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古きよき韓屋が残る街、ソウル・西村を歩く。

  • 2023.9.21
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歩きたいのは、ベタな観光地なんかじゃない。落ち着いた街の風情が、豊かな旅の記憶として残る、大人の散歩道へご案内。

伝統と革新が渦巻く中に、この街“らしさ”を残す。

西村 서촌ソチョン

案内人キム・モア / 作家ホ・ナムフン / 映像監督

Moah Kim & Namhoon Huh/ 出会って20年の仲良し夫婦。モア(妻)は映像作家を本職に、エッセイ作家としても活動。ナムフン(夫)は自身のプロダクションを持ち、ブランド広告やドキュメンタリー映像のディレクターを務める。夫婦でエッセイの出版も。@moa__kim @namhoooon @lesonducouple

景福宮の西側、いまもなお伝統的な韓屋が多く残る昔ながらの街、西村。同じく韓屋街として有名な観光地の北村エリアとは、少し性格が違うようだ。

朝鮮時代、両班(ヤンバン)と呼ばれる貴族階級の人々の居住地であった北村に対し、西村は両班と庶民の中間層、通訳者や医者、芸術家が住む街。細くて入り組んだ小道が多く、整備もされすぎていない。ローカルで、気負わず歩ける素朴な雰囲気なのは、その名残からなのかもしれない。韓屋が集まる路地裏には、改築された宿やカフェもちらほら。迷路のような小道を抜けると突如現れる通トン仁イン市場には、トッポギや餅菓子などを売る総菜店や青果店が並び、古くから住む人々の日常を垣間見ることができる。

一方、大通りに出ると若者が経営する現代アートのギャラリーや洗練されたセレクトショップなど、西村らしい落ち着いたムードは残しつつ、徐々にモダンな風も舞い込んできている印象。だが、決して街全体が新しく生まれ変わったわけではなく、「ここはここ」と、そう言葉にせずとも皆同じ思いで暮らし、働いているように見える。

モアとナムフンが西村に住むようになったのはいまから約1年前。

「ソウル市内なのに、近くに山があったり、渓谷があったり、いつも穏やかな空気が流れている。昔の芸術家たちって、街を歩くことでアイデアがひらめき、インスピレーションをもらっていたと思うんです。私たちもクリエイターとして、住む街にはこだわりたくて。雄大な自然と、新しいカルチャー、伝統ある風景が調和したこの街が大好きです」(モア&ナムフン)

Masamadreマサマドゥレ마사마드레

母娘が作る、天然発酵のハードパン。

バゲット好きのモアとナムフンが今年3月のオープン直後から通っているというベーカリーカフェ。全粒粉パンやベーグルなど、ハード系に特化したラインナップで、どれも有機農小麦、天然発酵種を使用して低温熟成させたパン。サンドウィッチやトーストのような調理パン以外のパンでも、その場で切ってもらいイートインができるのでお声がけを。ナチュラルワインやベルギービールなどのお酒類も充実しているので、昼からパン飲みなんていかが?

娘ふたりと母とで営む、アットホームな雰囲気。

チーズの香りが食欲そそる「Blue Cheese Baguette」(5,000ウォン)は半分カットしてもらい、「Glass Wine」(9,000 ウォン) とともに。「Green Mother Sauce」(1,800ウォン)と名付けられたパセリやセロリ、唐辛子など11種類の食材が混ざったパン用ソースは絶品なので試してみる価値あり!

リノベーションした不思議な形の赤い建物。

マサマドゥレ마사마드레종로구 자하문로 7길 68-368-3 Jahamun-ro, 7-gil, Jongno-gutel:02-525-7234Ⓜ︎ 景福宮(327)2番出口営)10:00〜21:00(パン売り切れ次第終了)休)月、火@masamadre.bakeshop

ハングォネ書店ハングォネソジョム한권의서점

西村のムードに合った、とっておきを厳選。

西村の落ち着いた街の雰囲気に合う本を1〜3冊ピックアップし、展示形式で紹介するギャラリースタイルの書店。1〜2カ月に1度のペースで展示を更新しており、本にフォーカスを当てることはもちろん、空間の雰囲気も本に合わせて毎度変えている。「情報があふれる世の中で、あるひとつのテーマに絞って深く知ることができるところが好きです。私たちの書籍もいままでに3度紹介され、ブックトークイベントにも参加しました」(モア)

この日行われていたのは、これまでの全26回で紹介された本を一挙に集めた展示。過去には、手紙、チェジュでの季節、などの展示テーマがあった。

西村の街を紹介するフリーのポストカードなども置いてあるので散歩時には気軽に立ち寄ってみて。

ハングォネソジョム한권의서점종로구 자하문로 9길 2424 Jahamun-ro, 9-gil, Jongno-gutel:0504-0904-2741Ⓜ︎ 景福宮(327)2番出口営)11:00~12:30、13:30~20:00無休https://of-onebook.com

Makefolio Seochonメイクポルリオ ソチョン메이크폴리오 서촌

暮らしを豊かに彩る、メイドイン韓国の数々。

韓国ブランドを中心とした、ライフスタイル雑貨と伝統酒を扱うセレクトショップ。店の手前半分は、1カ月ごとに商品の入れ替えが行われるポップアップショップ、奥半分は常設のショップという構成になっている。「新人の作家ものもよく置かれるので常にチェックしています」(モア)。常設で人気なのは、韓国各地の宿のために作られたSutome Apothecaryのルームフレグランス。泊まった時の思い出が蘇ると評判だ。

ポップアップでは、あまり手に入らない作家のうつわをしばしば取り扱う。

「時間を気にせずゆったりした気持ちで買い物ができるお気に入りの空間」( ナムフン)

SutomeApothecaryのルームフレグランスコレクションの中には、夫婦が製作に携わった「Around Follie」(10ml 20,000ウォン〜)も。ヒノキやローズマリーの爽やかな香りが印象的だ。

日本酒のようなクリアな味わいのマッコリ「복순도가 손막걸리 」(935ml 14,000ウォン)は、その場で試飲も可能。伝統酒の種類は豊富。ほかにもクラフト地ビールなども。

メイクポルリオ ソチョン메이크폴리오 서촌종로구 자하문로 9길 1717 Jahamun-ro, 9-gil, Jongno-gutel:070-5158-9013Ⓜ︎ 景福宮(327)2番出口営)12:00~18:00(水~木)11:00~19:00(金~日)休)月、火www.makefolio.co.kr

キムジンモッサムKimjinmoksam김진목삼 1호점

プレミアム豚肉を熟成させたモクサルに舌鼓。

豚肉が大好きな夫婦の行きつけは、元精肉店の息子が経営する、モクサル(肩ロース)、サムギョプサル、豚トロ専門の焼き肉店。肉は脂控えめで柔らかな韓国のプレミアム豚肉、韓豚のみを使用。焼き上がったら、岩塩、チェジュ島の太刀魚の塩辛、ファンテ(干しスケトウダラ)の粉末、ニンニクの芽のナムル、合わせ味噌、焼きニンニクといった多彩な付け合わせとともに味わおう。肉に負けず評判の、オモニの自家製おかずも楽しみのひとつだ。

古い韓屋を改築した建物。

自家栽培の野菜を使った手づくりおかず。オーナーの両親は農家に転身し、この店のキムチのための農園を始動。唐辛子や梨などの栽培から調理までを担っているというから驚き。

焼き加減はすべてスタッフにお任せなのでご安心を。モクサル「목살 」150g 16,000ウォン

Kimjinmoksam김진목삼 1호점종로구 자하문로 1길 5151 Jahamun-ro, 1-gil, Jongno-gutel:02-929-2929Ⓜ︎ 景福宮(327)1番出口営)15:00〜23:00休)月@kjmoksam

Dekadデケドゥ데케드

デンマーク仕込みの料理とワインで優雅なブランチ。

北村の人気ワインバー、Ryulの姉妹店として昨年オープン。デンマークで修業したヘッドシェフが、韓国人の舌に合うように食材や味付けをよりシンプルにアレンジした、デンマーク料理とワインが味わえる。「味だけでなく目も鼻も満足させてくれる料理、流れる音楽のセンス、訪れる人々のファッションも含めて、いまの韓国のムードをいちばん表している場所だと思います。ディナーのアペタイザーで出てくるサワードゥも大好き!」(モア)

「仲間たちとのアペロにも、打ち合わせにも、年代問わずみんなが喜んでくれる店」(モア)

マスカットと抹茶、バジル入りの自家製グラノーラ&ギリシャヨーグルト「Granola」11,000ウォン

ボリュームたっぷりのスクランブルエッグトーストがまぶしい「Brunch Platter」23,000ウォン。コンテチーズやハムはワインとも相性抜群。定番人気はマスタードシードとメープルシロップのソースの「Dekad Pancake」14,000ウォン。

天気のいい日はテラス席で。

スティルワイン6割、ナチュラルワイン4割でラインナップ。グラスワインはその時々で種類も数も異なるのでスタッフに尋ねて。

デケドゥ데케드종로구 자하문로 7길 4343, Jahamun-ro 7-gil, Jongno-gutel:02-722-5845Ⓜ︎ 景福宮(327)2番出口営)12:00~14:20L.O.、17:00~21:00L.O(. 月~木)12:00~14:20L.O.、17:00~22:00L.O(. 金~日)休)月※ディナーは要予約@dekad.kafeteria

[ ここもおすすめ!]

Edition Denmark Showroom エディション デンマク ショルム에디션 덴마크 쇼룸

デンマーク出身ソウル在住のヨハンと、ソウル出身のクリエイティブディレクターのイ・ジウンが創ったライフスタイルブランドのショールーム兼カフェ。主にお茶、コーヒー、ハチミツ、雑貨類を扱う。カウンター上にある格子状の可愛い天窓から入る自然光が気持ちいい。

Edition Denmark Showroom エディション デンマク ショルム에디션 덴마크 쇼룸종로구 자하문로 9길 2424 Jahamun-ro, 9-gil, Jongno-gutel:0507-1304-6764Ⓜ︎ 景福宮(327)2番出口営)9:30~17:30L.O.無休@editiondenmark

House of Blueハウス オブ ブル하우스 오브 블루

ブルーのネオンライトに照らされた地下の入口を開けると、こぢんまりとしたカジュアルなテーブル席と小さなカウンター席が。小さな店のため、ミュージシャンとの距離も近く、音楽に没入できそう。出演者は毎回異なるので、飽きることなく通える。

House of Blueハウス オブ ブル하우스 오브 블루종로구 자하문로 9길 6 지하 1층B1F, 6 Jahamun-ro, 9-gil, Jongno-gutel:010-7723-3303Ⓜ︎ 景福宮(327)2番出口営)19:00~ 23:30(火~日)ジャズ公演 20:30~ 22:30(木~日)休)月※要予約@houseofblue.seoul

水聲洞渓谷スソンドンゲゴッ수성동계곡

景福宮から徒歩圏内にある、街中の大自然。朝鮮時代に、渓谷を流れる水の音が大きく澄んでいることから、水聲(声)洞と名付けられたという。かつては山水画として描かれたこともあり、2010年にはソウル市記念物 第31号に選定されている。ハイキングにも◎。

水聲洞渓谷スソンドンゲゴッ수성동계곡종로구 옥인동 185-3185-3 Ogin-dong, Jongno-gutel:02-2148-2844(鍾路区役所公園緑地課)Ⓜ︎ 景福宮(327)2番出口

 

*「フィガロジャポン」2023年9月号より抜粋

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