れていたら、契約内容は変わってきていたはずです。

ちなみに、25歳未満の選手はメジャーのルールで契約金額に上限が設定され、大型契約を結ぶことはできません。23歳で渡米した大谷選手が、それに該当します。

つまり、日本人がメジャー移籍をする場合、もっともベストなタイミングは年齢制限が解除され、なおかつ一番若い「25歳」となるわけです。

しかし、佐々木投手が山本投手と同様に25歳でメジャー移籍を目指そうとするのであれば、所属球団のロッテの許可を得てポスティングシステムでの移籍を探す以外、現行ルールでは道がありません。

ポスティングは自由に移籍先を選択できるフリーエージェントとは違い、あくまでも球団が「OK」を出してはじめて成立するモノ。となると当然、佐々木投手が25歳になる時点で球団から許可をもらえるだけの材料が必要になります。

佐々木投手がポスティングが認められるために必要なコト

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写真:PIXTA

ひとつは前述にあるような実績。数字を残して、球団に貢献することでポスティングでのOKを引き出しやすくなります。

 そして、もうひとつ――。それが、「チームの優勝」です。

プロ野球はあくまでもチームスポーツとして優勝を争う競技。個人でいくら結果を残しても、チームが優勝できなければポスティング許諾を得にくくなるのも事実です。

たとえば大谷選手も、吉田選手も、鈴木誠也選手も、千賀投手も、そして山本投手もNPB時代に主力としてチームを優勝へと導いています。

ポテンシャルだけであれば「日本球界史上最高」とまで言われる佐々木投手。今後、彼が海を渡ってメジャーで活躍するためには、個人の結果だけでなく、チームの「優勝」という形も求められるかもしれません。


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1983年、神奈川県生まれ。編集プロダクション勤務を経て、2015年に独立。ライター、編集者として年間50人以上のアスリート・著名人にインタビューを行い、野球を中心に大相撲、サッカー、バスケットボール、ラグビーなど、さまざまなジャンルのスポーツ媒体で編集・執筆。著書に『あのプロ野球選手の少年時代』(宝島社)『オリックス・バファローズはいかに強くなったのか』(日本文芸社)がある。

※現在のレートは1ドル=145円で換算。
※本記事は、2023年12月27日執筆時のものです

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