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グミ派?ガム派?実はけっこう盛り上がってる「ガム商品」気になる新商品も続々

  • 2023.10.2

「かむお菓子」代表格、衝撃の交代劇

「青と緑の商品ばかり」グミに逆転されたガム、再起に欠かせぬ“反省”と市場奪還戦略とは
「青と緑の商品ばかり」グミに逆転されたガム、再起に欠かせぬ“反省”と市場奪還戦略とは

「『ガム』と『グミ』の市場規模が逆転」――。2023年上半期、そんなニュースが世間に驚きを与えました。長らく「かむお菓子」の代表格だったガムが、グミにその座を明け渡したというのです。右肩下がりが続いていたガムに対し、グミはこの2、3年で急成長。2021年、販売額で初めてガムを上回りました。一方、ガム関係者もただ手をこまねいているわけではありません。ガムの魅力を底上げすべくさまざまな施策を展開しています。果たして、これまでのガムに足りなかったものとは――?

グミイベント盛況、過去最多の商品数

2023年8月から9月に掛けて開かれた、渋谷ロフトでの「グミウィーク2023秋」。グミ好きたちが熱心に売り場を回っていた
2023年8月から9月に掛けて開かれた、渋谷ロフトでの「グミウィーク2023秋」。グミ好きたちが熱心に売り場を回っていた

2023年9月初旬。トレンドの発信地・渋谷にある渋谷ロフトでは、9月3日の「グミの日」に併せた「グミウィーク2023秋」が開催されていました。

今回で9回目という同イベントには、過去最多となる約270種類の商品が並び、年齢・性別もさまざまなグミ好きたちが思い思いの品を買い物かごに入れていました。

「カラフルな見た目のものからヴィーガンやハラール認証のものまで、グミは今非常に多様になり、一つのコミュニケーションツールになっています。客層のウイングも広がりました。幼い頃からグミに親しんでいる“グミ・ネーティブ”の子どもたちはもちろん、その親世代も一緒に食べてグミ好きになるというケースは多いようです」(同イベント統括責任者)

色も、形も、香りも、味も。パッケージのデザインまでもが多種多様。売り場を訪れていた30代の女性会社員は「グミが大量に並んでいるのを見るだけでワクワクする」と話していました。

「2021年」グミに何が起きていたのか

Googleトレンドでの「ガム」「グミ」の人気度を表したデータを基に、LASISA編集部で作成
Googleトレンドでの「ガム」「グミ」の人気度を表したデータを基に、LASISA編集部で作成

前述の通り、グミがガムの市場を上回ったのは2021年。その傾向は、ワードごとの検索推移が分かるサイト「Googleトレンド」でも見て取れます。

過去20年において、検索ワードとしてのグミが急上昇を始めたのは2021年の初頭から。ガムの3倍超もの数値を記録した同年5月は、「地球グミ」と呼ばれるグミが動画投稿アプリTikTokなどで人気を集めた時期でもあります。以降、2023年9月現在に至るまで、グミはガムに追いつかれることなく、むしろ大きく差を開け続けています。

なぜ?ガム売上ピーク時の40%以下

一方のガム。その“苦境”は、決して昨今始まったものではないようです。

日本チューインガム協会が公表している統計によると、ガムの生産量・販売額のピークは2004(平成16)年。翌05年からは下降の一途をたどり続けています。2022年は、04年比の実に37.7%にまで売上が落ち込みました。

原因はどこにあるのか。その一端が、日本におけるガムの歴史から垣間見えてきます。

ガム市場の売上6割超を占める最大手ロッテ(東京都新宿区)の資料によると、日本人の多くがガムに慣れ親しむようになるのは第2次世界大戦以降。米占領軍が携帯食品として持っていたチューインガムが、子どもたちを中心に国民に広まったことがきっかけとなります。

1954(昭和29)年、ロッテが「バーブミントガム」と「スペアミントガム」を発売。さらに「グリーンガム」や「クールミントガム」など、現在につながる定番のガム商品を次々に誕生させました。

日本ガム史の大きな転換点となったのが1980年代前半です。健康志向の高まりを背景に、新しい機能を付加した「目的ガム」が登場します。眠気を吹き飛ばす、頭をスッキリさせる、歯磨き効果がある……といった消費者ニーズがあることを踏まえ、ロッテは、眠気スッキリ「ブラックブラック」や、息スッキリ「フラボノ」などを相次いで発売しました。

この流れは90年代にも引き継がれ、シュガーレスガムなどに続いて1997(平成9)年、歯の健康に役立つ甘味料を使った「キシリトールガム」が登場します。このように機能や効果の追求を重ねたガムは、お菓子の域を超えた“機能性を持つ食品”としての路線を進んでいくようになります。

グミにはあってガムにはなかったもの

LASISA編集部の取材に答えるロッテ ブランド戦略部 チューイング企画課 主査の毛利さん
LASISA編集部の取材に答えるロッテ ブランド戦略部 チューイング企画課 主査の毛利さん

「ガムって、青と緑の商品ばっかり。正直違いが分からない」

ロッテのブランド戦略部チューイング企画課主査である毛利彰太さんは、消費者へのインタビュー調査で聞かれた言葉に衝撃を受けました。

「『グミは選べるから楽しいけど、ガムは選ぶほど種類がない』『新しいものがないから売り場を見に行かない』『ガムって機能を得るためのものでしょ?』……。ほかにもいろいろありました。あらためて感じたのは、ガムはFUNCTION(機能性)を追求するあまりFUN(楽しさ・面白さ)が抜け落ちてしまっていたのではないかという反省です」(毛利さん)

前述の通り、グミ人気の理由の一つはその多彩な見た目やフレーバー。その要素が近年のガムには欠けていたという見立てです。

毛利さんたちの読みを裏付けるような“うれしい誤算”もありました。2019年頃からX(旧ツイッター)などのSNSで「昔の板ガムを復活させてほしい」といった要望が寄せられるようになったのです。

折しも世は昭和・平成レトロブーム。2022年8月、「ブルーベリーガム」や「梅ガム」を当時のデザインに変更し、往年を思わせる復刻ガムを発売すると「懐かしい」「レトロさがむしろ新鮮」と反響が。「クイッククエンチガム」や「コーヒーガム」なども復刻発売し、いずれも10~30代の若年層を中心に大きなヒットを呼びました。

楽しさ・面白さを前面に次々商品投入

9月初旬に発売したロッテの「ふ~せんの実ボトル ワクワクみっくす!」。従来品より2倍以上大きいガム風船を作れるガムが入っている
9月初旬に発売したロッテの「ふ~せんの実ボトル ワクワクみっくす!」。従来品より2倍以上大きいガム風船を作れるガムが入っている

FUNCTIONだけでなくFUNを――。その取り組みの一環としてロッテは9月初旬、「ふ~せんの実ボトル ワクワクみっくす!」を発売しました。従来品より2倍以上大きいフーセンガムを作れるよう改良したガムが入った商品で、パッケージもピンクや黄色でカラフル。幅広い世代が手に取りたくなる世界観を意識したといいます。

発売に先立ち8月には、フジテレビの夏イベント「お台場冒険王2023」で「ふ~せんガム-1グランプリ決勝大会」を開催。また、ロッテのアイス「スイカバー」「メロンバー」そっくりの板ガム(現在は販売終了)や、90年代に大ヒットした「スウィーティガム」「マスカットガム」の復刻版など、楽しさ・面白さを前面にした話題性の高い商品を矢継ぎ早に発売しています。

復調の兆しも コロナとWBCが後押し

ロッテの板ガム。機能性を高めたものから、復刻販売したものまで幅広い
ロッテの板ガム。機能性を高めたものから、復刻販売したものまで幅広い

実は2023年現在、ガムは復調の兆しを見せています。ロッテによると、2023年に入って以降その販売額は一貫して前年比増を続けており、直近の5~8月期は前年比108.3%を記録しました(インテージ SRI+ ガム市場 2023年5月~2023年8月 推計販売規模)。

新型コロナ禍におけるマスク着用ルールの緩和(3月)や感染症5類移行(5月)などが重なり、マスクなしの対面で人と会う機会が増えたことなども後押ししたと、同社は分析します。

5類移行のタイミングには、俳優の浜辺美波さん、プロ野球ロッテの佐々木朗希投手を起用したテレビCM「今日は誰に会いに行く?」を放映。新規購入者は、10~20代男女の構成比が高かったといいます。

「ガムとグミは本来、必ずしもトレードオフの関係ではないと考えています。小腹を満たしたいからグミを食べるという人がいる一方で、集中したいときにはガムをかむ、勉強中や作業中にかむという人もいます」

「3月のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)では、選手たちがガムをかんでいたことも話題になりました。ガムならではの特長を伝えることで、市場の再拡大は十分に可能なはずです」(毛利さん)

コロナ禍の収束ムードやWBC効果、さらには最大手メーカーであるロッテのテコ入れなど、2023年はガムにとって追い風となる要素が重なっています。

グミも市場拡大を続ける中、ガムはどのような奮闘を見せるのでしょうか。久しぶりにガム売り場をのぞいてみたら、私たち消費者の興味を引く“FUN”な商品がそこには待っているかもしれません。

(LASISA編集部)

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