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イチローが今FA市場にいたら…年俸はいくらになる?大谷超えは?「驚きの価値」をプロ野球ライターが予測

  • 2023.12.13
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写真:PIXTA

今オフのFA市場で最大の注目だった日本が誇るスーパースター・大谷翔平選手(29)の移籍先がついにロサンゼルス・ドジャースに決定!

報じられているプロスポーツ史上最高となる10年総額7億ドル(1015億円)という契約内容は日本国内だけでなくアメリカでも大きな話題を集めています。

さて、大谷選手だけでなく、近年世界のスポーツ選手の年収は右肩上がりの状況が続いています。ひと昔前では考えられなかったような金額を手にすることも珍しくなくなったアスリートたちですが、「もしも」過去の名選手が現在のFA市場にいたら、一体どの程度の評価をされるのでしょうか――

イチロー選手が今、FA市場にいたら…

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写真:AP/アフロ

今回はシアトル・マリナーズなどで活躍した日米通算4367安打を記録するレジェンド、イチロー選手が「2023年のFA市場にいたら……」を妄想してみましょう。

イチロー選手は2001年にオリックスからMLBのマリナーズに移籍し、3年総額1400万ドル(当時レートで約16億円、現在のレートだと約20億円)の契約を結んでいます。当時はまだ日本人野手がMLBでプレーしたことがなかった時代なのでこの条件も納得ですが、現在であればいきなり総額1億ドル超えでのMLB移籍だった可能性が高いでしょう

実際に、今季からMLBでプレーした吉田正尚選手の契約総額は5年9000万ドル。当時日本で7年連続首位打者(※現在も日本記録)に輝くなど球界最高のバッターだったイチロー選手ですから、MLB移籍を果たすことになればこのくらいの金額は動くはずです。

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写真:PIXTA

MLBに移籍したイチロー選手は1年目からいきなりリーグ首位打者、盗塁王、MVP、新人王に輝く歴史的な活躍を見せます。この活躍で、「日本人野手もメジャーリーグで活躍できる」ことが証明され、これ以降、多くの選手が日本のプロ野球からMLBに移籍するきっかけになったのです。

3年契約が終わった2004年から、イチロー選手はマリナーズと4年4400万ドル(当時レートで約48億円、現在のレートで約64億円)で契約を延長。その契約が終わった2008年からは5年9000万ドル(当時レートで約90億円、現在のレートで約130億円)の当時日本人最高額で契約を結んでいます。年俸に換算すると20億円近くという巨額契約。しかし、それからわずか10年余りでMLBの年俸相場は飛躍的に上がり、トップ選手の年俸額が4000~5000万ドル(約60~75億円)という時代に突入しています。

ではもし現在、イチロー選手がMLBでプレーしていたら……大谷選手のような超天文学的な契約を結ぶことができるのでしょうか。

結論から言うと、おそらく「MLBトップレベル」の契約は結べるはずですが、大谷選手のように「トップ・オブ・トップ」の契約は難しいでしょう。

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写真:アフロ

と言っても、決して「大谷選手のほうがイチロー選手を上回っているから」というわけではありません

まず、大谷選手の場合は野手だけでなく投手もこなす「二刀流」であること。さらに、イチロー選手はヒットを量産するアベレージタイプで、大谷選手がホームランを量産するスラッガータイプであることが、両者の違いとして挙げられます。

現在のMLBは「ホームラン」の価値が高い

ここ数年、MLBの世界では「ホームラン」の価値がより高まっています。野球の世界ではあらゆるデータが統計され、「長打=ホームランや三塁打、二塁打」と得点の相関関係が高いことが証明されつつあります。そのため、多くのバッターは今までよりも「ホームラン」を狙うようになり、逆にイチロー選手のようにヒットを狙うタイプの打者は少なくなりました。

その意味で、MLBの世界で今季44本塁打を放ち、アジア人初のホームラン王に輝いた大谷選手は、まさに時代にマッチした打者であると言えるでしょう。

一方のイチロー選手は10年連続200安打&打率3割(MLB記録)をマークするなど、MLB史上に残る安打製造機ですが、シーズン自己最多本塁打は2005年の15本。MLB在籍19年間で年間2ケタ本塁打をマークしたのは3回のみです。

その意味で、現代のMLBではイチロー選手のプレースタイルが最高評価とならない可能性があるのです。とはいえ、イチロー選手にはバッティング以外に卓越したスピードとMLB屈指の守備力があります。

「長打を打てて、盗塁もできる選手」は現代MLBのトレンドです。

現役時代、イチロー選手は「打率.220でよければ40本打てるかもしれません。でも、誰もそれを望んではいない」とコメントしたことがあります。もしこれが現実になれば、イチロー選手には『シーズン40本塁打・40盗塁』というMLB史上でも過去に5人しか達成していない記録を成し遂げるポテンシャルがあったと言えます。

そして、現代のMLBでこの記録をマークすれば、たとえ打率が低くとも年俸4000万ドル(58億円)級になっていたかもしれません。

もちろんこれは、イチロー選手が自らのプレースタイルを捨てて、ホームランにこだわったら……という仮定の話です。

ただ、イチロー選手のことです。

たとえMLBのトレンドが「ホームラン」に傾倒した現代であっても、間違いなく自らのスタイル=『イチ流』を貫き通し、そこでも偉大な記録を残したはずです。


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1983年、神奈川県生まれ。編集プロダクション勤務を経て、2015年に独立。ライター、編集者として年間50人以上のアスリート・著名人にインタビューを行い、野球を中心に大相撲、サッカー、バスケットボール、ラグビーなど、さまざまなジャンルのスポーツ媒体で編集・執筆。著書に『あのプロ野球選手の少年時代』(宝島社)『オリックス・バファローズはいかに強くなったのか』(日本文芸社)がある。

※現在のレートは1ドル=145円で換算。