ガーリッシュ・ムービーの先駆けとして大ヒット！ 日本公開時に話題呼んだ“低体温系”青春映画『ゴーストワールド』

大人になることに直面する2人、うまく世界に馴染めない彼女らの分かれ道

ガーリッシュ・ムービーの先駆けであり、“低体温系”青春映画として2001年に大ヒットを記録した映画『ゴーストワールド』。今回は、11月23日より22年ぶりに劇場公開される本作について紹介する。

1990年代アメリカ、都市郊外の名もなき町。幼馴染で親友のイーニド（ソーラ・バーチ）とレベッカ（スカーレット・ヨハンソン）は、高校を卒業したものの進路を決めず、あてもなく町をぶらついては面白いことを探して過ごしている。

ある日、2人はモテないレコードマニアの中年男・シーモア（スティーブ・ブシェミ）に出会う。ダサくても独自の世界を持つシーモアに興味を持ったイーニドは、アウトサイダーとして生きる彼の”理解者”として交流を深め、奇妙な友情関係を築いていく。一方、アパートを借りるために地元のコーヒーショップに就職し、社会と折り合いをつけて自立しようとするレベッカ。同居生活を計画していた2人の間には、次第に距離が生まれ…。

監督を務めたのは、70年代のカルト・コミック「フリッツ・ザ・キャット」の原作者ロバート・クラムを描いた『クラム』（94年）などのドキュメンタリーに定評のあるテリー・ツワイゴフ。本作はツワイゴフ初の長編フィクションとなる。原作は、アメリカで「ティーンエイジャーのバイブル」として高い人気を誇ったダニエル・クロウズの同名グラフィック・ノベル。

ロサンゼルス郊外で撮影された本作は、どこまでも続くショッピングモールやファーストフード・チェーンの進出によって、次第に個性を失いつつある1990年代のアメリカの名もなき町が舞台。世界に馴染めず、いつも周囲をばかにして過ごしているシニカルな2人のティーンエイジャーが大人になることに直面し、自分の居場所を見つけようとする倦怠感に満ちた数ヵ月を描く。

2001年の日本初公開時、「ダメに生きる」というキャッチコピーが反響を呼び、当時は新しい“低体温系”青春映画として大ヒットを記録。近年では『ユーフォリア／EUPHORIA』などの作品にも影響を与え、「時代を先取りしていた」（Los Angeles Magazine）と再評価が進み、若い世代にも愛されている。

主演は『アメリカン・ビューティー』（99年）での演技が絶賛されたソーラ・バーチと、『ロスト・イン・トランスレーション』（03年）で脚光を浴び、 近年は『アベンジャーズ』シリーズにも出演するなど、いまやハリウッドを代表するスター俳優となったスカーレット・ヨハンソン。撮影当時、バーチは17歳、ヨハンソンは15歳。すぐに意気投合したという2人の等身大の瑞々しい演技をおさめた貴重なフィルムでもある。

そのほか、一目見たら忘れられないクセのあるルックスで多くのファンを持つ実力派バイプレイヤーのスティーヴ・ブシェミ、『ゴールデンボーイ』（98年）や『BULLY ブリー』（01年）などの作品で知られ、2008年に急逝したブラッド・レンフロが参加している。

また、原作者であるダニエル・クロウズは、ツワイゴフ監督と共同で脚本を執筆し、2002年のアカデミー脚色賞をはじめとして多くの賞にノミネートされるなど高く評価された。日本公開当時に劇場で見た方も、初めて見る方も、本作をスクリーンで楽しめる貴重な機会を楽しみにしたい。

『ゴーストワールド』は11月23日より全国順次公開。