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「現役ドラフト」の"仕組み"と"駆け引き"…第2の細川、大竹は現れるのか!?【12月8日開催】

  • 2023.12.7
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12月8日に開催される『現役ドラフト』。昨年に続き2回目の開催となりますが、今季は阪神の大竹耕太郎投手、中日の細川成也選手が現役ドラフトで移籍した新天地で大ブレイクを果たしました。

第二、第三の大竹、細川が生まれるか――。そんな注目も集める現役ドラフトですが、実はその仕組みはやや複雑。ここでは、現役ドラフトの仕組みと、各球団がどんな駆け引きを行うのか……そんな楽しみ方を解説しようと思います。

現役ドラフトの仕組み

まず、現役ドラフトで指名対象となる選手ですが、各球団が自チームから最低2選手以上を事前に「提出」する必要があります。基本的には来季の契約権利を持つ「契約保留選手名簿」に記載されている選手の中から選択する必要があるのですが、すべての選手が対象になるわけではなく、以下の選手が対象外となります。

①    外国人選手

②    複数年契約選手

③    来季年俸が5000万円以上の選手(※5000万円以上1億円未満の選手は1名のみ提出可能)

④    FA権を行使したことのある選手

⑤    FA資格保有選手

⑥    育成選手

⑦    前年シーズン後にトレードなどで獲得した選手

⑧    シーズン終了後に育成から支配下になった選手

現役ドラフトの意義は「出場機会に恵まれない選手に新たなプレーの場を与える」ことであるため、外国人選手や複数年契約を結ぶ選手、年俸が高い選手といった「主力」は対象に含まれません。また、FAで自ら移籍した経験のある選手、もしくは移籍できる選手も、同様に除外されます。合わせて育成選手や移籍したばかりの選手なども「近い将来、出場機会が増える可能性がある」という理由で除外されています。

各球団が「指名対象選手」をNPBに提出すると、そのリストは12球団に共有されます。そのうえで、各球団は獲得希望選手1名をNPBに通知します。これを「予備指名」と言います。予備指名を行う理由は、「本指名」での指名順位を決めるためです。

現出来ドラフトでは、予備指名で指名が多かった球団(=他球団から欲しいと思われる選手を提出した球団)の順に暫定指名順が与えられます。予備指名の数が同数の場合は、同年のドラフト2巡目以降の指名順が適用されます。

ここから本指名へと舞台は移りますが、指名順位はさらに複雑になります。まず、暫定指名順1位の球団が、予備指名で通知した選手を指名します。2番目に指名するのは、暫定指名順2位の球団ではなく、1位の球団が指名した選手が所属する球団になります。2番目以降は同様に選手を指名→指名された球団が次の指名を繰り返しますが、指名された球団がすでに他球団の選手を指名し終えている場合は、暫定指名順に選手を指名することになります。

大きなカギを握る"駆け引き"

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写真:PIXTA

かなりややこしいシステムですが、だからこそ「駆け引き」が大きなカギを握るとも言えるでしょう。まず、自チームから提出する指名対象選手のリストですが、もし選手を出し渋って最低限の2選手のみを提出したとします。当然、他球団から予備指名される確率は低くなります。そうなると、本誌名での指名順が低くなる=欲しい選手が獲れる可能性が下がることになります。逆に、他球団が「欲しいであろう」選手を多く提出した場合、指名順は上がるかもしれませんが、自チームの有望選手を指名されてしまう可能性が高くなります。

つまり、指名対象選手のリストを提出する際には、「他球団がどの選手を欲しがっているのか」「他球団がどんな選手を出してくるのか」「自チームのリストにどの程度の予備指名が予想されるのか」を加味しなければいけないのです。

当然、チームの戦力状況もそこには大きく影響してくるはずです。たとえば今季、日本一に輝いた阪神タイガースは戦力も充実し、若く有望な選手も多く抱えています。となると、リスクを冒してまで多くの選手を指名対象選手として提出する必要はないかもしれません。

逆に下位に沈み、戦力補強が急務かつ選手層が薄いチームは、リスク覚悟で多くの選手を指名対象選手リストとして提出し、本指名の指名順上位を狙う、というケースも生まれてくるかもしれないのです。

ただ、ここでさらにリスキーなのが前述のとおり「本指名2巡目以降は自チームの選手が指名されないと回ってこない」という点。その意味でも、可能な限り他球団から「人気がありそう」な選手を提出する必要が生まれてくるのです。

昨年行われた第1回現役ドラフトでは、大竹投手、細川選手のような成功例が生まれた一方で、わずか1年で所属先を戦力外となった選手も生んでいます。球団にとってもリスクとリターンがあるのと同様に、選手にとってもチャンスであると同時に「ここで結果が出なければ……」というリスクをはらんでいます。

とはいえ、少なからず「成功」といえる結果を残した第1回現役ドラフト。今年行われる第2回以降もこの「成功」が続くように、ひとりでも多くの選手にとっての飛躍のキッカケになることを願うばかりです。

TRILL読者のみなさんも、各球団の結果を見ながら、現役ドラフトの結果を踏まえて「ここに至るまでにどんな駆け引きがあったのか――」を想像してみるのも、面白いかもしれません。


花田雪(Kiyomu Hanada)
1983年、神奈川県生まれ。編集プロダクション勤務を経て、2015年に独立。ライター、編集者として年間50人以上のアスリート・著名人にインタビューを行い、野球を中心に大相撲、サッカー、バスケットボール、ラグビーなど、さまざまなジャンルのスポーツ媒体で編集・執筆。著書に『あのプロ野球選手の少年時代』(宝島社)『オリックス・バファローズはいかに強くなったのか』(日本文芸社)がある。

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