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新生・移民史博物館で学ぶ、人種多様な「フランス人」。

  • 2023.9.22

パリでいま注目の出来事を、パリ支局長の髙田昌枝がリポート。

6月半ば、ルイ14世の肖像画ポスターがパリの街に現れた。「母はスペイン人、祖母はオーストリア人」という言葉とともに、「フランスの歴史を作った外国人がこんなに!」というキャッチが書かれたポスターは、2007年に設置された移民史博物館のリニューアルキャンペーン。フランスを象徴する絶対王政君主と移民の関連付けが話題となった。とはいえ、フランス人の4人に1人は移民系、つまり自分自身か両親、祖父母の誰かが移民だという数字もあり、移民はごく当たり前の存在だ。国立統計局によると、22年の移民の数は人口の1割にあたる700万人。そのうち35%がフランス国籍を取得しているという。

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移民史博物館のポスター。

6月27日、パリ近郊ナンテール市で、警察の交通検問を逃れようとした17歳のアルジェリア系少年が射殺される事件が起こった。これをきっかけに大都市とその近郊で1週間近く暴動が続いたのは、日本でも報道されたとおり。暴動を起こしたのは、低所得者用住宅が集まるエリアに住む若者たち。逮捕された最年少は11歳、平均年齢は17歳で、その若さも衝撃を与えた。移民2世、3世の世代は、生まれながらフランス国籍を持つにもかかわらずフランス人とみなされていないと感じており、見かけや名前、住所までが差別の要因になる。この事件で、彼らの日頃の不平等感が吹き出したと言われている。

暴動に対し左派は社会的格差の是正と教育の不平等改善を唱え、右派は移民対策の強化を訴える。そんな中、7月4日、ダルマナン内務・海外領土大臣は「暴動時の逮捕者4000人のうち、外国人はたった1割」と国会で答弁し、暴動と移民問題を関連付けようとする極右派に反論した。

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「ル・パリジャン」紙をはじめ、連日各紙が一面で暴動を報じた。鎮静後も「暴動の根源とは」(「リベラシヨン」紙)など、分析と論議が続いた。

そんな情勢に移民史博物館のリニューアルは実にタイムリーに見える。17世紀以来、フランスがどのように外国人を迎えてきたか、彼らがどんな役割を演じてきたかを時系列で見せる新展示は、移民への視線を根本から問い直す。奴隷貿易や植民地時代。移民労働力を募集した第一次大戦後の労働力不足の時代。第二次大戦後には旧植民地から、シェンゲン協定締結後には欧州各地から人が流入した。そしていま、紛争を逃れ、地中海を渡り、あるいは陸路で、欧州を目指す人々が毎日のようにいる。外国からやって来た人々が何世紀にもわたって積み重ねてきた物語もまた、フランスの歴史なのだ。

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移民史博物館の展示より。1998年のFIFAワールドカップで優勝したフランスチームを模した人気テレビ番組の人形。中央がジネディーヌ・ジダン。アルジェリア移民2世が国民的スターに。
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移民をテーマにした現代アートも。フェリーで行き来する移民の、うず高く荷物を積んだ車をマルセイユの港で捉えたトマ・メレンデールの写真連作『Voiture Cathédrale』(2004年)
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リニューアルした移民史博物館。

Musée National de l’Histoire de l’ImmigrationPalais de la Porte Dorée, 293, avenue Daumesnil 75012www.histoire-immigration.fr

*「フィガロジャポン」2023年10月号より抜粋

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