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10月スタート、実態は「増税」!インボイスで苦しむのはどんな人?

  • 2023.9.29
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10月から始まるインボイス制度によって最も大きな影響を受けるのは、売上1,000万円以下の個人事業主です。インボイス制度とは売手が買手に対して、正確な税率や消費税額等を伝えるために適格請求書が原則求められる制度のことです。

すでに個人事業主として仕事をしている人の中には、インボイス制度を理由とした報酬の減額を求められたり、消費税分の支払いが受けられなくなったりするなどの影響が起きています。これからインボイスに登録しようか迷っている個人事業主は、インボイス制度による影響や対策を確かめておきましょう。

■インボイス制度による売上1,000万円以下の個人事業主への影響

インボイス制度が始まると、売上1,000万円以下の個人事業主には大きな影響があります。インボイスへの登録は任意ですが、登録するにせよしないにせよ何らかの不利益がある可能性は高いでしょう。

●登録した場合は消費税の納税義務が生まれる

インボイスに登録した場合は、確定申告とは別に消費税の納税義務が発生します。消費税の納付期限は確定申告の期限とは異なり、翌年の3月末までです。

売上1,000万円以下の個人事業主は、売上金額のうち消費税分の2割を納める2割特例を2026年9月30日まで使えますが、売上の2%程度の税負担が生じます。

2026年10月以降は2割特例もなくなるため、仕入れなどでかかった金額を一定の率とみなす簡易課税制度を選ぶか、仕入れなどでかかった消費税を一つ一つ計算する一般課税制度のどちらかを選ぶ必要があります。

いずれにせよ、売上が少ない個人事業主にとっては重い負担です。個人事業主の中には税理士に申告作業をお願いする場合も考えられるため、税理士費用などの追加負担も必要になるでしょう。

●登録しない場合は報酬の減額や取引先を失うことも

インボイスに登録しない場合は、取引先から報酬の減額や契約の打ち切りを求められるかもしれません。

インボイスを理由とした一方的な要求は独占禁止法や下請法上問題になるとはいえ、仕事の質が悪いなどといった受注者側の落ち度を理由に契約が打ち切られた場合、取引先の法律違反を主張するのは難しいでしょう。

公正取引委員会は、インボイス制度を関連とした報酬の引き下げについて「双方納得の上で取引価格を設定すれば、結果的に取引価格が引き下げられたとしても、独占禁止法上問題となるものではない」との見解を示しています。

とはいえ、実際には個人事業主のほうが取引先と比べて立場が弱い場合が多いため、納得できなかったとしても取引先の要求に従うしかない人が多いでしょう。

本来なら2%程度の負担増にしかならないにもかかわらず、消費税10%分を全て払わないなどの要求をしている企業もゼロではありません。

■個人事業主がやるべきインボイス制度への対策

売上1,000万円以下の個人事業主がやるべきインボイス制度への対策は、2つあります。対応状況は取引先によって異なるので、焦って登録する前に聞いたほうがいいでしょう。人によっては、インボイスへの登録が必要ない場合もあります。

●登録する前に取引先に対応状況を聞く

まずは、インボイスに登録する前に取引先に対応状況を聞きましょう。

インボイス制度で影響を受けるのは大企業をはじめとした課税事業者だけであり、それ以外の事業者は影響を受けません。

個人から仕事を受けている場合や、取引先の企業が簡易課税制度で消費税を納税している場合は、インボイスは不要です。

取引先によってはインボイスの有無に関わらず消費税分を支払う対応をしていたり、消費税の一部を払えないかわりに単価で反映してくれたりします。インボイス関連であまりにも横柄な要求をする取引先に対しては、報酬額によっては以後の契約を断る対応も必要でしょう。

●登録しない場合はクラウドソージングサービス経由の取引を増やす

インボイスに登録しない場合は、今のうちにクラウドワークスやランサーズなどのクラウドソージング経由の取引を増やすのも一つの方法です。クラウドワークスとランサーズは、インボイスを登録していない個人事業主に対しても消費税分を支払うよう取引先に求めています。

現在クラウドワークスやランサーズで契約継続中の個人事業主は、システム手数料がかかるとしても、できる限り取引を続けておいたほうがいいでしょう。

ただし、取引先の中には消費税をこれまで通り払う代わりに、単価の引き下げを求める例もあります。こちらも要求に納得できない場合は、報酬額によっては以後の契約を断る対応も必要です。

■個人事業主がインボイスに登録する方法

個人事業主は、e-Taxまたは郵送でインボイスに登録できます。インボイスの登録はe-Taxでも1ヵ月程度かかるため、今から申請しても10月1日までに登録通知の到着が間に合わないです。対策としては、取引先へ登録が遅れている旨を伝え、登録番号が交付されたタイミングで伝えれば問題ありません。

ただし2023年9月時点の状況をみると、売上1,000万円以下の個人事業主の中には、取引先が大企業であってもインボイスを求められていないために登録しない人もいます。インボイスを登録したからといって契約を切られないとも言い切れず、登録するメリットが乏しいのも事実です。

インボイスは強制ではないので、差し迫った事情がない限り登録する必要はありません。

なお、インボイスに登録済みで取り下げたい場合は、9月30日までに取り下げ書を国税局のインボイス登録センターへ出す必要があります。思ったより売上が見込めないなどの理由で登録をやめたい場合は、早めに取り下げの手続きをしましょう。

2023年10月以降に取り消す場合は、少なくとも2023年分の消費税は支払い義務が発生します。また、2023年10月2日以降にインボイスを登録した場合、少なくとも2025年12月末までは消費税の支払い義務が発生します。

売上が1,000万円以下の個人事業主は、売上が安定しないことも多いため、インボイスの登録はより慎重になったほうがいいでしょう。

文・北川真大(ファイナンシャル・プランナー)
編集・dメニューマネー編集部

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