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氷河というロマンの塊が白馬に!調査隊の現在地点について聞いてきた

  • 2023.9.30
白馬の氷河

氷河が見える村、白馬村

日本に氷河は存在しないと言われてきたが、2012年に最初に富山県の立山連峰で3つの氷河が確認されて以降、現在日本には7つの氷河がある。

氷河とは「陸上で重力によって常に流動している多年性の氷雪の集合体」(日本雪氷学会、2014年)と定義されていて、白馬村でも2019年に唐松沢雪渓が氷河であることが確認された。日本における氷河は北アルプスに集中しているのだ。

そして、氷河調査は現在も進行中で、白馬村ではさらに3つの氷河が存在する可能性があるそうだ。これって、確認されれば本当に素晴らしいこと。

岩岳マウンテンリゾートの展望台からの眺め
白馬岩岳マウンテンリゾートの展望台から4つの氷河を案内する看板ができる日は近いかもしれない。

「氷河って夏の山でもずっと残ってる雪の塊でしょ?」という認識の人も多いと思うのだが、あれは雪渓。見た目だけでは雪渓との区別が難しいのだが、簡単に違いを言うと、陸上にある雪からできた氷の塊のうち、動くものが「氷河」で、動かないものが「雪渓」なのだ。

地球が寒冷だった氷期の山岳地域では氷河が発達(拡大)したため、動く氷の河である氷河によって侵食された地形が形成されたのだ。現在見ている山の自然景観を氷の河が作り出している部分もあるというわけ。

なんてロマンがあるのだろう!でも、氷河は気候変動の影響もあり世界中で年々解けて減少し続けているのも事実。地球環境のことを知るためにも。もっと氷河に注目したい。

氷河の調査の様子
雪渓にポールを立てて1カ月・1年間の位置情報の変化を測定。(写真提供:白馬村)
掘削したアイスコア
掘削したアイスコア。解析して、氷河の形成メカニズムや形成された年代を推測する。(写真提供:白馬村)

2020年から新潟大学と白馬村が中心となって白馬連山の氷河調査が始まった。対象となっているのは「不帰沢雪渓」「杓子沢雪渓」「白馬沢雪渓」の3つ。氷の流動が確認されれば氷河の可能性があると言う。プロジェクトを率いる新潟大学の奈良間千之教授に話を聞いた。

ーー白馬村の氷河調査の状況はどうなっていますか?

「現在、杓子沢雪渓、不帰沢雪渓、白馬沢雪渓の3つの雪渓について氷河調査を行っています。地中レーダー探査により3つの雪渓は30m以上の厚さの氷体を持つことを確認しました。また、杓子沢雪渓と不帰沢雪渓で流動が確認されたため、この2つの雪渓は氷河の可能性があります。次の段階として、これら雪渓を氷河と論証するために、氷河調査に関する論文を学術誌に投稿して受理される必要があり、現在その論文を作成しています」

ーー世界中に氷河はありますが、白馬の氷河ならではの魅力とは?

「白馬の氷河の魅力は、世界の山々に行かなければ見られなかったものが町から見える距離(とても身近)にあることですね。多様な環境を持つ白馬の山の魅力に、氷河というもう一つ新しい魅力が加わり、白馬の箱庭景観を豊かにしていることだと思います」

奈良間教授の言う通り、白馬村の氷河は遠い外国の山岳地帯に足を運ばなくても見ることができるという大きな特徴がある。

もし氷河であることが確認されれば白馬岩岳マウンテンリゾートの展望スペースからは4つの氷河を眺めることができるし、杓子沢に関しては白馬駅からも見ることができるようになる。「駅から氷河が見える村」という響き!なんて素晴らしいことなのだろう。

白馬山案内人組合会長の松澤幸晴さん
白馬山案内人組合長の松澤幸靖さん。山岳スキーレース(SKIMO)の普及にも取り組む。
白馬山案内人組合のマーク
白馬山案内人組合は100年以上の歴史を持つ。
氷河
氷河も山の名も、ロマンなのだ。

氷河も山の名も、ロマンなのだ

「太古のロマンがある氷河について、山が好きな人だけではなく、いろんな人に知ってもらいたいですね。氷河にいつまでも関心を持ってもらうには近くにあるということがとても重要だと思うんです。駅から氷河が見える村なんて他にはありませんからね。氷河は観光資源や山岳環境教育に利用することができますし、日本の山岳ツーリズムのモデルケースになりえる可能性を秘めています」

氷河調査に参加する白馬山案内人組合長の松澤幸靖さんも、暮らしの場の近くに氷河があることに期待を寄せる。松澤さんは奈良間教授が高校生の頃から白馬で一緒にスキーをしていた関係でもある。

白馬山案内人組合として、日々白馬の山々の魅力を伝えている松澤さんが教えてくれたのは、白馬岳の読み方について。

村の名前や駅名や山小屋は「ハクバ」と読むのに対し、山名辞典では白馬岳を「シロウマダケ」と読むのを不思議に思っていたのだけど、「シロウマダケ」の由来は春に現れる雪形「代(しろ)掻(かき)馬」。この「代(しろ)馬(うま)」が転じて「白馬(シロウマ)」になったそう。でも、松澤さんや地元の山関係者の間では、昔から「ハクバダケ」と呼んできた歴史があるという。

「雪がかかった白馬の山並みは白い馬の姿そのものなんです。山名のルビの表記で最古の資料となる1880年の地理誌には『ハクバ』というルビが振られていますし、昔の人って現代よりもっと豊かな感性を持っていたと思うんです。そう考えると、黒くて小さな雪形に焦点を当てるより、山をもっと大きく見ていたと思うんですよね。氷河と同じように、これもロマンでしかないですよね」

雪が降ったら、また白馬村にこよう。雪がかかって白い馬に見える白馬の山を観にこないといけないな。

白馬連山
白馬村から白馬連山を望む。山頂付近に雪化粧がされると白い馬の姿が現れるそうだ。(写真提供:白馬村)
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