1. トップ
  2. ライフスタイル
  3. 〈ランドスケーププロダクツ〉設計の、好きな家具やクラフトに寄り添う清々しくプレーンな建築

〈ランドスケーププロダクツ〉設計の、好きな家具やクラフトに寄り添う清々しくプレーンな建築

  • 2023.9.13
岡林広之さんの自宅リビングとキッチン

暮らす人:岡林広之(メーカー勤務)

デザインの遊びが際立つ、真っ白なリビング

愛知県の三河安城駅から車で10分ほどの住宅街。両側を道路が走る敷地に2階建ての家を構えた、会社員の岡林広之さん。

インテリアショップ〈プレイマウンテン〉が好きで、もし将来、家を建てるなら同店の母体である〈ランドスケーププロダクツ〉に設計をお願いしたいと、長年考えていたという。その夢を叶えたのは、2022年のこと。2018年末の依頼からコロナ禍を挟んで、実に3年がかりのプロジェクトとなった。

岡林広之さんの自宅リビング
天井から差し込む光が美しいリビング。その先には、玄関を見下ろす吹き抜け、さらにダイニングとキッチンが続く。奥をリビングより1段高くすることで、空間をうまく仕切っている。手前はヘリット・リートフェルトの子供用クレイトチェア。
岡林広之さんの自宅キッチン
ダイニングの横には、少し天井を低くした人造大理石のコンパクトなキッチンがある。どこに何を入れるか、収納の場所なども細かく相談して設計。ビビッドなオレンジの置き台や黒い窓枠は、リートフェルトのシュレーダー邸の差し色使いを連想させる。
岡林広之さんの自宅リビング
天高4.5m以上はあるリビング。敷地の北側以外は隣接する家屋がなく、窓からの見通しもいい。緑のベンチソファが空間のポイントに。シートと同じ高さの飾り棚が壁一面に続く。

「家具やクラフトに興味を持ったのも、20代で通い始めた地元のショップで〈ランドスケープ〉のプロダクトと出会ったのがきっかけでした。敷地は車通りの激しい道に面しているので、見晴らしのいい2階をリビングにしたいという希望だけ最初にお伝えして、あとは担当の片山貴之さんらとプランやイメージをやりとりしながら進めていきました」

2階は部屋を仕切らず、天井高のあるリビングをメインにして、ダイニングやキッチンもひとまとまりの大きな空間に。対する1階には、寝室や収納、浴室など、クローズドな用途をまとめた。約38坪のコンパクトな住宅だが、夫婦が好きで少しずつ買い集めた家具や小物、アートピースを並べるための場所も十分に取られている。

岡林広之さんの自宅に置かれたレコードプレーヤー
ベンチソファの横には、アンプやレコードプレーヤーも置かれている。夫婦で音楽も好きでフェスにもよく出かけていたが、最近はもっぱら家で楽しむことが多い。高さを抑えた飾り棚の下は収納スペースで、レコードなど細かいものは扉付きの棚の中へ。
岡林広之さんの自宅玄関
1階の玄関脇には、画家の田上允克(まさかつ)の作品とライナー・ドーミラーのチェア。季節の花を飾るのにもちょうどいい。玄関のたたきには、同じ安城市出身で縁のあったガラス作家〈STUDIO PREPA〉のアトリエで出た、ガラスの粒を混ぜている。
岡林広之さんの自宅リビング3
部屋のそこかしこに本がある。右はマックス・ビルの《ウルムスツール》、フロアライトは東京・目黒の〈LICHT〉で購入。棚には村橋貴博やドナルド・ジャッドの作品、イームズハウスでドアベルとして使われていたメキシコの黒陶ベルも。
岡林広之さんの自宅飾り棚
富山のインテリア雑貨店〈CARGO〉で買ったブックエンドに、彫刻家アルマ・アレンの画集。永瀬二郎のアルミのオブジェや、高野夕輝の木彫りの山など、好きなものを時々で並べ替えている。下段は建築家の作品集など、家作りの参考にした本も。
岡林広之さんの自宅階段下
2階の階段近くの余白スペースにも椅子が点在。手前から、盛永省治のスツール、ダン・ジョン・アンダーソンのスツール、マイク・ミルズデザインのポスター、黒川雅之の照明、ガーフィールドのぬいぐるみの定位置は〈WAKA WAKA〉の子供用チェア。
岡林広之さんの自宅エントランス
造り付けの棚とアールの壁の先に、階段が続くエントランス。左はクローゼットとバスルーム、右は寝室に続く。ゆったりとして贅沢な玄関は、家に廊下が欲しかったという岡林さんにとって大切な空間。〈STUDIO PREPA〉のオブジェが棚の最上段に。

岡林さんが以前から関心があったのは、住宅ならヘリット・リートフェルトのシュレーダー邸、デザイナーならアルヴァ・アアルト。

「自分たちが好きなものを伝える中で、片山さんからも多くの提案をもらった。そのなかから一つ一つ、家に備え付けるものを選んでいく作業が楽しかったですね。家を建てることで、建築やデザインの知識が広がり、好きなものが今まで以上に増えました」

清々しい白さの中に夫婦の好きなものたちが映えるシンプルな造りだが、ビビッドな差し色、三角屋根の天窓から注ぐ光の模様の複雑さなどが、空間を豊かに彩っている。建築とその細部とが、心地よく共鳴している住まいだ。

岡林広之さんの自宅ピクチャーウィンドウ
階段の吹き抜けには、もともと敷地にあったシラカシを望むピクチャーウィンドウを設けた。グレーの手すりのデザインもユニーク。手前の椅子はポール・ケアホルムの《PK1》。
岡林広之さんの自宅飾り棚
テレビ台も兼ねた飾り棚に、買い集めた工芸品やアートピースが並ぶ。盛永省治のウッドボウル、ローレンス・ウェイナーのポスター、引っ越し祝いでもらったカチナドールなど。
岡林広之さんの家族

profile

岡林広之(メーカー勤務)

おかばやし・ひろゆき/1986年生まれ。工作機械メーカーに勤務。妻の綾香さんと5歳の娘との3人暮らし。20代前半に買った〈ランドスケープ〉のサイドテーブルがきっかけでデザインに目覚める。家族で家具やクラフトの展示会に足を運ぶこともある。

元記事で読む
の記事をもっとみる