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18歳と40歳、女同士の連帯が「当たり前」を変えていく 『18/40~ふたりなら夢も恋も~』最終回

  • 2023.9.15

ドラマ『18/40~ふたりなら夢も恋も~』(TBS系)は、福原遥演じる18歳のキュレーター志望・仲川有栖と、深田恭子演じる40歳のアートスペシャリスト・成瀬瞳子をメインに繰り広げられる、女性の生き方を描いた物語。「妊娠・出産」や「キャリア」など、人生のステージが変わる局面に立たされた女性が、どんな選択をするかに注目が集まる。最終回は、有栖と瞳子の夢が実現する過程が鮮やかに彩られた。

有栖が祐馬に伝えた“心の声”

有栖(福原)は、キュレーターになる夢の第一歩として、瞳子(深田)の会社が主催するプロジェクトで、光峯綾香(嵐莉菜)と一緒に企画展を成功させた。有栖の頑張りを祝福するため、黒澤祐馬(鈴鹿央士)はひまわりの花束を彼女に渡す。

以前、祐馬から告白を受けるも、いったんは断った有栖。しかし、祐馬自身は有栖への気持ちを払拭(ふっしょく)できずにいた。有栖は祐馬のことを、「もちろん良い人だし、話合うし、一緒にいて居心地いいし」と称する。それでも一歩踏み出せない要因として、産婦人科医の柴崎薫(松本若菜)は有栖にこう指摘した。「自分はもう恋をしちゃいけないんじゃないか、って思ってる?」

有栖を思いとどまらせていたのは、シングルマザーになると決めた自分の選択と、それにまつわる“世間の声”だったのかもしれない。母だから、恋をしてはいけない。母だから、子どもを育てることにだけ集中するべき……。でも、「母として生きることだけが人生の全てじゃない」「恋だってすればいいのよ」という薫や瞳子のアドバイスを受けて、有栖は “自分の心の声”に耳を傾ける。

その結果、有栖は祐馬からの花束を受け取り、「祐馬が好き」とはっきり想いを伝えた。ひまわりは「私はあなただけを見つめる」「憧れ」という花言葉を持つそうだ。互いの夢を尊重し、応援してきた有栖と祐馬にとって、これ以上ふさわしい花はないと思える。

加瀬に“逆プロポーズ”した瞳子の決意

加瀬息吹(上杉柊平)からのプロポーズの返事を、長らく保留にしていた瞳子。彼女は乳がんを経験した母・成瀬貴美子(片平なぎさ)を心配し、また、自分のギャラリーを持つという夢を達成するため、地元の金沢に帰ることを検討していた。

そのことさえも、瞳子は加瀬に対し、流れに任せた事後報告。人によっては、少々存在を軽んじられている、と気分を害しても仕方ない場面だが、彼はブレない。「瞳子さんが帰るなら、俺も一緒に帰るだけですから」と淡々と言ってのける姿には、些細(ささい)なことでは崩れない、牙城(がじょう)のような剛健ささえ感じる。

やがて、瞳子はおそらく熟慮を重ねた末に、加瀬に“逆プロポーズ”した。加瀬に「目を閉じて」「目を開けて」と促してから、目の前で指輪の箱を開く様は、なんとも心に残る瞬間だった。「ずるいな、また先越して」という加瀬のセリフも、粋だ。

女性からプロポーズをし、指輪も用意して、男性の薬指に嵌(は)める。こんな些細(ささい)な場面も、従来の価値観では「男女が逆だ」と捉えられてしまうだろう。しかし、瞳子と加瀬の二人なら、そんな違和感さえ霧散してしまう。

「当たり前」にとらわれない生き方

『18/40~ふたりなら夢も恋も~』は、世の中に浸透する「当たり前」という概念にとらわれない、新しい生き方を示すドラマだった、と思えてならない。 これは、有栖と綾香がキュレーションを務めた企画展のタイトル「Towards New Typicalities ~『当たり前』を更新・解体する」にも通じる。

18歳で妊娠し、一人で産み育てることを決心した有栖。血縁関係のない有栖と瞳子が、ともに暮らし、協力しあって育児をする姿。年下の恋人からプロポーズされ、あらためて自分からプロポーズした瞳子。親の会社を継ぐのではなく、困難であろうともダンサーになる夢を諦めなかった祐馬。

生きていくのは簡単ではない。「自分のやりたいことをやろう」「後悔しない選択をしよう」……綺麗(きれい)な言葉でまとめるのは簡単だけれど、現実の歩みは遅い。

シングルマザーになること、結婚をせず仕事に邁進(まいしん)している状況、身内ではない者同士が深く手を取り合う様子。このドラマで描かれたことが、もしも身の回りで起こったら、それが身内の人間だったら、果たしてどこまで広い心で受け止められるだろうか。

もし、人の生き方に物申したくなったときや、凝り固まった自分の考え方に気づくときがあれば、ふと彼女たちの姿が浮かぶことだろう。最終回では、有栖と瞳子が夢を叶(かな)えた5年後の様子も見ることができた。今後、物語に描かれることのない彼女たちも、きっと新たな夢を見つけ、叶えながら生きていく。

■北村有のプロフィール
ライター。映画、ドラマのレビュー記事を中心に、役者や監督インタビューなども手がける。休日は映画館かお笑いライブ鑑賞に費やす。

■モコのプロフィール
イラストレーター。ドラマ、俳優さんのファンアートを中心に描いています。 ふだんは商業イラストレーターとして雑誌、web媒体等の仕事をしています。

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