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異例だった巨人のドラフト…結局「社会人野球」ってどれくらいのレベルなの?

  • 2023.12.18
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写真:PIXTA

日本の野球界は、NPB=プロ野球を頂点としたピラミッド構造で成り立っています。少年野球、中学野球、高校野球、大学野球、社会人野球といった“アマチュア野球”に、NPBとは“別のプロ野球”である独立リーグも加えた各カテゴリの中で、選手たちはプレーを続けています。

その中でも、特に人気が高いのが高校野球でしょう。毎年春と夏、2回行われる甲子園は全試合が地上波で中継され、多くのファンを虜にしています。
当然、高校野球界でスターとなった選手は、そのままドラフト指名を受けてプロ入りするのが通常の流れになります。

大学野球も高校ほどではないですが、高い人気を誇っています。東京六大学に代表されるリーグが全国に存在し、有望選手は高校同様にドラフトでプロ入りしていきます。
また、その歴史はプロ野球よりも古く、戦後しばらくまではプロ野球よりも東京六大学野球の人気のほうが高かった時代もあるほどです。

社会人野球のレベルとは?

そんな高校、大学と並んで、毎年プロ野球の世界に多くの選手を送り込んでいるのが「社会人野球」です。
正直、一般の方にはあまり馴染みがないかもしれません。社会人野球とは、主に全国の企業に所属する「野球部」によって形成されており、1年に2回、都市対抗野球全日本選手権という全国大会が開催されています。

熱心な野球ファンであれば大会の勝ち上がりや有望選手を追いかけたりもするでしょうが、2大会とも全国中継などはなく、テレビのスポーツニュースでもそこまで大きく取り上げられることはありません。ただ、そのレベルはというと、実は日本のアマチュア野球では屈指の高さを誇っています。

多くの社会人出身選手がプロ野球で活躍

たとえば今季、阪神タイガースの日本一に貢献した近本光司選手と中野拓夢選手の1、2番コンビはともに大学卒業後、社会人野球を経由してプロ入りしています。同じ阪神で言えば「恐怖の8番打者」として活躍した木浪聖也選手も、社会人出身です。この3選手はそろって今季のゴールデングラブ賞にも輝くなど、今や球界を代表する選手にまで成長しました。

もちろん、他球団にも社会人出身のスター選手は大勢います。広島のクローザー・栗林良吏投手、今季首位打者を獲得したDeNA・宮﨑敏郎選手、巨人の正捕手・大城卓三選手、ヤクルトのリードオフマン・塩見泰隆選手、西武が誇る球界屈指の守備職人・源田壮亮選手……。他にも、名前を挙げればキリがありません。

社会人出身のプロ野球選手の特徴とは?

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写真:PIXTA

社会人出身のプロ野球選手の特徴として挙げられるのが、「堅実かつ安定した成績を残せる選手」。わかりやすく言い換えれば「渋い選手」と表現してもいいかもしれません。

たとえば、大谷翔平選手佐々木朗希投手のような、「誰が見ても怪物」と分かる選手は、そのほとんどが高校卒業と同時にドラフト指名を受けてプロ入りしています。素質自体が球界トップクラスなので、高校生の時点で突出した能力を持っている、と言っていいかもしれません。

一方、社会人出身選手の場合、高卒で社会人入りした選手は3年間、大卒の場合は2年間、社会人に所属しなければドラフト指名を受けられない規定があります。つまり、多くの選手が高校や大学ではドラフト指名されなかったが、社会人で実力をつけてプロから認められた=遅咲きの選手である傾向が強いと言えます。

特に大卒から社会人に進んだ場合、ドラフトで指名されるのは最速で24歳。高卒入団選手と比較すると6年間の差があります。
18歳でプロ入りする高卒選手は「将来性」や「伸びしろ」を見込まれて指名を受けるケースがほとんどですが、大学→社会人経由で指名される場合、時間的猶予はほとんどありません。そのため、各球団は限りなく「即戦力」と判断した選手をドラフトで指名するのです。

前述の近本、中野選手などは好例で、2選手ともに1年目からいきなりチームのレギュラーとして活躍し、「即戦力」の期待に見事に応えています。

社会人野球には大谷選手や佐々木投手のような「怪物」は確かにいないかもしれません。

ただ、選手のレベル自体は日本のアマチュア野球界でも最高峰に位置します。今、社会人でプレーしている選手の中には、近い将来、みなさんの贔屓球団のレギュラーになっている選手がいるかもしれません。

地上波では見ることができませんが、社会人野球の試合もCS放送や配信で楽しむことはできます。TRILL読者のみなさんも是非一度、その目で「社会人野球」を見てみてはいかがでしょう。オススメです!


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1983年、神奈川県生まれ。編集プロダクション勤務を経て、2015年に独立。ライター、編集者として年間50人以上のアスリート・著名人にインタビューを行い、野球を中心に大相撲、サッカー、バスケットボール、ラグビーなど、さまざまなジャンルのスポーツ媒体で編集・執筆。著書に『あのプロ野球選手の少年時代』(宝島社)『オリックス・バファローズはいかに強くなったのか』(日本文芸社)がある。

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