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成功のカギを握るのは5時~9時の過ごし方!?

  • 2023.9.28

朝8時の目覚ましをギリギリまでスヌーズしても、午後にならないと調子が上がらない人にとっては、仕事をはかどらせるために毎朝4時間早く起きるなんて、考えただけで恐ろしい。

でも、TikTokでは9時5時ならぬ“5時9時”のルーティンが生産性を上げるとして大きな話題。“私の5時9時ルーティン”というキーワードで生産的・健康的な取り組みを見せる動画は、再生回数が890万回を超えている。また、このトレンドは夜型の人にも対応しており、夜5時~9時のルーティンでもOKとされている。

いずれにせよ、このトレンドは賛否両論で、各動画のコメント欄には仕事が超はかどるという歓喜の声と同じだけ、バーンアウトの原因になるのではないかという懸念が寄せられている。イギリス版ウィメンズヘルスから詳しく見ていこう。

5時9時で頑張ることのメリット

レイチェル・ハンフリー(40歳)にとって5時から9時の時間帯の活用は、エクササイズ、PR会社の経営と子育てを両立させる唯一の方法。「私はロックダウン中に5時9時の効果を知りました。家族の誰より早く起きれば、精神的に追い詰められた感じがしないと親友が教えてくれて。この時間なら誰にも邪魔されることなくやり残したことを片付けられるので、物事の滞りがなくなります。それで精神的な負荷が減り、数週間もすると、すごく調子が良くなってきます」

米国心理学会の調査結果によると、惰性から抜け出すためには、日中の勤務時間の前後に仕事から離れ、別の役割を果たすことが重要。この調査では、朝は脳が“心理的な境界線”を張ってくれるので、仕事モードに入りやすいことも分かった。つまり、早朝のルーティンは本当に生産性を高めるということ。

「私たちには、その日その日で思っている以上のことができる。私がその証拠です」と話すのは、自分の知識と経験をもとに健全な生産性に関する教育を行い、5時9時のルーティンづくりを提唱している米オックスフォード大学ナフィールド・プライマリケア・ヘルスサイエンス学部のアダク・アグワノビ博士。ミュージシャンおよび経営者として活躍しながら4つの学位を取得して、生産性とウェルビーイングに関する本を書くアグワノビ博士は間違いなく5時9時の成功例。

アグワノビ博士は“ポモドーロ・メソッド”で5時9時の生産性を高めている。このメソッドは25分仕事にガッツリ集中したら、5分休んで体に良いことをするという作業構造。博士自身は音楽とダンスでクリエイティブに休憩時間を過ごすそう。

この楽しさこそ、アグワノビ博士にとって5時9時が辛くない理由であり、知られざる成功の秘訣。「私は好きなことをする時間を増やして、日常にうまく組み込むべきだと思っています」とアグワノビ博士。「好きなことを仕事にすれば一生働かなくて済むという格言があるように、副業を楽しむのはバーンアウトを避ける上で重要な要素です」

5時9時で頑張ることのデメリット

もちろん、みんながみんな5時9時のコンセプトに魅了されているわけじゃない。自分がボスになった瞬間、多くの女性は仕事にまみれ、自分に異常な生産性を求めたり非現実な期待をしたりするという声もある。

5時9時のルーティンには、それが副業であろうとエクササイズであろうと集中力が求められる。仕事の前に瞑想して日の出を眺め、何キロも走った上にストレッチしてシャワーを浴びて手の込んだ朝食まで作り、仕事が終わったら終わったで副業やワークアウト、手の込んだ夕食の準備に精を出す。このようなトレンドは自分と人を比べる要因になるし、仕事で結果を出しつつも睡眠時間を確保するだけで精一杯の人に出来損ない感を与えてしまう。

バーンアウトが蔓延する中、生産的な暮らしを美化して、睡眠や休息を犠牲にしてまで働くことを推奨するトレンドには問題がある。変革を推進するコンソーシアムFuture Forumの調査によると、現在のバーンアウト率はコロナ禍以上に高く、労働人口の42%は心身共にクタクタ。英国民保険サービス(NHS)も「24時間365日“ずっとオン”の現代社会で、私たちは1日に多くを詰め込みすぎています」と警告している。そんな中、5時9時のルーティンは「もっと多くのことがしたい」という私たちの欲望を煽るような気がしてならない。

認知神経科学者でビジネス心理学者のリンダ・ショー博士によると、予定を詰め込みすぎるのは危険な行為。「いつも“オン”の状態でいるのはよくありません。体内のシステムは複雑に絡み合っているので、体の健康と心の健康を切り離して考えることは不可能です。大きなストレスを感じていると、闘争・逃走モードから抜け出せなくなり、常に気を張った状態で過ごさなければならなくなります。その結果、胃腸や血圧に問題が生じることもあります」

さらに、腫瘍学専門誌『International Journal of Cancer』掲載の研究結果は、仕事のストレスで肺がん、大腸がん、食道がんのリスクが高くなることを示している。

そのため、ショー博士はTikTokの動画とは全く違う5時9時の使い方を勧めている。大事なのは収入や上司の機嫌ではなく、自分の心身の健康にフォーカスすること。「仕事の前後の時間はセルフケアに充てるべきです」

残業する人の大半は、美容のためではなく、そうするしかないからしているということも忘れてはならない。3児の母で個人事業主のジェイン・デヴォス(41歳)はフルタイムで働いているけれど、昨今の生活費危機で家計は依然として厳しい状態。そのためジェインは5時9時で残業代を稼ぎながら、3人の子供(そのうちの1人は自閉症スペクトラム障害)と両親の面倒を見ている。

「SNSを見ていると、毎日ちゃんと下ごしらえからして豪華な夕食を作らなければならないような気がしてきますが、働くママには無理なことです。生活費の高騰で残業代を稼がなければならなくなり、リラクゼーションや家族団らんに充てる時間が減りました」と語るジェインにとって5時9時は、“あったらいい時間”ではなく“ないと困る時間”。「日中の仕事だけでは生活費がまかなえない女性のために、追加の仕事も確保しました」

5時9時の理想的な過ごし方

それでもやはり仕事以外の時間は、できるだけ有効に使いたい。5時9時の理想的な過ごし方とは?

ちゃんと寝る

朝と夜の5時9時を有効活用するために睡眠を犠牲にしても良いことは1つもない。アグワノビ博士も「寝不足のような心身の健康に悪いことを美化するべきではありません」。朝5時に起きたいのなら、8時間の睡眠を確保するため夜9時にはベッドに入り、夜の5時9時を刺激的な仕事ではなくリラクゼーションやストレス解消に充てるべき。米国立睡眠財団によると、就寝前のスクリーンタイムはメラトニンの産生を妨げる。逆に、それを避ければ目が冴えて眠れないことも減り、睡眠の質が改善する。

ジャーナリングをする

アグワノビ博士にとってジャーナリングは5時9時の大事な一部。「ジャーナリングを通して自己認識を高めるのは、心身の健康を維持するための方法の1つです」。米国心理学会の論文も、書くことで目標を可視化して進捗を振り返るのは、ひらめきを得たりモチベーションを高めたりする上で有効としている。

体を動かす

忙しい人は仕事のためにワークアウトを犠牲にしがち。でも、ワークアウトのために早起きすれば、生産性と気分と健康状態が改善する。これまでの研究により、運動を習慣にしたいなら、早朝のワークアウトを一貫して続けるのがベストであることも分かっている。

大事な人と交流する

生産性のプロが作る5時9時のTikTok動画も、仕事から離れて友達や家族と過ごすことの重要性を忘れがち。大切な人と朝の散歩やおいしいディナーを楽しめば、心が満たされ、仕事のためのエネルギーが湧いてくる。

自分勝手になる

自分勝手になることは、ショー博士が送る最大のアドバイス。「遠慮なくセルフケアをしてください。1日10分でも、数時間おきに10分でも、自分の体に耳を傾ける時間と空間をつくり、そのニーズに応えるべきです。そうしないと、これからも仕事仲間を支えていくことはできません」

5時9時の過ごし方として一番よいのはおそらく、長いTo-Doリストから幸せな気分になれるタスクを1つ選んで、それにフォーカスすることだろう(米国心理学会の報告によれば、複数ではなく1つのタスクに集中すると作業効率が40%高くなる)。それがウォーキングや作り置きでも、瞑想でも副業サイトの立ち上げでも、タスクは一度に全部やろうとするより1つずつしたほうが燃え尽きることなく楽しめる。

※この記事は、イギリス版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text: Amrit Virdi Translation: Ai Igamoto

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