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『大奥』「いちいち真面目で肩凝るわ」「やめて」和宮(岸井ゆきの)が家茂(志田彩良)の言葉で嬉し泣きした本当のワケとは?

  • 2023.11.30

NHKドラマ10「大奥」Season2、19話から幕末編は後半に突入。公武合体を進めるため、家茂(志田彩良)は朝廷から和宮(岸井ゆきの)を嫁として迎え入れることに。だが和宮は女性で、偽物だったのだ。

偽物・和宮(岸井ゆきの)の正体

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(C)NHK

本物の和宮は彼女の弟だったが、幕府に嫁入りするのが嫌で首を括ってしまったのだというのだ。彼女の母親である観行院(平岩紙)や乳母である土御門(山村紅葉)から話を聞いた瀧山(古川雄大)は憤慨するが、家茂はこのことを秘密にするよう伝え、和宮に温かく接する。

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朝廷から来た者たちは慇懃無礼で、大奥の者と小競り合いとなってしまう。通りすがった瀧山は土下座して場をおさめ、今回の輿入れは幕府から頼んでのことだからと部下たちにも謝るのだった。幕府の、家茂のためなら頭も下げる瀧山、かっこいい。

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天璋院(福士蒼汰)にいい感じに言ってもらおうとする瀧山だったが、部屋に招かれた和宮は敷物もなく畳の上に座るよう言われたことに気を悪くして帰ってしまう。家茂は何か和宮が好きなものないかと思案し、お食事が好きと聞いてカステラを振る舞う。「これだったら花びら餅のほうがうまいわ」と憎まれ口を叩く和宮だが、花びら餅はどんなお菓子なのか、笑顔で興味津々に聞いてくる家茂に調子が狂い、結局美味しいと思っていることがバレてしまう。

和宮の本当の目的とは…

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(C)NHK

カステラを観行院と土御門にも食べさせる和宮。あんなに嫌味を言っていたのに、きらきらした笑顔で勧めていてかわいい。だが観行院は「本物の和宮さんに食べさせてやりたかった」と泣く。そして、どうやら本物の和宮は死んでいるわけではなく京都で生きているらしいこともわかる。

観行院は、左手がない状態で生まれてきた和宮のことを嘆き、部屋に閉じ込めていないものとして扱ってきた。部屋に来てくれることもあったが、弟である本物の和宮が生まれてからはそちらにかかりきり。土御門が和宮を気遣っている様子なのがせめてもの救いだが…。

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言ってしまえば、観行院は結構な毒親だ。それでも和宮は、そんなひどい母親にどうにか笑顔になってほしくて必死だ。家茂に頼んで金魚をプレゼントし、母が笑うのを見て嬉しそうな顔をする。はじめはあんなにふてぶてしかったのに、健気すぎて切ない。家茂とのやり取りで出てきた花びら餅も、本当は彼女は食べたことがなく、弟が食べているのを見ていただけなのかもしれないと思うとさらに切ない。

実は和宮が弟に代わってここに来たのは、母親を独り占めしたかったからなのだ。幕府に行くのが嫌で首に刃をあてた本物の和宮。観行院が幕府まで一緒に行くという話を聞いて、ならば私が代わりに行く、あんたも本当は死にたくないのだろうと自害を止めた。一緒に幕府に行くことを観行院が承諾した際の歪んだ笑みが印象深い。

それでも結局、近くにいても母親は弟のことばかり。つらいなあ。現代にもきょうだいの一人ばかりかわいがる親も、男女の男のほうを大事にする親もいるので、人間というのは業が深い。

「宮様が光だからです」家茂の言葉に涙する和宮

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(C)NHK

家茂に「私の元にいらしてくれた」「大事なかけがえのないお人」と言われて心が揺れる和宮。自分が母親を独り占めしたいがためにここに来たと明かしたのに、話を聞いた家茂は「さような思いまでなさり、まことによくぞここにいらして」と涙を流す。困惑した和宮は「自分のしょうもない企みのせいてあんたは散々な目におうてるいうことなんやで」と言うが、家茂はこう言う。

「そのしょうもない企みのおかげで、(本物の)和宮様は亡くなられずに済んでいるではないですか。私は、人死のふちに追いやらずに済んだのですよ」

「お気づきになりませんか。宮様は、知らぬうちに多くの者を救ってらっしゃるのですよ」

ここまでの道中、何か気づいたことはなかったかと尋ねる家茂。和宮はどの宿でも美味しい食事が出て、布団は温かく、綺麗な花が飾られていたことを思い出す。

「それは、民にとっても宮様が光だからです」

民にとってははた迷惑でしかない戦。公武合体はそれを避けるためのもの。住み慣れた地を離れて幕府に向かってくれた勇気ある宮様は光なのだと、家茂は続ける。

「そのお方がそこにいらっしゃる。そこにいるだけではからずも救われる人間が山のようにいる。そのようなお方を、世の光と呼ぶのだと私は思います」

「いちいち真面目で肩凝るわ」「やめて」と背を向けて床についてしまう和宮だったが、無い左手で口元を押さえ、声を押し殺して泣いていた。母親にすら無いものとして扱われてきた彼女にとって、自分の存在が多くの者、世の中にとって光だと言われたことはどんなに嬉しかっただろう。この瞬間、家茂もまた、和宮にとっての光となったのではないだろうか。

かつて阿部と家定が、阿部と瀧山が、瀧山と家定がそうであったように、お互いの光となるような関係がここにも続いていることを嬉しく感じた。そして、家茂の聡明なだけでなく、まっすぐ人に愛を向けられるところに感銘を受けた。家定の人を見る目は確かだったなと、あらためて痛感した。

家茂、男装して上洛

慶喜(大東駿介)によって、帝のご機嫌取りのために上洛することになった家茂。慶喜の「ご機嫌取り」の言い方、むかつく〜!!! 和宮に髪を切ってもらい上洛した家茂は、男装し束帯姿で帝の前に現れる。いつもの女性の姿も愛らしいけれど、男装姿も凛々しくてすてき。

次回の予告はつらい予感しかしないが、それでもみんな、幸せになってほしいと願ってしまう。

 

※記事内の情報は執筆時点の情報です



ライター:ぐみ
熱量高めなエンタメライター・編集者。ドラマ・映画・アイドル・アニメなどのコラムやレビュー・インタビューや書籍の執筆・編集も手がける。コンテンツ編集(人気少女漫画や芸能人の公式コンテンツ制作のほか、広告制作、メディアの編集・立ち上げなど)を経て現在フリー。音楽とアイドルと物語とかき氷が好き。X(旧Twitter):@gumililium