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ドイツ南西部の都市「シュトゥットガルト」と温泉保養地「バーデンバーデン」王道以外の魅力を調査!

  • 2023.10.2

ドイツ南西部バーデン=ヴュルテンベルク州の州都「シュトゥットガルト」。高級車メルセデスベンツやポルシェの博物館は観光スポットとして人気ですが、今回はそんな定番以外の魅力をお届けします。見晴らしのいい場所まで散策できるレトロなケーブルカーや、ル・コルビュジエが手掛けた住宅建築の博物館、郊外ではワイナリーにも訪れました。フランス国境近くにある温泉保養地「バーデンバーデン」では、カジノや人気スイーツなどスパ以外の魅力をご紹介します。

自然を身近に感じられる都会「シュトゥットガルト」

南ドイツではミュンヘンに次ぐ規模の都市「シュトゥットガルト」。メルセデスベンツを所有するダイムラー社やポルシェの本社があり、車好きの人からは一目置かれる街です。実際に高級車が走っているのを頻繁に見かけました。自動車機器や家電で有名なボッシュの本社など、機械技術の企業が多い産業都市というイメージもありますよね。

歴史的には、ヴュルテンベルク王国の都として栄え、ヴィルヘルム1世がワイン用のブドウ栽培を推進したという一面も。都会でありながら自然を身近に感じられるのは、工業と農業2つの顔がうまく混ざり合っているからなのかもしれません。

丘陵地の谷あいの盆地に市街地があるため、街は坂が多いのも特徴。地下鉄やトラム、バスなど交通網が発達しているので移動しやすく、程よい規模の都会という印象を受けました。

レトロなケーブルカーで森林墓地へ

そんなシュトゥットガルトで本格的に自然を感じられるのが、市街地の南西部にある森林墓地「ヴァルトフリートホーフ(Wald­fried­hof)」です。ここは地元の人のお散歩コースとしても人気とのことで、ガイドさんに連れて行っていただきました。

地下鉄(Uバーン)の「ジュートハイマー広場(Südheimer Platz)駅」近くから出発する小さなケーブルカーに乗って、丘の上を目指します。このケーブルカーはドイツ初の全自動ケーブルカーとして1929年の開通したそうで、現在もほぼ同じ状態の車両が使われています。木製の車両のレトロな姿に、乗車する前からワクワクです。

いざ車内に乗り込むと在りし日の面影を感じられる、アンティークな内装がお出迎え。線路は1本しかなく、途中で上下線がすれ違えるように二股に分かれ、そこからはまた1本線路を進んでいきます。

麓から山頂の駅までは約5分ほどで到着。駅は森林墓地「ヴァルトフリートホーフ」の門の目の前です。“墓地”と言っても墓石が並んでいるような一般的なイメージとは異なり、緑豊かな森のような公園で、ところどころ自然に溶け込むように記念碑のような石が置かれています。ドイツ初代連邦大統領のテオドール・ホイスやボッシュ社の創業者ロバート・ボッシュ、鉄道駅の建築を多く手掛けたポール・ボナッツなど著名人のお墓もあるそうですよ。

【ケーブルカー「ジュートハイマー広場(Südheimer Platz)駅」】

片道:1.8ユーロ(2023年9月現在)

森林の散策路まで足を延ばす

隣接するもうひとつの墓地「ドーンハルデンホーフ(Dornhaldenfriedhof)」の先は森の散策路に続いていて、さらにハイキングを楽しめます。木々に囲まれた道を歩いていると、街の中心から数分しか離れていないことを忘れてしまうくらい。4月中旬はちょうど桜の季節で、見事な桜にも遭遇しました。

坂の街ならでは!?さまざまな角度から俯瞰で街の景色を楽しめる

1時間ほど森を散策すると住宅地にでて、少し歩くと谷間の美しい景色を遠望できる公園に到着しました。ケーブルカーで上ってきたので特に勾配はなく、ほぼ平坦な道を歩いてこの景色に出合えるのは嬉しい限りです。

こちらは「レオノーレン通り展望台(Aussichtspunkt Leonorenstraße)」と呼ばれていて、Uバーン(地下鉄)の「ヴァインシュタイグ(Weinsteige)駅」からも来ることができます。

ちなみにこの地下鉄駅の近くには、「サンティアゴ・デ・チリ広場(Santiago-de-Chile-Platz)」という展望台もあり、ここからも市街地を一望できます。周囲を丘に囲まれている地形柄、いろいろな角度から街を見下ろす風景に出会えるのもシュトゥットガルトならではの楽しみかもしれません。

 

世界遺産の一部!ル・コルビュジエ建築の住宅博物館

近代建築を代表する巨匠「ル・コルビュジエ」の建築作品が、世界各地に分散する形で初の世界遺産として登録されたのは2016年のこと。東京・上野の国立西洋美術館もその一部をなし、日本でも注目を集めました。

その世界遺産の一部が、シュトゥットガルトにも! それが1927年開催のドイツ工作連盟博覧会で設立されたモデル住宅「ヴァイセンホフ・ジードルング(Weißenhofsiedlung)」の中にあります。当時、世界で活躍していた名だたる建築家17名が参加し、33棟の集合住宅を設計。そのうち、ル・コルビュジエが設計した建物は2棟あります。

現在残っている23棟の住宅群の多くは、実際に住居としても使われているので中に入ることはできませんが、ル・コルビュジエが設計した建物のひとつは「ヴァイセンホフ博物館(Weissenhof Museum)」としてオープン。見学可能です。

ミニマルながら、モダンで機能的、そしてフレキシブルなデザイン、さらに手ごろな価格帯をテーマに設計されたという「ヴァイセンホフ住宅」。ル・コルビュジエが設計した建物には、昼間は家族が集うリビングとして使われる部屋が、夜は子供と大人が別々に寝られるよう部屋を仕切れるようになっていたり、ベッドが可動式になっているなど、斬新なアイデアが取り入れられています。

屋外の住宅街も圧巻!

そして博物館の周囲には、ル・コルビュジエと並んで近代建築の巨匠と称される「ミース・ファン・デル・ローエ」や「ヴァルター・グロピウス」といった建築家たちが手掛けた建物が点在。その美しい外観を見ながら散策するのも一興です。

【ヴァイセンホフ博物館(Weissenhof Museum)】

住所:Rathenaustrasse 1, D-70191 Stuttgart

入場料:大人5ユーロ(11歳以下は無料)

丘陵地に佇むワイナリーへ

ビールのイメージが強いドイツですが、ドイツワインも世界的に大人気。質の高い白ワインだけでなく、近年では赤ワインやロゼも注目されています。シュトゥットガルトはドイツ有数のワイン産地として古くから知られ、市内にはワイン醸造博物館もあるほど。

そこで郊外に点在するワイナリーのひとつ、丘陵地の斜面一帯にぶどう畑が広がる「ディール・ワイナリー(Weingut Diehl)」へ訪れました。現在の当主は、このワイナリーに生まれたトーマス・ディール氏。一時は機械エンジニアリングの会社で国内外の企業開発に従事していたものの、その後ご両親から家業を引き継いだそうです。

若き生産者が手掛ける多彩なワイン

幼いころからワイン造りを身近に感じ、大学卒業後はフランスやニュージーランドのワイナリーで働いた経験もあるトーマス・ディール氏。持続可能性が求められるこの時代に、古くから続くワイン造りがどのように適応し貢献できるか追い求めている、情熱を持った生産者です。

ワインのバリエーションは、白、赤、ロゼ、さらにスパークリングワインなどが豊富。白ワインではリースリングやグラウブルグンダー、トロリンガーやレンベルガーの赤、ロゼのスパークリングではブラウアー ツヴァイゲルトといったドイツならではの品種も。価格は1本7ユーロから38.5ユーロまで、幅広くそろっています。

見晴らしのいい高台にあるワイナリー。トーマス・ディール氏は畑仕事をした後、ふとこの景色を見るたびに「こんな素敵な場所で働けるとは、なんてラッキーなんだ」と感じているのだとか。ハイキングルートもあるので、美しい景色を眺めながらぶどう畑を散策してみるのもいいですね。

【ディール・ワイナリー(Weingut Diehl)】

住所:Württembergstraße 203, 70327 Stuttgart-Rotenberg

優雅なムード漂う温泉保養地「バーデンバーデン」

2021年に世界遺産に登録された「ヨーロッパの大温泉保養地」の11都市のひとつ、「バーデンバーデン」。ドイツ南西部のフランス国境近くにある“黒い森”と呼ばれる森林地帯「シュヴァルツヴァルト」に近接し、山の自然を身近に感じられる地です。

かつてはヨーロッパの王侯貴族や芸術家、作家たちが滞在していたという高級保養地として知られ、現在も優雅な雰囲気が残るのんびりした可愛い街。街を歩いていると、至るところに温かい水が流れる小さな噴水があり、温泉地らしさを感じられます。

今回はそんなバーデンバーデンで、スパ以外の魅力に触れてきました。

“世界で最も美しい”と称される「カジノ」

まずは、1823年に建設されたという歴史ある「クアハウス」内にあるカジノ。鉄道開業後には、パリの貴族たちが列車でストラスブールまできて、バーデンバーデンで夏のバカンスを過ごし、カジノで楽しんでいたといいます。そのため、今でもカジノ内の公用語はドイツ語と英語のほかにフランス語を含んだ3か国語なのだそう。

ギャンブルをしなくても楽しめる!

内部は絵画や彫刻などが飾られ、天井にはシャンデリアが煌めき、まさに宮殿の中のような雰囲気。ブラックジャックやポーカーなどのカードゲームのほか、ルーレットやスロットマシンなどさまざまなゲームが各部屋で楽しめます。

男性はジャケット着用のルールはありますが、ジーンズやスニーカーはOK。女性は特にドレスコードはありません。担当者の方は「ドレスコードはあまり気にせずに楽しんでほしい!」とおっしゃっていました。

プレイをするだけでなく、カクテルを飲んだり、ラグジュアリーな空間を楽しみに来る人も多いとのことですよ。

【カジノ・バーデンバーデン(Casino Baden-Baden)】

住所:Kaiserallee 1 (In The Kurhaus), 76530 Baden-Baden

入場料:大人5ユーロ(入場は21歳以上のみ)

名物スイーツ「黒い森のサクランボケーキ」

バーデンバーデンでは、この地方の名物「黒い森のサクランボケーキ」をぜひ味わってみてください。ドイツ語では「シュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテ(Schwarzwälder Kirschtorte)」という名前です。

チョコレートのスポンジ生地とサクランボのコンポート、ホイップクリームが層をなす、見た目も美しいケーキです。チョコレート生地のしっとりした風合いに、ふんわり食感のホイップが重なり、どこか懐かしさを感じるケーキでした。

丁寧に仕上げていくプロの技を見学

クアハウス内にあるレストラン「ヘクターズ(HECTORS)」にて、パティシエ長による実演を見学させて頂きました。煮たてたサクランボにドイツ産のアルコール「シュナップス」を入れてコンポートを作ったり、クリームにゼラチンを混ぜて丁寧に泡立てていく工程など、普段は入れない厨房でプロの手さばきを見ていると、余計に食欲をそそられます。

途中の工程で、生地にクリームを塗ったりサクランボを飾る作業は、見学している人にお手伝いさせてくれる一幕も。パティシエによる実演見学クラスは、10名以上から申し込みができるそうですよ。

【ヘクターズ(Hectors)】

住所:Kaiserallee 1, 76530 Baden-Baden

シュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテ:1ピース4.5ユーロ/ホールケーキ37ユーロ(2023年9月現在)

今回の旅では、「シュトゥットガルト」と「バーデンバーデン」それぞれの地に古くから根付く、興味深い見どころに出合うことができました。次にドイツに訪れる際の旅のヒントにして頂けたら幸いです。

[all photos by minacono]

Please do not use the photos without permission.

取材協力:ドイツ観光局

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