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『大奥』「この上ない喜びも出口の見えぬ悲しみも」瀧山(古川雄大)天璋院(福士蒼汰)家定(愛希れいか)…最終回はとにかくスゴかった

  • 2023.12.15
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(C)NHK

NHKドラマ10「大奥」最終回。宴も終わり、江戸城を明け渡す日が来た。天璋院(福士蒼汰)は、「せめて留めておきたいではないか、私たちの心の中には。これは私たちのような男たちがここにいたという証なのだから」と、最後に大奥の没実録を読み耽る。

瀧山(古川雄大)「この上ない喜びも、出口の見えぬ悲しみも」大奥が終わる日

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瀧山(古川雄大)は彼が読み終えるのを見届け、「今日より 大奥はここで過ごしたる各人の心を棲家とす」と最後に締めくくった。わかっていたことだが、必ずしもいい場所ではなかったかもしれないものの、愛おしい人々が過ごした大奥がなくなってしまうことを実感してつらい。

天璋院が着てからは瀧山が遠慮し、最後の宴の際に瀧山は着たが、家定(愛希れいか)を迎えるためのものだったからと着なかった天璋院。メインビジュアルで並んでいるものの、実際に2人が並んで着ることはなかった流水紋が大奥最後の日に並んでいるのは感慨深い。天璋院と瀧山の会話と表情が印象的だ。

「悲しみばかりであったか?そなたにとって大奥は」
「いいえ、この上ない喜びも、出口の見えぬ悲しみも」
「私もだ」

大奥を去ろうとする天璋院に、瀧山は「最後に瀧山からひとつお願いがございます。お見送りは控えさせていただいてもよろしいですか、私、涙を堪えられぬかもしれません」と告げる。妙だった。

家光(堀田真由)と有功(福士蒼汰)が御鈴廊下を歩く姿に感動

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(C)NHK

天璋院が去った後、一人御鈴廊下に向かう瀧山。家茂からさかのぼって、これまでここを歩いた将軍たち、大奥で生きた者たちの姿が浮かぶ。回想はSeason1の将軍たちにもおよび、家光(堀田真由)と有功(福士蒼汰)の姿も。この、家光と有功が御鈴廊下を歩くシーンは最終回のための新撮部分。幸せそうに歩く二人に胸が熱くなった。有功(お万の方)と胤篤(天璋院)2役を演じ抜いた福士蒼汰に、あらためて拍手を贈りたい。

今明かされる、家定(愛希れいか)の最期

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(C)NHK

異変に気づいた天璋院が大奥に戻ると、瀧山は切腹していた。対応が早かったことと、家定が死んだ後、胤篤が投げ捨て預かっていた懐中時計に刃が当たったことで命拾いしたのだった。こんなことをした理由を、大奥が哀れに思え、一緒に殉ずる者があってもいいのではと思ったこと、自分は鳥籠の中でしか生きたことのない男、広い世界で生きる術がないのではという不安を語る。天璋院は、各々みな立ち向かっていく壁なのではないかと告げる。瀧山、生きててよかった。

そこにきた医師は、瀧山が養子にした仲野の兄であり、名を黒木源一郎(宮野真守)と言った。医療編の黒木の子孫が、この時代にも生き、青沼が伝えた蘭学で人の命を救っている。その事実にもまた涙が出そうだ。

そして黒木は、家定の最期に立ち会っていた。彼女は毒を盛られたわけではなく、妊娠中の黄疸で病死だったという。自分もお腹の子も助からないと悟った家定は、家定に子を見せられなかったことを詫びた。「御台、ゆるせよ、そなたに子を見せてやることもできなかった。けど、きっと優しい子じゃ。かような母に恨み言一つ言わずともに参ってくれるのだから。きっと冥土の旅も楽しかろうて、私ばかり何だかすまぬの、御台」愛おしそうに腹を撫で、涙を流しながら笑顔で言い遺した。もう、家定に何度泣かされるのか……。悲しいが、愛する人を想いながら死んでいったと知れて、少し救われた。

嗚咽する天璋院に、黒木は声をかける。「どうか己をお責めにはならないでくださいませ。家定公はあなたに詫びこそすれ、恨んでなどいなかったのですから」天璋院の脳裏には、「そなたの人生じゃ。思うように生きよ」と言う家定の言葉が甦っていた。

未来へ向かった瀧山と天璋院

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(C)NHK

3年後、瀧山と胤篤は船に乗っていた。瀧山、洋装が似合うこと。古川のこれまでの役を思うと、こちらのほうが着慣れているだろうか。どんな格好も似合う人だ。瀧山は始めた商売が繁盛し、財産を築いていた。一方胤篤は、勉強などもしたが、家定の言うとおり好きに生きた結果財産を食い潰してしまった。雇ってくれと頼まれて嫌な顔をする瀧山だが、中澤(木村了)に3年前に命を救われた話を持ち出され、仕方なく了承。胤篤に旦那様と呼ばれ、変な顔をするのだった。ともあれ、みんな元気そうでよかった。

そして、風で飛んだシルクハットを胤篤が追うと、小さな女の子がキャッチしてくれた。彼女は最年少で留学し、女子の教育の第一人者となる津田梅子だった。「あなたはきっと将来国を動かすような大きなことをなさる」「梅様、これは誰にも内緒なのですが、あなただけにはこっそり教えて差し上げましょう。この国はかつて代々女子が将軍の座についておったのですよ」と話した胤篤。大奥のみんなと私たちの現代を繋ぐラストだった。

駆け足ではあったが、本当に毎話素晴らしい作品だった。この作品に関わったすべての方々にお礼を言いたい。そして、彼らに生き様を見せてもらった自分も、自分なりにこの世を懸命に生きたいと思った。

 

※記事内の情報は執筆時点の情報です



ライター:ぐみ
熱量高めなエンタメライター・編集者。ドラマ・映画・アイドル・アニメなどのコラムやレビュー・インタビューや書籍の執筆・編集も手がける。コンテンツ編集(人気少女漫画や芸能人の公式コンテンツ制作のほか、広告制作、メディアの編集・立ち上げなど)を経て現在フリー。音楽とアイドルと物語とかき氷が好き。X(旧Twitter):@gumililium