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ポテトチップスが生まれたきっかけは「クレーム」だった?

  • 2023.9.27

人にとって最も身近な食材の一つ・ジャガイモは、どんな歴史をたどって食卓にやってきたのか? 食文化について書き続けてきたエッセイスト・玉村豊男さんによる、ジャガイモを知的に探究する一冊『玉村豊男のポテトブック』(朝日出版社)が、2023年9月23日に発売された。

本書は、玉村さんも親交があった映画監督・伊丹十三さんの訳で1976年に刊行された、アメリカのベストセラー『ポテト・ブック』(ブックマン社)の体裁を引き継いで、日本オリジナル版として制作したもの。レシピは載せているものの料理の写真は一切使わず、人気イラストレーターたちの個性豊かなポテトイラストがページを飾っている。

本書では、作物としてのジャガイモの歴史や、代表的なジャガイモ料理の起源など、知的好奇心を刺激する数々のエピソードが紹介されている。おやつの定番・ポテトチップスの起源を見てみよう。本書によると、米ニューヨーク州サラトガ・スプリングスのホテルの料理人、ジョージ・クラムが初めて作ったというのが通説だそうだ。

1853年8月24日、ある客が、クラムのフライドポテトに「分厚すぎる」「味が薄い」というクレームをつけた。何度も作り直させられたクラムは頭にきて、ジャガイモを紙のように薄く切り、パリパリに揚げて大量に塩を振って出した。嫌がらせのつもりだったのに、クレーム客はこのチップスをとても気に入った。やがて話が広まって店の人気メニューになり、さらに「サラトガ・チップス」という名前で袋入りチップスとして商品化した。サラトガ・チップスで大きな利益を上げたクラムは、独立してレストランを開いたという。

では、フライドポテトにはどんな来歴があるのだろうか? アメリカではフレンチフライと呼ばれているように、フライドポテトはフランスの国民食。本書によると、世界中に広がったきっかけは「戦争とマック」なのだそう。他にも、ロシアで生まれたと言われるポテトサラダなど、食卓に欠かせないジャガイモ料理の背景を知ることができる。

ジャガイモは奥深い。食べれば尽きない滋味がある。調べればどんどん分からないことが増えてくる。みなさんも、ジャガイモに夢中になってみませんか。
(「はじめに」より)

【目次】
はじめに 伊丹十三さんの思い出

[ポテトをめぐる物語]
夜のカフェで/ミスター・リーズのサンドイッチ/新大陸の贈りもの/不謹慎な植物/戦乱と飢饉のヨーロッパ/タラとジャガイモの出会い/ジャガイモの食べ方/郷愁のブランダード/海を泳ぐ黄金/ニューファンドランド/スープの語源/失われたパン/土のないジャガイモ畑/イモに月が出ている/アイリッシュ・シチュー/ジャガイモ掘り

[ジャガイモという不思議な植物]
コモンポテト/ノアの箱舟/ジャガイモ博士に聞く/インカ帝国の知恵

[ポテトの料理法]
ポテトチップス/フレンチフライ/ベークドポテト/ローストポテト/ハッシュブラウン/マッシュポテト/ポテトサラダ

コラム <ミスター・リーズのサンドイッチ><夜のカフェで><ジャガイモ掘り>

<料理の四面体><和食とジャガイモ>

おわりに 家庭菜園からの報告

■玉村豊男さんプロフィール
たまむら・とよお/1945年東京都生まれ。エッセイスト、画家。東京大学文学部仏文学科卒業。在学中、パリ大学言語学研究所に留学。帰国後、通訳、翻訳業を経て、エッセイストの道へ。1991年長野県東御市に転居、2003年「ヴィラデストガーデンファームアンドワイナリー」開業。『パリ 旅の雑学ノート』『料理の四面体』など、著書多数。

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