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親にも友達にも逆らえなかった不登校の男子高校生が急成長…権威主義的だった父親が息子にしたこと

  • 2023.9.19
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子どもの登校しぶりや不登校は親も追い詰められてしまうケースがあります。児童精神科医の齊藤万比古さんは「保護者が役割分担をすることが大事。また祖父母に預かってもらう、専門家に相談するなど外の助けも積極的に利用してほしい」といいます――。

子どもが不登校になったとき、親にできること

子どもが登校しぶりや不登校の兆候を見せたときに、まず絶対的にするべきなのは、両親が支え合うことです。子どもが「学校に行きたくない」と打ち明けられたほうの親が、「あの子は、こういうことに悩んでいる」という事実を、もう片方の親に伝えて、互いに子どものことを話し合うことが大切です。

もちろん学校で犯罪に近いようないじめが起きていたり、教師による体罰が度を過ぎていたりしたら、違う意味で親が手をとり合って立ち上がらなければいけませんが、起きているたいていのことは、そこまでのレベルではありません。夫婦で話し合い、ここは様子を見ようか、相談に行こうか、そういうアイデアが出てくることは、とても健全なことだと思います。

向かい合って話し合う2人
※写真はイメージです
権威的な父親を恐れていた高校生男子

ある不登校の高校生男子の事例です。父親が権威で引っ張っていく家庭で、その男の子は気が弱くて親にも逆らえないし、友だちにも逆らえない。本当に受け身のお子さんでした。

しかし夫婦で話し合うという取り組みを行っていただくなかで、このお父さんは自分が前に出ていくと、息子は意識して何もしゃべれなくなると気づきました。だから自分は息子のことは一切口出ししない。その代わり、サッカーや野球のチケットが手に入ったら行こうって声をかけるからと。

そして実際にチケットが手に入ったときに息子を誘うと、最初は拒否されていましたが、何回も機会があるごとに誘っていたら、あるときふと一緒に来るようになりました。そうするとその子は母親からも、ちょっと距離をおけるようになって、お母さんも少し楽になってきたんです。

結局、その子は高校を中退し、高卒認定試験(高等学校卒業程度認定試験)を受けて、浪人して大学に行きました。彼は、そのプロセス全体を通して本当に自立しました。親のちょっとした気づきによって、子どもは徐々にですが、よい方向に向かっていくのです。

最前線に立つ母親を父親が支える

そんなふうに子どもに問題が生じたときは、両親が連携して事に当たることが大切ですが、このケースのように子どもが心を許しているのは母親という場合が多いです。

子どもというのは、父親の前に出ると緊張するケースが多いと感じます。息子なら、どこかでライバル心を感じているから、いいところを見せようとしますし、娘は大好きなお父さんの期待に応えて頑張りたいと思ってしまう。どちらも父親に素の姿を見せていません。

一方、母親に対しては、素の姿を見せやすい子が多いようです。「学校に行きたくない」と外の世界に出ることへのピンチの気持ちも受け止めてもらえる、と感じているのでしょう。こういった場合、父親が無理に割り込むと、かえって子どもとの関係は悪くなってしまう。父親の権威で引っ張ろうとすると、そのうち子どもは徹底的に父親を避けるようになります。むしろ親子関係が壊れるので、やめたほうがよいでしょう。

そうした家庭での父親の役割は、母親をサポートする、母親の苦労をわかろうとすること。臨床の場でも、父親がそういう形で加わると、お子さんが変わっていくケースが多いです。

手を握る夫婦
※写真はイメージです
月に2、3回はおばあちゃんに預ける

おすすめは父親が月に2、3回、母親を家から連れ出すことです。子どもはおじいちゃん、おばあちゃんに預けて「パパとママはちょっと用があるから留守番してね」と、あっさり二人で出かける。それを実行した夫婦からは、母親は子どものことが客観的に見られるようになった、父親は母親のしんどさに気づいて親身になれたなど、ポジティブな声をよく聞きます。

子どもが母親から離れたくない状況の中で、祖父母に預けることに罪悪感を持つお母さんもいますが、子どもを預けること自体、全く悪いことではありません。子どもは、学校にもいやいやながらも行っているわけですから、親と離れられるわけです。もちろん、それが毎週となると嫌がるかもしれませんが、月に2、3回程度なら何の問題もないでしょう。

親自身がメンタル不調を感じたら

親のメンタルが本当に崩壊しそうなときは、親自身が治療を受けなければならないかもしれません。自分はちょっとうつかな、と感じたら、こじらせる前に心の相談や治療のできる精神科医や心療内科に相談に行くという手段もあります。

ただ、そういった主治医を必要とする親御さんには、そうめったに出会いません。

そもそも子どもの登校しぶりをめぐる葛藤を、我々のような児童精神科医やカウンセラーが話すこと自体が、親の支えになります。

ですから子どもの不登校に揺れる親は自分の主治医を探す前に、地域の教育センターや教育相談所など子どものことを相談できる地域機関、あるいは児童精神科などの医療機関を見つけることのほうが大切かもしれかもしれません。

問診をする医師
※写真はイメージです
シングル親はパートナー選びは慎重に

もしも支え合えるパートナーがいないシングル親の場合は、どうしたらよいのでしょうか。卒直にいうと、シングル親はけっこう複雑なミッションになることを承知しておく必要があります。父親役と母親役、両方を適宜使い分けていかなければなりませんから。

ただシングル親というと、母親が引き取っているケースが多く、シングルマザーとして、お母さんの役割だけでなくときどきお父さんの役割を担う必要があります。

再婚して自分を支えてくれるパートナーができると理想的に思えますが、それも相手がまともなパートナーであれば、という話です。そのパートナーが成熟した人間であるかどうか、父親役を引き受けられる人間かどうか、その見極めは非常に重要です。

特に女の子を抱えている場合、継父は性的虐待のリスクの一つでもありますから、本当に人柄をじっくり見ないと、パートナーにふさわしいかどうか簡単には判断できないと思います。

そのパートナー役というか父親役割は、母親の父親(祖父)や兄弟(伯父・叔父)が担うこともできます。こうした親族の近くに住んで、こうした人たちがシングルマザーを支えるケースはたくさんあります。あるいは地域の相談機関や医療機関が担えることもあります。

くれぐれも子どものためという目的でパートナーをつくるということはやめたほうがいいでしょう。たいていは失敗します。そうなると問題は、子どもの不登校ではおさまらなくなると知っておいてほしいです。

齊藤 万比古(さいとう・かずひこ)
恩賜財団母子愛育会愛育相談所所長,医療法人社団翠松会松戸東口たけだメンタルクリニック
千葉大学医学部卒業。国立精神・神経センター精神保健研究所児童思春期精神保健部長。独立行政法人国立国際医療研究センター国府台病院精神科部門診療部長。恩賜財団母子愛育会 総合母子保健センター愛育病院小児精神保健科部長を経て現職。松戸東口たけだメンタルクリニック医師

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