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誰も予測が追いつかない魅惑のスラッガー ドラフト3位・廣瀬隆太はソフトバンクの救世主となれるか

  • 2023.11.2
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写真:PIXTA

10月26日(木)に開催された「プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」で、慶應義塾大学の廣瀬隆太選手がソフトバンクから3位で指名されました。

ソフトバンクは2023年シーズンのチーム打撃成績で、チーム打率2位、チーム本塁打2位タイ、チーム打点1位と打撃陣は好調でしたが、右の打者で規定打席に到達したのは今宮健太選手のみ、ホームラン数も、甲斐拓也選手10本、今宮健太選手9本、野村勇選手が3本と、右のスラッガーが手薄なチーム状況でした。

その中で3位で指名された廣瀬隆太とはどのような選手なのか、人気野球ライターが特徴をご紹介いたします。

廣瀬隆太(慶應義塾大学)内野手 - 右投右打

語弊を恐れずに言えば、「わけのわからないスラッガー」。それが魅惑の和製大砲・廣瀬隆太である。

慶應義塾幼稚舎(小学校)からエスカレーター式に大学まで進学してきた、純然たる「慶應ボーイ」。キリッとした目元が印象的な男前だが、そのプレースタイルは慶應の校風のようには垢抜けていない。

東京六大学リーグ歴代5位タイとなる通算19本塁打(10月23日現在/以降成績は同)の長打力が最大の魅力ながら、通算打率は.260と確実性に乏しい。慶應義塾大出身の右打ちスラッガーといえば岩見雅紀(元楽天)や正木智也(ソフトバンク)が記憶に新しいが、廣瀬の打席姿は彼らのようなスケール感が漂っていない。あくまで印象論になってしまうが、打席内で小さく見えてしまうのだ。

だが、結果的にリーグ戦でこれだけの本塁打数を積み重ねている点も高く評価すべきだろう。本塁打の中身も「理解不能」な内容が多い。時には高めのボールに対して、大根切りのようにバットを出してスタンドに放り込んでしまうこともある。

廣瀬が打席で意識しているのは、「ライナー性の打球を打つこと」だという。投手のボールの軌道をイメージして、そのラインにバットを迎え入れる感覚を大切にしている。その考え方自体は極めてオーソドックスなのだが、実際に廣瀬の打撃を見ていると「ラインに入れるスイング」とかけ離れているように感じることも多い。

恥を忍んで書けば、廣瀬が凄い打者なのかどうかは「わからない」。この一言に尽きる。なお、一塁の他に二塁、三塁をこなす内野守備はお世辞にもプロで武器になるとは言えないが、年を追うごとに身のこなしが洗練されている。

廣瀬のことを手放しで称賛し、自信を持ってプッシュするスカウトやライターに今まで出会ったことがない。それだけこの大砲は常人の理解の及ばぬ世界で戦っているのかもしれない。

いつか日本を代表する強打者として君臨する日は訪れるのか。誰も予測が追いつかない、胸をざわつかせる大砲のプロ生活が幕を開けようとしている。

大学時代の個人成績

2020年秋 六大学/ベストナイン(一塁手)

2022年春 六大学/ベストナイン(二塁手)

2022年秋 六大学/ベストナイン(一塁手)


菊地高弘(きくち・たかひろ)
1982年生まれ、東京都出身。雑誌『野球太郎』編集部員を経てライターとして独立。「菊地選手」名義で執筆した『野球部あるある』(全3巻・集英社)は13万部のヒット作になった。2019年に上梓した『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)はTBS系日曜劇場の原案としてドラマ化された。近著に『野球ヲタ、投手コーチになる。 元プロ監督と元生物部学生コーチの京大野球部革命』(KADOKAWA)がある。

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