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【六本木】企画展 楽しい隠遁生活 文人たちのマインドフルネス@泉屋博古館東京 10月15日(日)まで

  • 2023.9.21

泉屋博古館東京にて「企画展 楽しい隠遁生活 文人たちのマインドフルネス」展が2023年10月15日(日)まで開催されています。中国・日本の文人たちの理想の隠遁空間をイメージした山水・風景や、彼らが慕った中国の隠者たちの姿を描いた絵画作品とともに、清閑な暮らしの中で愛玩されたであろう細緻な文房具などが展示されています。

出典:リビング東京Web

会場入口

副題は絵画と工芸に見る「自娯遊戯」の世界 安らぎと自由の追求とあります。文人たちの平穏で安寧な世界観が、絵画や工芸でどの様に表現されているのか、興味深い展覧会です。

出典:リビング東京Web

ポスター

自由へのあこがれ「隠遁思想と隠者たち」

隠遁の根底にあるのは「脱俗」の考えです。自己を滅し、世間に妥協して生きるよりも、理想を堅持しながら自然の中で暮らす道を選び生きたのが、隠遁者たちです。展覧会場には、中国の著名な隠者達の作品が展示されています。隠者たちの静閑の暮らしは日本の文人たちの規範として享受もされています。平安・鎌倉時代の「西行」や、江戸時代の「芭蕉」らも俗世を離れた草庵暮らしを積極的に求めた隠者と言われています。

森 寛斎は、日本の幕末から明治時代に京都を中心に活躍した絵師、日本画家です。

作品に描かれている陶淵明(とうえんめい)は東晋から宋にかけての人物で、六朝文化を代表する詩人です。「帰去来の辞」※など、自然を詠い、酒を愛した田園詩人といわれています。※官を辞して帰郷し、自然を友とする田園生活に生きようとする決意を述べたもの

出典:リビング東京Web

森寛斎《陶淵明像》明治4年(1871) 泉屋博古館東京

出典:リビング東京Web

展示風景 ※主催者側の許可を得て撮影しています。

橋本雅邦が描いた許由(きょゆう)は、中国古代の三皇五帝時代の人と伝わる、伝説の隠者と言われています。書画の題材としてよく好まれました。許由(きょゆう)は、身に蓄えを殆ど持たず、水も手で掬って飲んでいました。それを見たある人が瓢を与えましたが、ある日、木の枝に掛けた瓢が風に吹かれて音を鳴らしたのをうるさく感じて捨ててしまい、それ以降は再び手で掬って水を飲んだそうです。現代の時代ではミニマリストとも云える様な人物でしょうか。日本画家の橋本雅邦は、明治期の日本画壇において主導的な役割を果たし、狩野派に学び、他流派や西洋画などを柔軟に取り込んで、近代的な日本画の一スタイルを目指し、山水や故事人物など漢画系の画題を描いています。

出典:リビング東京Web

橋本雅邦《許由図》明治33年(1900) 泉屋博古館東京

理想世界のイメージ

陶淵明(とうえんめい)が著した『桃花源記』に登場する桃源郷は、自然の中で、人々が自由に暮らす空間です。そこでは世の束縛を全く受けず、自然の摂理に従って人々が自由に生きる理想的な世界でした。桃源郷やそれに通底する安寧な山河イメージを描いた作品が展示されています。

出典:リビング東京Web

展示風景

展示作品は田能村竹田(たのむら ちくでん) 江戸時代後期の南画(文人画)家の作品です。

出典:リビング東京Web

田能村竹田《梅渓閑居図》文政10年(1827) 泉屋博古館

梅が咲き誇る様子を眺めながら優雅にお茶をしながらのお花見でしょうか。文人たちの理想郷の様子が描かれています。

出典:リビング東京Web

田能村竹田《梅渓閑居図》(部分) 文政10年(1827) 泉屋博古館

楽しい隠遁―清閑の暮らし

自然との共生を第一義に考える隠遁者たちは、大自然の絶景の中に人智の及ばぬものがあることを見抜き、そこでの人間のあり方などに想いを巡らしました。

出典:リビング東京Web

岸田劉生《塘芽帖》昭和3年(1928)頃 泉屋博古館東京

山水に遊ぶ隠遁者は、雄大な自然の中では人間がいかに小さな存在であったかを強く意識し、人間の営みを小さく描く山水図にも反映されているようです。「書斎」「観瀑」を主題にした作品が展示されています。

出典:リビング東京Web

長吉《観瀑図》室町時代(16世紀) 泉屋博古館

時に文雅を楽しむ交遊

俗世間を避け、自然を友として生きる。「晴耕雨読」はそうした生き方を象徴する言葉です。「雅集図」や「臥遊図」などが、こちらの展示室では主に紹介されています。

自然の懐に懐かれた草庵や茅屋で、書を読み、また自ら筆を執って詩をしたため、書画を嗜む。また時に飲酒を愉しむ。これも隠遁の大きな楽しみの一つです。

出典:リビング東京Web

展示風景

出典:リビング東京Web

展示風景

展示スペースの一角には隠遁生活の手引書の案内もあります。書物からも文人の隠遁生活のマインドフルネスに理解が深まり、参考になりそうですね。

出典:リビング東京Web
特集展示「住友コレクションの近代彫刻」

住友コレクションには青銅器をはじめ、中国・日本書画や、西洋絵画、茶道具や能装束といった、時代や地域を超えた多種多様な作品が含まれています。

住友家は別子開抗二〇〇年記念事業の一環として、明治33年に楠公像の献納を行いました。制作は東京美術学校へと委嘱され、当時の彫刻科教授である高村光雲の指揮下で制作されました。

出典:リビング東京Web

高村光雲《楠木正成銅像頭部木型》明治26年(1893) 住友史料館

竹林の七賢※の一人山濤の彫刻です。※七賢:中国晋(しん)の時代に、俗世間をさけて山中に隠遁し、礼節を捨てて竹林に会し、清談に明け暮れたといわれる隠士七人の総称。

山崎朝雲(やまざき ちょううん1867-1954年)は、明治から昭和時代に活躍した日本の彫刻家です。

出典:リビング東京Web

山崎朝雲《竹林の山濤》大正元年(1912) 泉屋博古館東京

美術館鑑賞後は隣接しているHARIO CAFEでサイフォンコーヒーとホットサンドを頂いて一服です。眼前の緑を眺めながら自己流のマインドフルネスを体験してみました。都心の中で束の間の隠遁生活気分?を味わってみました。癒される空間です。

出典:リビング東京Web

HARIO CAFEにて

芸術作品を通じて過去の文人たちの田舎暮らしのスローライフを求める「楽しい」隠遁から、厳しい現実を積極的に切り抜ける「過激な」隠遁までを伺い知ることが出来る、感慨深い展覧会です。是非会場に足を運び、鑑賞されてみては如何でしょうか。

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