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『ブギウギ』で俳優デビューした黒崎煌代「六郎ロス」が巻き起こった理由

  • 2023.12.11

この世では定期的に「〇〇ロス」が勃発する。2023年11月から12月にかけて日本を覆った〇〇ロスの一つに、「六郎ロス」があるだろう。趣里が主演を務める連続テレビ小説『ブギウギ』にて、主人公・スズ子の弟である六郎を演じていた黒崎煌代(くろさき・こうだい)。彼の元へ赤紙が届き、やがて、残された家族の元へ戦死の報せが届く。

六郎ロスが巻き起こった理由

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レプロエンタテインメント提供

黒崎煌代は、あまりにも自然だ。

2022年におこなわれた役者オーディションにて、約5000人のなかから選ばれデビューを果たしたのが、彼の役者人生の始まりである。その後、オーディションで『ブギウギ』ヒロインの弟役を得た。花田六郎は、もはや彼にしか演じられなかったと思うほど、どこまでも自然だった。

黒崎が六郎にしか見えないのは、少々メタ的な見方をしてしまえば、彼に余計な色やイメージがついていないからだろう。

彼には過去作がない。多くの人が『ブギウギ』の六郎役で、初めて黒崎の演技を見ることになる。この状況は強い。素朴な仕草とあどけない物言いは、どこから見ても六郎でしかなかった。

両親が営む湯屋を手伝う姿、いつも絶やさない笑顔、カメを世話するときの幸せそうな表情に、スズ子を「ネエヤン、ネエヤン」と呼ぶ可愛らしい様子。多くの人が、黒崎演じる六郎に癒されていた。

黒崎煌代という役者の凄さが垣間見えたのは、六郎に赤紙が届いた瞬間の喜びよう、そして、いざ出征する前夜に「死に対する恐怖」をスズ子に打ち明けたシーンだ。

大げさすぎず、かつ「六郎なら無邪気に喜んだまま戦地に向かうのでは」という視聴者の予想を、意外な方向から裏切ってみせた。

大抜擢に対する謙虚な姿勢

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レプロエンタテインメント提供

六郎役は、SNS上でも大絶賛されている。デビュー作でいきなりの連続テレビ小説に大抜擢、演技も好評となれば、少しくらい得意になってもいいのではないか。しかし、黒崎はインタビューで「褒められてしかいないから不安」「こういうときだからこそ地に足をつけないといけない」と語ったという。

2023年11月に公開された映画『さよなら ほやマン』では、障害を持つ阿部シゲルを演じている黒崎。難しい役柄に対しても、シゲル自身がどんな思いで、どんな葛藤を抱えながら生きていたのかを思いめぐらせながら臨んだ。

絶賛されても冷静に受け止め、かつ、すでに彼なりの役作りを掴んでいるようにも見える役者・黒崎煌代。すでに次の出演作に世間の耳目は向いているが、そんなプレッシャーにも、彼は落ち着いて向き合うのだろう。

 

※記事内の情報は執筆時点の情報です



ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter:@yuu_uu_