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もしも"野茂英雄"が今のFA市場にいたら…現代トレンドにマッチする投球スタイルは驚愕の価値に…!!

  • 2023.12.3
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写真:AP/アフロ

大谷翔平選手やダルビッシュ有投手などの活躍によって、メジャーリーグでは「日本人投手」の価値が跳ね上がっています。今オフ、ポスティングシステムでメジャー移籍を目指す山本由伸投手に至っては、まだメジャーで1球も投げていないにもかかわらず、「総額2億ドル(約300億円)」クラスの契約が予想されています。

こういった評価は、過去に日本人投手がメジャーリーグで残した実績があるからこそ。そして、その礎を築いたのが1995年に日本の近鉄バファローズからメジャーリーグ、ロサンゼルス・ドジャースに移籍した野茂英雄さんです。

メジャーリーグの扉を開けたパイオニア

野茂さんは1990年にプロ入りし、1年目から4年連続で最多勝を獲得するなど一躍日本代表する投手になり、日本で5年間プレーした後、メジャーへと移籍しました。しかし、当時は現在と違って日本からメジャーへの移籍ルールが定まっておらず、野茂さんは日本球界を「任意引退選手」という形で退団。夢だったメジャー行きを決めます。

しかし、当時の風当たりは今では想像できないほど強く、「日本球界を裏切った」「日本人がメジャーで通用するはずがない」など、野茂さんのメジャー移籍を歓迎する声はほとんどありませんでした。

ただ、野茂さんはそんな逆風を実力で追い風に代えます。1年目から13勝をマークし、リーグ2位の防御率2.54、リーグトップの236奪三振をマーク。オールスター先発投手にも選出され、アメリカに「NOMOフィーバー」を巻き起こしました。これ以降もMLBで2ケタ勝利7回、奪三振王2回、ノーヒットノーラン2回と輝かしい成績を残し、MLB通算123勝は今なお、日本人投手の最多勝利記録です。

メジャーリーグの扉を開けたパイオニアとして、その実力と功績が高く評価されている野茂さんですが、実は現役時代の投球スタイルを見ると、2020年代の「最新トレンド」と重なる部分が多くあることに気付かされます。

現代野球の最新トレンドに当てはまる投球スタイル

野茂さんがメジャーで活躍した1990年~2000年代はムービングファストボール=動くボールが主流で、速く、小さく動くボールで打者の芯を外す投球がトレンドでした。しかし時は流れ、メジャーリーグの打者たちは動くボールに順応。2010年代頃から「フライボール革命」と呼ばれる時代に突入します。

フライボール革命とは、「ゴロやライナーより、フライを打つほうが長打になる確率が上がる=得点が増える」という統計が出たことで打者がこれまで以上にフライ=長打を狙うようになった事象を指します。多くの打者がスイング軌道やボールのミートポイントを「フライを上げる」ことから逆算するようになり、それまでトレンドだった「低めに動くボールを投げて打者の芯を外す」スタイルは徐々に通用しなくなっていきました。

そんな打者に対応すべく、近年メジャーの投手の間でトレンドになっているのが、「高めの4シーム」と「大きく落ちるボール」です。
高めにきれいなストレート=4シームを投げることで、アッパースイング気味の打者から空振りを奪う。芯をはずだけではなく、空振りを奪えるような大きな変化球を投げる。

これが、現代野球の最新トレンドです。そして、野茂さんの投球スタイルは、まさにこれに合致します。野茂さんは事実上、ストレートと大きく落ちるフォークの2球種だけでメジャーリーガーたちを圧倒しました。

高めのストレートと、フォークの組み合わせで三振を量産する――。まさに現代のトレンドに合致する投球スタイルです。大谷選手も、160キロ前後の直球と鋭く落ちるスプリットや大きく曲がるスイーパーを武器としていますし、今季からメジャーリーグへ移籍して12勝をマークした千賀滉大投手も、大きく落ちる“お化けフォーク”を武器としています。

"シャーザー"や"バーランダー"級の評価も

これら、現代の潮流と野茂さんの投球スタイルを考えると、「もし、野茂さんが2020年代のメジャーリーグでプレーしていたら」、もしかしたら勝ち星も奪三振も、さらに上乗せされ、投手としての評価自体もさらに上がっていたかもしれません。

現在のメジャーリーグでは勝ち星や防御率よりも、奪三振率や投げるボールのクオリティそのものを高く評価する傾向があります。
その意味で、野茂さんのボールが一級品かつ現代では当時よりも評価されていた可能性は、高いと言えるのではないでしょうか。

現在、メジャーリーグでトップクラスの投手は年俸4000~5000万ドル(約60~75億円)を稼ぐことも珍しくありません。

野茂さんも、現在のメジャーリーグでプレーしていたら、同党の評価を得ていた可能性は十分あるでしょう。


花田雪(Kiyomu Hanada)
1983年、神奈川県生まれ。編集プロダクション勤務を経て、2015年に独立。ライター、編集者として年間50人以上のアスリート・著名人にインタビューを行い、野球を中心に大相撲、サッカー、バスケットボール、ラグビーなど、さまざまなジャンルのスポーツ媒体で編集・執筆。著書に『あのプロ野球選手の少年時代』(宝島社)『オリックス・バファローズはいかに強くなったのか』(日本文芸社)がある。

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