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初心者でも大丈夫!カナディアンロッキーの大自然を体感できる「バンフ登山」のすすめ

  • 2023.9.27
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カナダ随一の観光地である「バンフ」という街をご存じでしょうか。

バンフは、カナダで初めて国立公園に指定された、カナディアンロッキーの玄関口でもある街です。その美しい大自然をこの目で見ようと世界中から多くの人が集まります。

そんなバンフという街でツアーガイドとして働き、カナディアンロッキーの山々を遊び回った私が、バンフを訪れる人におすすめしたい「登山」について紹介します。

カナダの大自然を体感するなら登山がおすすめ

Tent Ridge Horseshoe/Photo by Keiko Kawanami

カナディアンロッキーの玄関口であるバンフ国立公園は、カナダで最初の国立公園であり、周辺の国立公園とともに世界遺産にも登録されています。

日本の国立公園の多くが私有地であり、「景観保護」が主な目的であるのに対して、カナダの国立公園はすべて国が所有し、「生態系維持」や「環境保護」を主たる目的として、予算も日本の何倍もかけています。国立公園を専門に管理する「パークスカナダ」という政府の部門があるほど、徹底して管理されています。

Photo by Keiko Kawanami

そんなバンフに住む人々には「自然の中に住まわせてもらっている」という精神があり、高速道路の建設ひとつにしても生態系を壊さないよう配慮されていたり、動物の子育て時期になると道路を閉鎖していたりと、自然中心の営みがそこにはあります。

そんなカナディアンロッキーの街・バンフを訪れる人に、私が本気でおすすめしたいのが「カナディアンロッキーでの登山」。

ダウンタウンでのショッピング、湖などの定番観光など、バンフの楽しみ方はいろいろありますが、登山こそカナディアンロッキーの大自然を体感できる、最高のアクティビティなのです。

初心者にこそおすすめしたいカナディアンロッキー登山

Photo by Keiko Kawanami

登山初心者にもおすすめできるのが、カナディアンロッキー登山の魅力でもあります。

日本における登山は、もともとは仏や神を拝むことを目的とした、「修行」の側面が強いもの。多くの登山道は僧侶などが作ったと言われており、難易度は高めです。

一方、カナディアンロッキーは、ヨーロッパから多くの山岳ガイドを呼んで「無理なく登れるハイキングコース」を作ってもらったこともあり、かなり登りやすくなっています。初心者や体力に自信がない人こそ、カナダで登山を楽しんでほしいのです。

かく言う私も、日本では一度も登山をしたことがなかったのに、バンフに来て登山にハマりました。

バンフのMonod Sports/Photo by Masato

登山グッズを持っていなくても大丈夫。バンフのダウンタウンや空港のあるカルガリーにはスポーツ用品店がいくつもあり、登山靴やポールなどの登山グッズを一通り揃えられます。

コストを抑えたいなら、バンフの隣町キャンモアに大手ホームセンターの「Canadian Tire」があるので、そちらで買うのもおすすめです。

バンフやカルガリーのあるアルバータ州は、税金が国内で最も安い5%なので、他より安く購入できるのも嬉しいですね。

カナディアンロッキー登山で気をつけたいこと

ブラックベア Photo by Keiko Kawanami

楽しい登山ですが、注意してほしい点も多くあります。

その一つが「熊対策」。自然との共存を大切にしているバンフだからこそ、熊と遭遇する可能性があるのも事実です。

日本では熊対策として「熊鈴」が有名ですが、カナダではあまり推奨されていません。熊が最も警戒するのが、自然界には存在しない「人の声」。多くの現地登山者は複数人で、それも喋りながら、中には歌を歌いながら登山をします。

私も、「エーオ!!」と叫びながらハイキングする現地登山者を真似て、数分おきに叫んでいたこともありました。

一番おすすめしたいのがベアスプレーです。バンフのダウンタウンでは、スポーツ用品店やお土産屋さんで手に入れることができます。山に登るなら絶対買っておきましょう。

また、匂いの強い食べ物などは持ち歩かないようにご注意を。匂いを嗅ぎつけて動物が寄ってきてしまいます。

インストール必須のアプリ「All Trails」

AllTrails公式サイトより

カナダで登山する人のほとんどがインストールしているのが「All Trails」というアプリ。

日本で有名な「YAMAP」の全世界バージョンで、登る山をお気に入りに入れておけば、無料会員でもオフラインでルートマップが使えるので大変便利。

カナディアンロッキーで登山するのであれば、インストール必須です。

カナディアンロッキーのおすすめ登山10選

ここからは、1シーズンのバンフ在住中に、多いときで週3回、合計27ヶ所のトレイルに挑んだ私が、おすすめの山を厳選して10個紹介します。

【初級】トンネル・マウンテン(Tunnel Mountain)

Photo by Keiko Kawanami

登山初心者、足慣らしにもってこいなのがトンネル・マウンテン(Tunnel Mountain)。バンフのダウンタウンすぐそばにあり、バンフの住人にとっては「ちょっとお散歩で……」なんて軽い気持ちで登る山です。

標高差はたったの267mで、子どもから大人まで、登山装備がなくても簡単に登れます。しかも、頂上からはバンフの街並みを一望でき、青く美しい川、奥には雪を被った美しいカナディアンロッキーの山脈を眺めることができます。

私の初めてのバンフ登山がまさにトンネル・マウンテン。さらに、冬の2月に登ったバンフ最後の山もトンネル・マウンテンという、私にとって思い出深い山でもあります。

【中級】Cレベルサーク(C Level Cirque Trail)

Photo by Keiko Kawanami

バンフのダウンタウンはカスケード・マウンテンが正面に見られるように作られた街なのですが、そんなカスケード・マウンテンの裏側を登る登山ルートが「Cレベルサーク(C Level Cirque Trail)」。

難易度の高いカスケード・マウンテン登山より、体力的にもルートの難易度的にも遥かに簡単。私もここは仕事前に一人でサクッと登りました。

バンフ最大の湖であるミネワンカ湖を見られる上、途中に岩場が広がる場所があり、運が良ければそこでピカ(ナキウサギ)に出会えることも。

標高は高くないので雪解けが早く、秋には黄葉が美しいため、春先から秋終盤までと長い期間楽しめる登山ルートでもあります。

山頂がゴールになっているわけではないので、山に登り慣れている人には物足りないかもしれませんが、「あのカスケード・マウンテン(の裏側を)登った」と言えてしまいます(笑)。

【中級】ナブ・ピーク(Nub Peak)

Photo by Keiko Kawanami

アシニボイン州立公園内にあるNub Peakは、「ロッキー山脈のマッターホルン」とも称される名峰アシニボイン山と、3つの湖を望む場所です。

スタート地点はマグコック湖で、Niblet、Nublet、Nub Peakと3つのポイントを通る登山ルートがおすすめ。

登山レベル自体は中級ですが、アクセスの難易度は上級レベル。このエリアに行くには約27kmの道を歩くか、ヘリコプターで向かうしか方法がありません。

それでも見てほしい絶景がここにはあります。特に早朝の朝日に照らされたアシニボイン山、そしてそれが湖面に反射した景色の美しさは言葉では表せないほどです。

【上級】カーナーボン・レイク(Carnarvon Lake)

Photo by Keiko Kawanami

カーナボン・レイクという湖がゴールのこのトレイルは、靴を脱いで川を渡り、馬が休息する草むらを通り、鎖を頼りに岩壁を登り……と冒険のようで、ワクワクさせてくれます。

ゴール地点は、山の窪みが湖になっている面白い地形で、その湖はまるで珊瑚の海を見ているような美しさ。それまでの疲れが吹き飛んでしまいます。

トレイルの面白さもゴール地点からの絶景も、全てが満足すること間違いなしのおすすめトレイル。

ただし、ゴール地点はかなりの強風が吹くことが多いので、帽子などが飛ばされないよう注意し、寒さ対策で上着を用意するといいでしょう。

【上級】マウント・スマットウッド(Mount Smutwood)

Photo by Keiko Kawanami

マウント・スマットウッドは、山頂からの眺めが最高に美しいのがおすすめポイント。カナディアンロッキーの山々がかなり近く、迫力のある景色が広がります。

ルート後半は湖をぐるっと回るように登っていくので、常に目の前には絶景が広がっています。

ただしゴール付近はルートがややわかりにくい上、足を滑らせやすく、山頂は断崖絶壁かつスペースがかなり狭いため、慎重に登りましょう。

また、前半の木に覆われたエリアは、いつ熊に出会ってもおかしくない場所ですので、先に説明した熊対策をした上で挑戦するといいでしょう。

登山口は「カナナスキス」エリアになり、車両1台につき1枚の駐車パスが必要ですので、インフォメーションセンターもしくはオンラインページにて購入することも忘れずに。

【上級】デビルズ・サム(Devil's Thumb)

Photo by Keiko Kawanami

登山好きの友人に初めて連れてきてもらった山であり、私が登山にハマるキッカケとなったのが、ここデビルズ・サムです。

山頂では、バンフで最も有名な湖レイク・ルイーズと、その隣にあるレイク・アグネスが同時に眼下に広がり、奥にはロッキー山脈が見えるという「これぞバンフ」な眺めを楽しめます。

ゴール目前はかなり急勾配になり、足を滑らすと怪我をしかねない難所がありますので、焦らず自分のペースを守ってください。後ろにいる他の登山者には「Go ahead.(お先にどうぞ)」と言って道を譲りましょう。

体力に自信のない人は、レイク・アグネスを過ぎてしばらくした場所にある三分岐で一番左のルートを選び、ビッグ・ビーハイブ(Big Beehive)を目指すといいでしょう。ここでもかなり高い位置からレイク・ルイーズを見下ろすことができます。

【上級】ジ・オニオン(The Onion)

Photo by Keiko Kawanami

「玉ねぎ」の名で呼ばれるこのトレイルは、ゴール地点で「アイスバーグ・レイク」という、まるで玉ねぎのような形をした湖を見ることができます。

ゴール地点の景色もすばらしいのですが、私がここを選んだ理由は、トレイル自体がとても面白いから。

バンフの定番観光スポットでもあるボウレイクという美しい湖から出発し、峡谷に挟まる巨大な一枚岩をよじ登り対岸へ、しばらくすると岩が集まるエリアに出るので、運が良ければピカ(ナキウサギ)に出会えることも。その後も澄んだ綺麗な川のすぐ横を歩いたり、橋のない小川を渡ったり。

個人的に大興奮ポイントだったのが、ゴール目前で氷河の上を歩いたこと。1万年前から残る氷河の上に立っているだなんて、なんだかロマンを感じます。

ちなみに私は、ゴール地点で玉ねぎを持って記念撮影しました。The Onionだけに(笑)。

【上級】オーパル・リッジ(Opal Ridge)

Photo by Yusei Murayama

知名度が低めで、本当は誰にも教えたくない山がオーパル・リッジ。

知る人ぞ知る山で、他の登山者が少ない代わりに、動物との遭遇率はダントツ。マーモットやマウントゴートなど目撃情報多数です。

カナディアンロッキーの山々といえば、山頂までガレ場が続き、足元はグレーや茶色のことがほとんどなのですが、オーパル・リッジは緑の稜線が美しいのが特徴です。日本での登山経験者に言わせると「日本の山を思い出す」とのこと。

動物と出会いたい人、他の人が行かないような穴場の山に挑戦したい人、日本の山が恋しくなった人にはかなりおすすめです。

登山口は「カナナスキス」エリアになり、車両1台につき1枚の駐車パスが必要ですので、インフォメーションセンターもしくはオンラインページにて購入することも忘れずに。

【上級】カスケードマウンテン(Cascade Mountain)

Photo by Keiko Kawanami

バンフのランドマークであり、ダウンタウンのどの場所にいても存在感のある山と言えば、カスケード・マウンテン。バンフにいる人であれば誰もが「一度は登りたい」と思う憧れの山です。

ダウンタウンからカスケードを見て、山頂の雪が溶けていたら登山ができる合図です。

登山道がわかりにくいポイントもいくつかあるので、AllTrailsでルートを確認しつつ、正規ルートには近くの岩にマークがあったり、ケルンと呼ばれる石を積み上げた目印があったりするので、それらを頼りに歩きましょう。下山してくる他の登山客がいれば、その人たちに道を確認するのもいいでしょう。

Photo by Keiko Kawanami

山頂からは、今まで自分たちがいたダウンタウンの街並みが見えるだけでなく、東を向けばバンフ最大の湖ミネワンカ湖、西を向けば眼下に広がるカナディアンロッキーの山々……と、壮大すぎる景色に出会うことができます。

また、ダウンタウンが近いこともあり、山頂で電波が通じるのもカナディアンロッキー登山ではかなり珍しいこと。私がこの山に登ったときは、「今山頂に来たよ。これから下山するから、帰りは6時くらいかな」なんて家族に電話をする地元の男性がいて、その不思議な光景に思わず笑ってしまいました。

登山口までは街中から無料シャトルバスが出ているので、車がない人もアクセス可能です。

【超上級】マウント・テンプル(Mount Temple)

Photo by Tomomi Nagao

マウント・テンプルはレイクルイーズエリア最高峰の山。カナディアンロッキーの中でも7番目に高く、標高は3,544mです。

標高差は1,696mもありながら、総距離は15.1kmと、標高のわりにそこまでロングトレイルではありません。つまりは、勾配が急ということ。

バンフ住民の間でもマウント・テンプルは難易度が高いと有名で、実は私自身も未挑戦。しかし、山好きの友人達から「登山経験者におすすめしたい」と高評価であるため、超上級として紹介することにしました。

前半は「センチネルパス」という、秋の紅葉で有名で登山初心者にも優しいトレイルと被っており、難易度はそう高くありませんが、問題はそれ以降。

センチネルパスを過ぎてからは、落石の危険があるエリアに入っていくため、ヘルメットとグローブの着用が必須となります。スクランブル(軽いクライミングのようなもの)もありますから、他の登山者のルートを見つつ、声を掛け合いながら慎重に登りましょう。

山頂からは、カナディアンロッキーの山々を見下ろす景色が360度広がっており、圧巻の絶景なのだそう。山を見下ろすなんて、なかなか経験できませんよね。

どの山に登るか迷ったときに見るべき動画

特に参考にさせていただいた「バンフTV」さんの動画

今回は私の経験に基づいて10個の山を厳選しましたが、カナディアンロッキーには数え切れないほどの山があり、私も登り損ねた山がいくつもあります。

どの山に登ろうか迷っている、ここに載っていない山も知りたい、という人におすすめなのが「バンフTV」というYouTubeチャンネル。バンフ在住の日本人の二人で運営されています。

再生リストにある「絶景食べ歩き」には、バンフからアクセスできる山々を紹介した動画がたくさんあるので、ぜひ参考にしてみてください。

実際に私もこの動画をかなり参考にさせていただきました。

登山したい、でも不安……そんなときはプロに頼ろう

The Onion/Photo by Keiko Kawanami

カナディアンロッキーで登山したいけど、経験がないから不安、自分の体力ではどの山が適切かわからない、そもそも登山口まで車で行くのが不安……という人はツアーを利用するのがおすすめ。

Toloco Toursでは、国立公園公認ガイドが日本語で、ガイドをしながら登山をサポートしてくれます。

また、マウント・テンプルなど、難しい山に挑戦したいけど道具が用意できない、自力では不安という人には、山岳ガイドに頼ることをおすすめします。ヤムナスカでは、経験豊富な日本人の山岳ガイドが登山をサポートしてくれます。

Pocaterra Ridgeから

これからバンフに訪れる人にとって、この記事が参考になれば幸いです。

これまで世界中の多くの街を訪れてきましたが、トップクラスで気に入った「バンフ」という街を、皆さんも楽しんでいただけたら嬉しいです。

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