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ドラゴンズはなぜ"中島"や"上林"を獲得したのか…「構想外」選手の復活劇に期待

  • 2023.12.8
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写真:AP/アフロ

来年2月の春季キャンプまで、いわゆる「ストーブリーグ」に突入しました。各球団、トレードや新外国人の獲得などで2024年シーズンに向けた戦力整備を行う時期ですが、その過程で来季の構想外となってしまう選手も出てきます。そういった選手は「自由契約」という形で球団を去ることになりますが、そこから所属先が見つかって新天地でのプレーが決まる選手、現役を引退する選手、プロ野球以外の独立リーグや社会人野球でプレーを続ける選手など、進路はさまざま。

ここでは、「構想外」となりながら他球団への移籍が決まった選手について、移籍先の球団が「なぜ、その選手を獲得したのか」「何を期待されているのか」を考えてみましょう。

中日の補強ポイント

今オフ、他球団を放出された選手を積極的に獲得している球団が中日ドラゴンズです。今季は2年連続でセ・リーグ最下位に終わり、ここ10年間を見てもAクラスは2020年の3位が1回のみ。長い低迷に苦しんでいるチーム状況からも、戦力補強が急務なのは明らか。特に長年の課題とされているのが「打撃力」。伝統的に投手力が高い中日ですが、広いバンテリンドームを本拠地としていることもあり、今季のチーム打率.234、チーム本塁打71本はともにセ・リーグ最下位。そのため、オフの補強も「打者」が中心。

巨人から獲得した中島宏之選手は41歳と年齢的にはベテランですが、西武時代には球界を代表するショートとして活躍するなど、NPB通算で1928安打を放っている大打者。今季は巨人で出番に恵まれませんでしたが、確実性とパワーを併せ持つ打力は「まだまだ期待できる」と踏んでの獲得だったはずです。

ソフトバンクから獲得した上林誠知選手はまだ28歳。一般的には野球選手として脂の乗りきる年齢ですが、2018年に打率.270、22本塁打を記録して以降、ケガなどもあって年々出場機会が減少。今季は33試合の出場にとどまり、構想が意図なってしまいました。とはいえ、ソフトバンクという球団自体が分厚い選手層を誇っており、出場機会さえあればまだまだ成績を残せる可能性は高いはず。中日は今季、「現役ドラフト」で獲得した細川成也選手がチーム最多24本塁打を放つ大ブレイクを見せたこともあり、同じように「他球団でくすぶっていた大器」である上林選手にも環境を変えることでの覚醒を期待しているはずです。

中日はこの2選手以外にも阪神を構想外になった山本泰寛選手、板山祐太郎選手(育成契約)をそれぞれ獲得。11月末時点で他球団から4人の野手を獲得していることからも、チームとして「野手の層を厚くしたい」という狙いが透けて見えます。

DeNAの補強ポイント

中日以外にも目を向けてみると、話題となったのがソフトバンクを構想外となり、横浜DeNAベイスターズへと移籍した森唯斗投手。2014年のプロ入りから2020年まで7年連続で50試合以上に登板した鉄腕で、2018年からの3年間はチームのクローザーを務め、「常勝軍団」を支え続けてきました。しかし、近年は勤続疲労の影響もあってか故障に悩まされ、登板数が減少。今季は先発転向も目指しましたがなかなか結果が出ず、オフに来季構想が意図なってしまいました。

そんな森投手に白羽の矢を立てたのがDeNA。クローザーには山﨑康晃投手が君臨していますが、近年はやや安定感に欠ける場面もあるなど、リリーフ陣の層を厚くしたいという狙いが、森投手獲得から透けて見えます。

また、今オフは今永昇太投手、トレバー・バウアー投手というエース格2投手がチームを移籍する可能性が高く、来季はこれまで以上にリリーフ陣への負担が増すことも考えられます。そういった背景からも、実績と経験豊富な森投手の獲得は、DeNAにとっては“必要な一手”だったと言えるかもしれません。

構想外選手の復活劇に期待

「戦力外」や「構想外」は実力社会であるプロ野球の世界では必ず避けて通れない道でもあります。しかし、過去にはそういった逆境から新天地で再び輝きを取り戻した選手も多くいます。一般社会でも、「環境を変える」ことで仕事にやりがいが生まれたり、自分に合った環境で実力を発揮できるようになるケースはあるはず。

プロ野球選手も、同じです。ここで紹介した選手はもちろん、来季は「構想外」となりながら他球団でプレーするチャンスをつかんだ選手の「復活劇」に注目してみても、面白いのではないでしょうか。


花田雪(Kiyomu Hanada)
1983年、神奈川県生まれ。編集プロダクション勤務を経て、2015年に独立。ライター、編集者として年間50人以上のアスリート・著名人にインタビューを行い、野球を中心に大相撲、サッカー、バスケットボール、ラグビーなど、さまざまなジャンルのスポーツ媒体で編集・執筆。著書に『あのプロ野球選手の少年時代』(宝島社)『オリックス・バファローズはいかに強くなったのか』(日本文芸社)がある。


※本記事は、2023/12/1執筆時の原稿です

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