私たちは学生時代に、指数や累乗の計算を学びました。
今回取り上げるのは、とてもシンプルな「0乗」に関する問題です。
0を含んだ計算は直感とは異なる計算になることが多く、数式に矛盾がないように定義されています。
「なぜこのような定義をされているのか」ということを考えることで、「数式の美しさ」を再発見できるのではないでしょうか。
シンプルがゆえに間違える人も多いので、早速問題を見ていきましょう。
問題
5⁰(5の0乗)はいくつ?
一般的に、累乗はその数を指数の数だけ掛け合わせることを意味します。
5²は、5×5
5³は、5×5×5
というように計算されます。
では「5⁰」、すなわち5を0回掛けるとどうなるでしょうか?
「0回掛けるなんて意味がない。だから答えは0だ!」と思った方、実はそれは違います!
答えは、「1」です。
解説
なぜ「5⁰=1」となるのか、この定義がどうして成り立つのかを理解するためには、「指数の性質」を理解する必要があります。
指数計算の法則として、指数を1つ減らすごとに結果がその指数で割られる、というのがあります。
5³=5×5×5=125
5²=125÷5=25
5¹=25÷5=5
この法則に従い、5¹からさらに1つ指数を減らすと、結果が5で割られ、5⁰=5÷5=1となります。
「5⁰=1」というのは、直感ではおかしな結果と感じるかもしれませんが、
実はこのように定義することで、指数の性質に矛盾することなく、計算が可能になるのです。
例えば、「5³×5²」という計算は、5が3個と5が2個のかけ算です。
つまり5が5個のかけ算ということになります。
5³×5²
=(5×5×5)×(5×5)
=5⁵
このとき、指数部分に着目すると「3+2=5」が成り立っています。
一般に、aˣ×aʸ=aˣ⁺ʸ のように、指数部分はたし算で計算が可能なのです。
では、ここで、「5⁰=0」と定義した場合と「5⁰=1」と定義した場合を比べてみましょう。
【5⁰=0と定義した場合】
5³×5⁰
=(5×5×5)×0
=0
【5⁰=1と定義した場合】
5³×5⁰
=(5×5×5)×1
=5³
5⁰=1と定義した場合、先ほどのaˣ×aʸ=aˣ⁺ʸ と同じ法則が成り立っています。
(指数部分だけに着目すると、3+0=3)
もし5⁰=0と決めてしまうと、「0乗の場合だけ、計算の仕方は例外」と新たなルールを決める必要が出てきますが、
5⁰=1とすると、今までと同じ計算規則に適応することが可能になるのです。
まとめ
「5⁰」や任意の数の0乗が「1」になるのは、数学的な法則や定義に基づいています。
このような基礎的な知識をしっかりと理解しておくことで、より高度な数学の問題にも取り組みやすくなります。
ぜひ、この機会に再確認してみてください。
文・監修:SAJIMA
日本国内外の学校、学習塾で数学・理科の講師として幼児から高校生までを指導。現在はフリーランスとして独立し、オンラインを中心に授業を展開している。子供への学習指導だけでなく、大人向けの数学講座も開講し、算数・数学の楽しさを広く伝える活動を行っている。日本数学検定協会認定「数学インストラクター」。