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なぜ山﨑福也が"大争奪戦"となったのか?人気野球ライターが解説

  • 2023.12.19
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11月25日、オリックスからフリーエージェント(FA)宣言していた山﨑福也投手が、同じパ・リーグの日本ハムへと移籍することが発表されました。報道によれば契約は4年総額8億円とも言われており、日本ハムにとってはFAで獲得した球団初の投手にもなります。山﨑投手の去就を巡っては、元所属先のオリックス、移籍先の日本ハムを含めた6球団が争奪戦に参戦。近年のFA市場でも稀に見る“人気ぶり”で、山﨑投手の評価がFA市場で高騰していたことがわかります。

一体なぜ、山﨑投手はFA市場でここまでの“人気銘柄”となったのでしょう。理由はいくつか考えられます。

なぜ"大争奪戦"となったのか?

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写真:PIXTA

ひとつめは、山﨑投手の今季推定年俸が6000万円で、「補償」が不要だった点。FAでは移籍した選手の年俸が元所属球団の上位3選手だった場合をランクA、4~10位の選手をランクBと定めており、それぞれに金銭や人的補償が発生します。しかし、山﨑選手は今季チーム内11位以下の“ランクC”に該当するため、金銭、人的ともに補償は発生しません。つまり、日本ハムはオリックスに何の補償も支払わずに山﨑投手を獲得できたことになります。

ちなみに、FAでの補償の内容はAランクの場合は旧年俸の0.8倍の金銭、もしくは0.5倍の金銭+人的補償選手1名。Bクランクの場合は旧年俸の0.6倍の金銭、もしくは0.4倍の金銭+人的補償選手1名となっているので、たとえば年俸5億円の選手をFAで獲得する場合、移籍先の球団は旧所属球団に金銭のみであれば4億円を支払う必要があります。これは、球団経営としてはかなり大きな額です。そのため、近年のFAではA、Bランクの超大物よりも、補償不要なCランクの選手のほうが人気を集める“逆転現象”が起きることも珍しくありません。

最大の理由

もうひとつの理由――。おそらくこれが一番大きなファクターとなっているはずですが、山﨑投手が球界でも貴重な「イニングを稼げるサウスポー」だったという点が挙げられます。

山﨑投手は今季、23試合に先発し、11勝5敗、防御率3.25、投球イニングは130回1/3をマークしました。規定投球イニングには到達できませんでしたが、過去3年間、毎年100イニング以上を投げています。ちなみに、今季のプロ野球で100イニング以上を投げた左投手は山﨑投手も含めて18人。そのうち、山﨑投手と同様に3年連続100イニングをクリアしているのはわずか7人しかいません。

近年のプロ野球界では勝ち星はもちろん、先発投手には「いかに多くのイニングを投げられるか」が求められています。分業制が確立し、先発、リリーフの役割が明確に分かれている現代だからこそ「先発すれば一定のイニングを投げてくれる」という信頼感のある投手は首脳陣から重宝されます。

プロ通算で2ケタ勝利は今季のみ、規定投球回を一度もクリアしていない山﨑投手がここまでの評価を得たのは、「コンスタントに投球イニングを稼いでくれる」能力が高かったからにほかなりません。

日本ハムは山﨑選手に最大限の評価

日本ハムは山﨑投手に対して、巨額契約だけでなくエース番号である背番号18を用意しました。また、移籍交渉では加藤貴之投手と並んで「エースとしての評価」を伝えたと言います。

山﨑投手は今季31歳。プロ野球選手としては決して若くはありません。ただ、過去の数字や希少性から、日本ハムは山﨑投手に大きな可能性を見出し、最大限の評価を下した。その誠意に、山﨑投手自身も心を動かされたのではないでしょうか。

FA移籍を果たした選手の中には、移籍先で期待通りの結果を残せないケースも多々あります。ただ、山﨑投手が近年見せている“安定感”を発揮することができれば、2年連続最下位からの逆襲を目指す日本ハムの力になることは間違いないでしょう。

FA移籍という野球人生でも最大の決断を下した山﨑投手の2024年のプレーから、目が離せません。


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1983年、神奈川県生まれ。編集プロダクション勤務を経て、2015年に独立。ライター、編集者として年間50人以上のアスリート・著名人にインタビューを行い、野球を中心に大相撲、サッカー、バスケットボール、ラグビーなど、さまざまなジャンルのスポーツ媒体で編集・執筆。著書に『あのプロ野球選手の少年時代』(宝島社)『オリックス・バファローズはいかに強くなったのか』(日本文芸社)がある。


サムネイル:PIXTA

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